新元号「令和」の出典は阿含経典で(も)ある!

出典は『万葉集』だと? ふふふ…… いくら趣向を凝らして #新元号 を作っても、お釈迦様の掌からは逃れられないぞ。

沙門瞿曇捨滅兩舌。不以此言壞亂於彼。
不以彼言壞亂於此。有諍訟者能令和合。
已和合者増其歡喜。有所言説不離和合。
誠實入心所言知時。

(佛説長阿含經卷第十四 梵動経※)

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※パーリ長部1梵網経(DN1.Brahmajāla Sutta)に相当。SAT大正新脩大藏經テキストデータベースで調べると大般若や華厳経にも出てくるので、大乗仏典が好きな人はそっちが出典だと言い張ろう!

同じ阿含系だと、

離者令和。和者隨喜。

(雜阿含經卷第三十六 1040経)

こっちのほうが出典っぽいかな?

有諍訟者能令和合。已和合者増其歡喜。(長阿含
離者令和。和者隨喜。(雑阿含

並べてみるとほぼ対応しています。「争う人々に調和を齎し、調和した社会の幸福度(喜び)を増す。」いずれも不両舌(不離間語)の徳を説いたくだりですね。

万葉集再読

万葉集再読

ちなみに、佐竹昭広萬葉集再読』平凡社あたりを読んだ記憶だと、万葉歌人の多くが和歌の元ネタに漢訳仏典を使っていたそうです。もちろん実際の元ネタはこちらっぽいので、「令」の意味も違うんですけど……

元号「令和」の出典、万葉集「初春の令月、気淑しく風和らぐ」ですが、『文選』の句を踏まえていることが、新日本古典文学大系萬葉集(一)』https://www.iwanami.co.jp/book/b325128.html の補注に指摘されています。
「「令月」は「仲春令月、時和し気清らかなり」(後漢・張衡「帰田賦・文選巻十五)」とある。」

https://twitter.com/iwabun1927/status/1112589397491277824
 
それにしても、膨大な漢訳仏典や漢文仏典を駆使してきた仏教界から、文献に即した元号ネタへの反応が無いのは寂しいことだなと感じます。参考までに、パーリ『梵網経』該当箇所の和訳貼っておきましょう。

『両舌を断じ、両舌から離れて、沙門ゴータマは、これらの不和合のために、こちらから聞いてあちらに告げることなく、あるいは、あれらの不和合のために、あちらで聞いてこれらに告げることがない。
かく、〔ブッダは〕、あるいは壊された〔和合〕の調停者、あるいは融和した〔和合〕の助長者であり、和合を喜び、和合を楽しみ、和合を歓喜し、和合をなさしめる言葉を話す』と。

光明寺経蔵より

「和合をなさしめる samaggakaraṇiṃ」が漢訳されて #令和 となるのです。というわけで、新元号「令和(呉音で”りょうわ”と読むと、さらに仏典ぽくなる)」のパーリ語訳は samaggakaraṇa(サマッガカラナ)に決定いたしました。

「サマッガカラナ元年」が皆さまにとって佳き年でありますように!

~生きとし生けるものが幸せでありますように~