【提言】仏教行事を旧暦に戻そう――東アジア仏教世界の一体感を取り戻す

(本誌パティパダーの)編集作業がたけなわの二月五日(火)に旧暦の新年、旧正月を迎えました。最近は春節と呼ばれることが多いですね。中国はじめ韓国・台湾、中華系コミュニティのある国々、日本でも沖縄などでは旧暦の新年を盛大にお祝いします。

日本を除くアジアの伝統行事はほとんど旧暦のカレンダーで行われます。明治以来「新暦一本槍」の日本だけが、アジアの祝祭の時間軸からぽつんと孤立しているのです。

仏教行事も例外ではありません。二月十五日、日本仏教の寺院でお釈迦さまが般涅槃された日を記念する「涅槃会」の法事が(地味に)営まれます。新暦の二月はまだ厳冬期なので、涅槃会を降り積もる雪景色に重ねる方も多いでしょう。しかし、それは新暦の話。明治の改暦まで、涅槃会はいよいよ春の暖かさを実感する時期の行事だったはずです。さらに今年の旧暦・涅槃会は新暦三月二十一日で春分の日(春彼岸会)とも重なっています。完全に春ですよね。

そういえば、昨年は明治元年(一八六八年)から満百五十年でしたが、明治維新に伴って吹き荒れた「廃仏毀釈」の実態も、『仏教抹殺 なぜ明治維新は寺院を破壊したのか 』鵜飼秀徳(文春新書)等を通して知られるようになりました。

日本の近代化が反仏教的な輩によって遂行されたことを考えれば、とりあえず仏教界だけでも、そろそろ明治維新の呪縛から解き放たれて、諸々の仏事を旧暦に戻したらいいと思うのですが如何でしょう? そうすれば東アジア仏教世界の一体感も取り戻せて、地域の緊張緩和に大いに資するはずです。

また釈尊降誕をお祝いする四月八日の灌仏会花まつり)が五月の開催になることで、ウェーサーカを祝う全世界の仏教徒ともほぼ同時に喜びを分かち合えるのです。良いことずくめだと思うので、この文章をお読みのお寺さんや伝統寺院の檀家さん、ぜひ勇気を出して実践してみて下さい。

(初出『パティパダー』2019年3月号「編集後記」 一部修正)

 

~生きとし生けるものが幸せでありますように~