『サンガジャパンvol.27 特集「禅」』(2017年に読んだ仏教本より)
Twitterで書き散らしてた読書メモまとめ。その2は『サンガジャパンvol.27 特集「禅」』です。
禅ー世界を魅了する修行の系譜ー(サンガジャパンVol.27)
- 作者: アルボムッレ・スマナサーラ,藤田一照,デイビッド・チャドウィック,David Chadwick,鈴木包一,横田南嶺,井上貫道,星飛雄馬,細川晋輔,葆光庵丸川春潭,中村龍海,佐々涼子,三砂慶明,ラーム・スループ・シン,松本榮一,松本恭,島田啓介,井上ウィマラ,大谷彰,藤本晃,永沢哲
- 出版社/メーカー: サンガ
- 発売日: 2017/09/01
- メディア: 単行本
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『サンガジャパンvol.27 特集「禅」』では、アルボムッレ・スマナサーラ長老の連載「パーリ経典解説3 スッタニパータ(経集)第五「彼岸道品」二、ティッサ・メッテイヤ仙人の問い」で構成を担当しました。注目の特集「禅」はどの記事も読み応えありましたよ。
特集記事は、スマナサーラ長老と藤田一照師対談「テーラワーダからみた禅」(連載第一回)から始まって、デイヴィッド・チャドウィック「鈴木俊隆老師とビートニクの詩人たち」、鈴木老師のご子息である包一師インタビューは歴史の証言として貴重なものです。
円覚寺管長の横田南嶺インタビュー「求道と救済」では、横田師が日本の仏教者には珍しく「戒(シーラ)」の意味をしっかり捉えていることに唸らされました。後半『延命十句観音経』の話になると、なんだかなぁと微苦笑しちゃったけど……。(;^_^A
井上貫道師インタビュー「決着がついたら自由になる」は本当に味わい深く、星飛雄馬さん「井上義衍老師伝」も大変勉強になります。それから臨済宗では妙心寺派の細川晋輔師インタビューも興味深かったです。公案にガチで取り組むとはどういうことか、語られていて面白い。また、曹洞宗では年上僧侶への敬称程度になっている「老師様」が臨済禅でいかに重要で大切にされているかと強調しています。
次に出てくる人間禅とかいうのは……う~ん、反面教師としか言いようがないですな。
中村龍海「”ZEN”の起源」、星飛雄馬「禅ブックガイド」で特集記事は手堅く終了。連載記事は自分の担当以外はあまり興味を惹かれないので論評を控えておきます。しかし、経典どころかスリランカの史書までも完全無批判に文字通り信じ込もうとしてる藤本晃さんの筆致には、一抹の心配を感じます。(最近、佐々木閑×宮崎哲弥『ごまかさない仏教』で名指し批判されとりましたが……)
今回の特集記事を全体的に俯瞰すると、いわゆる禅宗の最大宗派である曹洞宗が(井上師などの傍系を除いて)修証一等という道元思想のミスリードで自縄自縛となり、「おすわりワンコ教団」(某師談)に堕しているところを何とかしたい藤田一照師とスマナサーラ長老が肝胆相照らしたところで、ようやく日本でも光があたった鈴木俊隆師の米国での軌跡をたどり、日本にいまも脈々と生きづく「元気な禅」の姿を紹介していくという流れかな? サンガジャパンvol.27 特集「禅」とてもいい企画だったと思います。
~生きとし生けるものが幸せでありますように~