『大アジア思想活劇』電書版あとがき(近代仏教史研究ブックガイド&関連論文ガイド)

2017年4月に刊行された大アジア思想活劇――仏教が結んだ、もうひとつの近代史 Kindle版の電書版目次です。noteに載せようと思ったんだけど、こういう書誌データ盛りだくさんのものはやっぱブログですね。2008年~2017年初頭の約10年に刊行された近代仏教史研究ブックガイド&関連論文ガイドみたいな内容になってるので、そのような活用法もしていただければ幸い。以下、全文です。

 電書版あとがき

本書は二〇〇八年九月刊行の単行本『大アジア思想活劇 仏教が結んだ、もうひとつの近代史』(サンガ)に一部加筆修正を加えた電子書籍である。

刊行から八年、単行本の素材となったメールマガジン配信から数えるとすでに十数年が経過しており、資料的価値という点ではいささか不安が残る。そこで電書版あとがきでは、本書が扱った近代仏教に関する最近の出版動向を把握している範囲で紹介し、内容の不備を少しでも補完したいと思う。

振り返ると、今世紀初頭までは近代の仏教をテーマにした出版自体が希少だった。いまでは往時とは比べ物にならないほど「近代仏教研究」が盛り上がっている。その勢いを全体的に見通すことのできる一冊といえば、大谷栄一、吉永進一、近藤俊太郎・編『近代仏教スタディーズ 仏教からみたもうひとつの近代』法蔵館、二〇一六)が挙げられるだろう。執筆者は実に二十九人。本書で詳述したダルマパーラ、オルコットら海外仏教徒との交流史を包む、近代仏教の広大な沃野を一望するパノラマ絵巻のような楽しい本だ。

近代仏教スタディーズ: 仏教からみたもうひとつの近代

近代仏教スタディーズ: 仏教からみたもうひとつの近代

 

併せて、末木文美士・ 林淳・吉永進一・大谷栄一・編ブッダの変貌 交錯する近代仏教 (日文研叢書) 』法蔵館、二〇一四。同書の母胎となった研究報告書、末木文美士・編『近代と仏教』国際日本文化研究センター、二〇一二はインターネットで閲覧可能)も推したい。海外研究者の翻訳記事を含み、全地球的な視野で近代仏教に迫ったアンソロジーである。

ブッダの変貌―交錯する近代仏教 (日文研叢書)

ブッダの変貌―交錯する近代仏教 (日文研叢書)

 

仏教史の初学者向けに編纂された『仏教史研究ハンドブック』法蔵館、二〇一七)でも、日本仏教編では全四章構成のうち第四章がまるまる「日本近代」に割かれている。古代・中世・近世・近代とほぼ均等のボリュームで、筆者が学生時代に日本仏教史といえば近世・近代は付け足し程度だったことを考えると大変な変わりようだ。

仏教史研究ハンドブック

仏教史研究ハンドブック

 

『近代国家と仏教(新アジア仏教史14日本Ⅳ)』佼成出版社、二〇一一)の版元コメントに「かつて圧倒的な厚みを誇った鎌倉仏教研究に変わり、今一番ホットな仏教研究分野である近代仏教」と書かれていた時は驚いたが、昨今の出版ラッシュを見るとそれも過言ではないかもしれない。

近代国家と仏教 (新アジア仏教史14日本?)

近代国家と仏教 (新アジア仏教史14日本?)

 

 単著では、碧海寿広『入門 近代仏教思想』ちくま新書、二〇一六)では、真宗大谷派の系譜に属する仏教系知識人の足跡を通じて近代日本仏教の変容を「仏教の教養化の展開」として描いている。後味の悪さ(ほとんどは暁烏敏の言行に起因する)含めて、近代仏教を学ぶ入り口にもってこいの一冊と思う。

入門 近代仏教思想 (ちくま新書)

入門 近代仏教思想 (ちくま新書)

 

 一方、大谷栄一『近代仏教という視座 戦争・アジア・社会主義ぺりかん社、二〇一二)は田中智学・妹尾義郎ら日蓮系が主役でかつ政治運動へのかかわりに焦点を当てているので、碧海の本と併読をお勧めしたい。

近代仏教という視座―戦争・アジア・社会主義

近代仏教という視座―戦争・アジア・社会主義

 

オリオン・クラウタウ『近代日本思想としての仏教史学』法蔵館、二〇一二)は、近代化の過程で「日本仏教」の概念がどのように形成されたかを丹念にトレースする。我々が仏教について語るフレームを問い直す試みであり、けっこう冷や汗の出る読書体験になるだろう。

近代日本思想としての仏教史学

近代日本思想としての仏教史学

 

最初に紹介した『近代仏教スタディーズ』はブックガイドが充実しているので、詳しくはそちらを参照いただきたいが、思いつくまま他の文献も挙げてみたい。本書では第二部の途中でほったらかしにしてしまった神智学の日本における受容史、および神智学との邂逅が仏教に与えた影響については、吉永進一「近代日本における神智学思想の歴史」(『宗教研究』84(2)、二〇一〇)「似て非なる他者 近代仏教史における神智学」(『ブッダの変容』収録)に詳しい。

加えて杉本良男「比較による真理の追求 マックス・ミュラーとマダム・ブラヴァツキー」(『国立民族学博物館調査報告』90、二〇一〇)「四海同胞から民族主義へ アナガーリカ・ダルマパーラの流転の生涯」(『国立民族学博物館研究報告』36(3)、二〇一二)は、より広い視野で神智学と仏教の関係を俯瞰している。特に後者は日本語で書かれたダルマパーラ論として白眉であり、大アジア思想活劇と銘打ちながらも思想の中身には踏み込みが甘かった本書を補完して余りある内容だ。

本文に一部追記したが、オルコット招聘に関わった京都の仏教者たちの動向もだいぶ分かってきた。中西直樹・吉永進一『仏教国際ネットワークの源流 海外宣教会(1888年1893年)の光と影(龍谷叢書)』(三人社、二〇一五)は、本書前半の山場であるオルコット招聘運動前後に盛り上がりを見せた明治二十年代の仏教国際ネットワークに焦点を当てた労作だ。本書26章で紹介した白人仏教徒、フォンデスと日本仏教の関係についても詳しい。

仏教国際ネットワークの源流 (龍谷叢書35)

仏教国際ネットワークの源流 (龍谷叢書35)

 

 一方、こちらも吉永進一を代表とする「近代日本における知識人宗教運動の言説空間 『新佛教』の思想史・文化史的研究」(科学研究費補助金基盤研究B研究課題番号20320016 2008年度~2011年度)からは、神智学と決別した後のダルマパーラと日本の仏教系知識人との交流の軌跡を読みとることができる。四〇〇ページ近い報告書がネットで公開されている。

18章、19章で扱った釈興然のセイロン留学については、奥山直司「明治インド留学生 興然と宗演」(田中 雅一・奥山 直司編『コンタクトゾーンの人文学』第Ⅳ巻、晃洋書房、二〇一三)に比較的まとまったレポートが載っている。

コンタクト・ゾーンの人文学〈第4巻〉Postcolonial/ポストコロニアル

コンタクト・ゾーンの人文学〈第4巻〉Postcolonial/ポストコロニアル

 

また、石川泰志『近代皇室と仏教 国家と宗教と歴史(明治百年史叢書)』原書房、二〇〇八)には釈興然の師である釈雲照の詳細な伝記が収録されている。『近代仏教スタディーズ』でも、皇室がらみの項目は欠けていたので、類書のない貴重な仕事と思う。

近代皇室と仏教―国家と宗教と歴史 (明治百年史叢書)

近代皇室と仏教―国家と宗教と歴史 (明治百年史叢書)

 

長期間にわたり日本仏教界の関心を喚起し続けたブッダガヤ復興運動(本書24章以降参照)に関しては、外川昌彦「ダルマパーラのブッダガヤ復興運動と日本人 ヒンドゥー教僧院長のマハントと英領インド政府の宗教政策を背景とした」(『日本研究』53、国際日本文化研究センター、二〇一六)にて詳細な検証がなされている。

大谷栄一「アジアの仏教ナショナリズムの比較分析」(『近代と仏教』収録)は、本書32章から34章まで詳述したダルマパーラと田中智学の会見について深掘りした論考だ。「一八八〇年代から仏教改革運動に取り組んできた二人が、一九〇〇年代に自らの仏教ナショナリズム思想を築き上げていく中で共感し、影響を与えあった点に、両者の出会いの歴史的意味があった」と結ばれている。

まとめにあたる41章で、「戦前日本仏教の海外活動とその戦後への影響に関しては、そのディテールもまだあまり知られていない」と記した。最近は、この分野での研究の進展も目覚ましい。大澤広嗣・編『仏教をめぐる日本と東南アジア地域(アジア遊学 一九六)』勉誠出版、二〇一六)は過去一五〇年間に、テーラワーダ仏教圏でもある東南アジア地域と日本仏教がどのように関わってきたかを検証するアンソロジー。本書で名前のみ登場の東温讓やウ―・オッタマ(ウー・オウタマ)の詳しい事績を読める。

仏教をめぐる日本と東南アジア地域 (アジア遊学 196)

仏教をめぐる日本と東南アジア地域 (アジア遊学 196)

 

大澤広嗣『戦時下の日本仏教と南方地域』法藏館、二〇一五)、新野和暢『皇道仏教と大陸布教 十五年戦争期の宗教と国家』社会評論社、二〇一四)は、戦時体制下の日本仏教の歩みを知るうえで欠かせない。研究者向けには『資料集・戦時下「日本仏教」の国際交流』(不二出版、二〇一六~)も順次刊行されている。

戦時下の日本仏教と南方地域

戦時下の日本仏教と南方地域

 
皇道仏教と大陸布教―十五年戦争期の宗教と国家

皇道仏教と大陸布教―十五年戦争期の宗教と国家

 

本書の執筆に際して国立国会図書館に随分お世話になった。現在は「国立国会図書館デジタルライブラリー国立国会図書館デジタルコレクション(http://dl.ndl.go.jp/)」にアクセスすれば、野口復堂のインド旅行記(単行本『大鼎呂』収録)、平井金三のシカゴ万国宗教会議演説といった資料を読むことができる。オルコット来日時の演説集も多数収録されており、ダルマパーラ(達磨波羅、ダンマパラで検索のこと)の講演録まである。便利になったものだと思う。ちなみに電子図書館青空文庫」(http://www.aozora.gr.jp/)には、本書にもしばしば登場する河口慧海の主著チベット旅行記が全文公開されている。同じく著作権フリーになったばかりの鈴木大拙についても、今後著作のデジタル版公開が進むだろう。時の流れとともに、近代仏教は我々にとってより身近のものにもなっている。

www.aozora.gr.jp

本書の第三部では、スリランカ出身の仏教活動家アナガーリカ・ダルマパーラと日本の関わりを通して二十世紀前半のアジア仏教復興運動を概観した。現代の日本には、そのスリランカも含む南アジア・東南アジアで伝承されたテーラワーダ仏教が急速に浸透しつつある。これは本書で扱った時代には考えられなかった変化と言えよう。仏典研究とアジア地域研究の学際的英知を結集したパーリ学仏教文化学会『上座仏教事典』(めこん、二〇一七)の刊行は、そんな時代を象徴していると思う。

上座仏教事典

上座仏教事典

 

スリランカ出身のアルボムッレ・スマナサーラ長老のように日本で活躍するテーラワーダ仏教の比丘は珍しくないし、タイやミャンマーで出家した日本人比丘による伝道・出版活動も活発になっている。臨終の床で、「わしのやった仕事はなにひとつ実らなかった」と枕を濡らした釈興然の時代とは別世界のようではないか。藤本晃テーラワーダは三度、海を渡る 日本仏教の土壌に比丘サンガは根付くか」(『仏教をめぐる日本と東南アジア地域 (アジア遊学 196)』収録)は、釈興然らのテーラワーダ仏教日本移植の試みなどを概観しつつ、スマナサーラ長老の活動の意味を現在進行形で考察する参与観察的なレポートである。藤本はそれで浄土真宗本願寺派の自坊を宗派離脱するに至ったので、「参与」も度が過ぎていると思うが。

ここ十数年の間で日本に広まったテーラワーダ仏教は、ヴィパッサナー瞑想というパーソナルな修行体系を媒介としているのが大きな特徴だ。本書では詳しく触れなかったが、これはまさに近代化によって再編成されたテーラワーダ仏教像である(リチャード・ゴンブリッチ、ガナナート・オベーセーカラ、島岩訳スリランカの仏教法蔵館、二〇〇二参照)。明治以降、最近まで南伝仏教といえば「戒律仏教」というステレオタイプで語られていたことを思い出してほしい。小島敬裕ミャンマー上座仏教と日本人 戦前から戦後にかけての交流と断絶 」(『仏教をめぐる日本と東南アジア地域 (アジア遊学 196)』収録)では、ヴィパッサナー瞑想ブーム以前にミャンマーのマハーシ長老から直接冥想指導を受けた日本人僧侶たちのその後を追っているが、ほんの数十年前の近過去と現在で、テーラワーダ仏教への関心の動機づけががらりと変わっていることに驚かされる。この瞑想中心の仏教受容というトレンドは、南伝上座仏教の日本移植という一方向的な動きでは説明できない。それはダルマパーラや釈宗演といった本書の登場人物によって種を蒔かれた「アメリカ仏教」(ケネス・タナカアメリカ仏教 仏教も変わる、アメリカも変わる』武蔵野大学出版会、二〇一〇参照)が日本に逆上陸したマインドフルネス・ブームとも密接に関わっている。

アメリカ仏教

アメリカ仏教

 

ネットで読める新田智通「仏教の「スピリチュアル化」について 現代世界における仏教の変容」(『佛教学セミナー』100、大谷大学佛教学会、二〇一四)は、「近代西洋との避遁を通じてある変化が仏教に生じ、それがこんにちの「スピリチュアリティ」の概念と結び付いた新しい仏教につながっていった」という流れを概観できる論文である。『別冊サンガジャパン1 実践!仏教瞑想ガイドブック』(サンガ、二〇一四)、『別冊サンガジャパン3 マインドフルネス 仏教瞑想と近代科学が生み出す、心の科学の現在形』(サンガ、二〇一六)は、近代化の過程で全地球に広がった仏教が、形を変えながら日本に打ち寄せる様子をカタログ的に概観できる同時代資料だ。

別冊サンガジャパン 1 実践!  仏教瞑想ガイドブック

別冊サンガジャパン 1 実践! 仏教瞑想ガイドブック

 
マインドフルネス 仏教瞑想と近代科学が生み出す、心の科学の現在形 (別冊サンガジャパン3)

マインドフルネス 仏教瞑想と近代科学が生み出す、心の科学の現在形 (別冊サンガジャパン3)

  • 作者: 蓑輪顕量,メンタリストDaiGo,井上ウィマラ,荻野淳也,川畑のぶこ,熊野宏昭,小池龍之介,越川房子,島田啓介,永沢哲,ネルケ無方,バリー・カーズィン,ビル・ドウェイン,藤田一照,藤野正寛,村川治彦,清水ハン栄治,井上広法,前野隆司,田中ウルヴェ京
  • 出版社/メーカー: サンガ
  • 発売日: 2016/11/30
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
 

仏教という偉大な精神文化は、近代という時代においてもなお、日本人が広大な世界へと自らを「開いてゆく」窓、普遍への回路であり続けていた。

この作品の冒頭につづった言葉の効力は、現代という時代においてもなお、失われていないと思う。願わくは『大アジア思想活劇』というほつれの目立つ大風呂敷をきっかけに、近代仏教の面白さと、切なさと、そして現代を生きる我々に通じる精神の筋道とを感じてもらえたならば幸いである。ぜひ続けて、あとがきで紹介した書籍・文献にも手を伸ばしてほしい。最後に、ここまでお付き合いいただいた読者の皆様に心より感謝を申し上げます。幸せでありますように。

 

補遺

 

 ~生きとし生けるものが幸せでありますように~

 

平成から令和へ――日本におけるテーラワーダ仏教のこれから

1989年から2019年にかけての平成時代は、アルボムッレ・スマナサーラ長老(1945- )の日本における初期仏教伝道活動の期間とほぼ一致します。長老の活動を通じて、それまで小乗という侮蔑(反面としての原始仏教本流という畏怖)対象であったテーラワーダ仏教・上座仏教の教えと実践が日本に広まっていきました。

書籍やインターネット、講演や瞑想会などを入口とした伝道活動によって、多くの人々がお釈迦さまの教えと結縁(智慧の種を渡す)を果たしました。しかし、それが芽を出して涅槃という結果に至るかどうかは一人ひとりの宿題です。

新たな元号令和が「離者令和 和者随喜」という阿含経典のフレーズに(も)由来することは既に触れました。しかし、世の中の風潮としては普遍的な真理よりも小さな拠所・アイデンティティに縋りたい、仏教用語でいえば宗我に閉じ籠もりたい、という希望・願望が渦巻いているようにも見えます。

希望・願望はそれが不可能であるが故に強化されるものです。虚飾と虚偽に塗れた言説で日本の卓越性を謳い上げる政治的・文化的保守主義が、仏教界にも浸透しつつあることは身近に起きている事象を観れば分かります。しかし排外を叫ぶ声は現実否認の悲鳴に過ぎず、正念ある者たちの前途を阻めるものではありません。

日本という国・地域に法灯を点したばかりのテーラワーダ仏教は、一般向けの布教伝道という局面から一歩を踏み出し、出家比丘サンガ設立とそれを支える強力な在家仏教徒の組織化へと向かうことでしょう。

それは明治にスリランカで初のテーラワーダ比丘となった釈興然(1849-1924)の遺志を引き継ぐことでもあり、早世された西村玲先生(1972-2016)が明らかにした江戸期仏教者たちの釈尊への思慕*1を受け継ぐことでもあります。

テーラワーダ仏教伝来という未完の近代仏教プロジェクト。令和なる元号のもと、わたしたちはその最終局面に参与し、立ち会うことになるのです。

 

~生きとし生けるものが幸せでありますように~

新元号「令和」の出典は阿含経典で(も)ある!

出典は『万葉集』だと? ふふふ…… いくら趣向を凝らして #新元号 を作っても、お釈迦様の掌からは逃れられないぞ。

沙門瞿曇捨滅兩舌。不以此言壞亂於彼。
不以彼言壞亂於此。有諍訟者能令和合。
已和合者増其歡喜。有所言説不離和合。
誠實入心所言知時。

(佛説長阿含經卷第十四 梵動経※)

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※パーリ長部1梵網経(DN1.Brahmajāla Sutta)に相当。SAT大正新脩大藏經テキストデータベースで調べると大般若や華厳経にも出てくるので、大乗仏典が好きな人はそっちが出典だと言い張ろう!

同じ阿含系だと、

離者令和。和者隨喜。

(雜阿含經卷第三十六 1040経)

こっちのほうが出典っぽいかな?

有諍訟者能令和合。已和合者増其歡喜。(長阿含
離者令和。和者隨喜。(雑阿含

並べてみるとほぼ対応しています。「争う人々に調和を齎し、調和した社会の幸福度(喜び)を増す。」いずれも不両舌(不離間語)の徳を説いたくだりですね。

万葉集再読

万葉集再読

ちなみに、佐竹昭広萬葉集再読』平凡社あたりを読んだ記憶だと、万葉歌人の多くが和歌の元ネタに漢訳仏典を使っていたそうです。もちろん実際の元ネタはこちらっぽいので、「令」の意味も違うんですけど……

元号「令和」の出典、万葉集「初春の令月、気淑しく風和らぐ」ですが、『文選』の句を踏まえていることが、新日本古典文学大系萬葉集(一)』https://www.iwanami.co.jp/book/b325128.html の補注に指摘されています。
「「令月」は「仲春令月、時和し気清らかなり」(後漢・張衡「帰田賦・文選巻十五)」とある。」

https://twitter.com/iwabun1927/status/1112589397491277824
 
それにしても、膨大な漢訳仏典や漢文仏典を駆使してきた仏教界から、文献に即した元号ネタへの反応が無いのは寂しいことだなと感じます。参考までに、パーリ『梵網経』該当箇所の和訳貼っておきましょう。

『両舌を断じ、両舌から離れて、沙門ゴータマは、これらの不和合のために、こちらから聞いてあちらに告げることなく、あるいは、あれらの不和合のために、あちらで聞いてこれらに告げることがない。
かく、〔ブッダは〕、あるいは壊された〔和合〕の調停者、あるいは融和した〔和合〕の助長者であり、和合を喜び、和合を楽しみ、和合を歓喜し、和合をなさしめる言葉を話す』と。

光明寺経蔵より

「和合をなさしめる samaggakaraṇiṃ」が漢訳されて #令和 となるのです。というわけで、新元号「令和(呉音で”りょうわ”と読むと、さらに仏典ぽくなる)」のパーリ語訳は samaggakaraṇa(サマッガカラナ)に決定いたしました。

「サマッガカラナ元年」が皆さまにとって佳き年でありますように!

~生きとし生けるものが幸せでありますように~

【提言】仏教行事を旧暦に戻そう――東アジア仏教世界の一体感を取り戻す

(本誌パティパダーの)編集作業がたけなわの二月五日(火)に旧暦の新年、旧正月を迎えました。最近は春節と呼ばれることが多いですね。中国はじめ韓国・台湾、中華系コミュニティのある国々、日本でも沖縄などでは旧暦の新年を盛大にお祝いします。

日本を除くアジアの伝統行事はほとんど旧暦のカレンダーで行われます。明治以来「新暦一本槍」の日本だけが、アジアの祝祭の時間軸からぽつんと孤立しているのです。

仏教行事も例外ではありません。二月十五日、日本仏教の寺院でお釈迦さまが般涅槃された日を記念する「涅槃会」の法事が(地味に)営まれます。新暦の二月はまだ厳冬期なので、涅槃会を降り積もる雪景色に重ねる方も多いでしょう。しかし、それは新暦の話。明治の改暦まで、涅槃会はいよいよ春の暖かさを実感する時期の行事だったはずです。さらに今年の旧暦・涅槃会は新暦三月二十一日で春分の日(春彼岸会)とも重なっています。完全に春ですよね。

そういえば、昨年は明治元年(一八六八年)から満百五十年でしたが、明治維新に伴って吹き荒れた「廃仏毀釈」の実態も、『仏教抹殺 なぜ明治維新は寺院を破壊したのか 』鵜飼秀徳(文春新書)等を通して知られるようになりました。

日本の近代化が反仏教的な輩によって遂行されたことを考えれば、とりあえず仏教界だけでも、そろそろ明治維新の呪縛から解き放たれて、諸々の仏事を旧暦に戻したらいいと思うのですが如何でしょう? そうすれば東アジア仏教世界の一体感も取り戻せて、地域の緊張緩和に大いに資するはずです。

また釈尊降誕をお祝いする四月八日の灌仏会花まつり)が五月の開催になることで、ウェーサーカを祝う全世界の仏教徒ともほぼ同時に喜びを分かち合えるのです。良いことずくめだと思うので、この文章をお読みのお寺さんや伝統寺院の檀家さん、ぜひ勇気を出して実践してみて下さい。

(初出『パティパダー』2019年3月号「編集後記」 一部修正)

 

~生きとし生けるものが幸せでありますように~

2018年の仏教系その他お仕事回顧:佐藤哲朗名義のあれこれ

今年の回顧ネタ締めくくりに自分名義でやった仕事をまとめます。

死と輪廻―仏教から死を見つめ直す― (別冊サンガジャパンVol.4)

死と輪廻―仏教から死を見つめ直す― (別冊サンガジャパンVol.4)

 

ほとんど再録記事ばかりで悪名高い?別冊サンガジャパンですが、Vol.4に

アルボムッレ・スマナサーラ長老『ブッダの実践心理学』特別講義 涅槃(ニッバーナ)について ダイジェスト版レポート」佐藤哲朗 

 を寄稿しました。長老がサンガくらぶで行った講義の前半部分をまとめています。

www.youtube.com

6月28日に開催されたトークイベント、第46回サンガくらぶブッダガヤ大菩提寺を巡る対話』にて、インド仏教復活の大導師であられる佐々井秀嶺師(Bhadant-G Arya Nagarjuna Shurai Sasai)と夢の対面を果たしました!直々に拙著『大アジア思想活劇』への絶賛とダメ出しもしていただきました。

今年、もっともうれしかった出来事の一つに違いありません。ほんと、苦労して本を出した甲斐があったというものです。上手に座談をアシストして下さった中村龍海先生に感謝。望外の企画を組んでくれたサンガ島影社長と佐藤編集長以下スタッフの皆様にも感謝。三宝からのご褒美のようです。当日の模様は有料配信されているので、興味のある方は『ブッダガヤ大菩提寺を巡る対話』(サンガmovie) | サンガ公式通販サイトからの購入をご検討ください。上のトレーラー動画からも雰囲気は伝わると思います。

naagita.hatenablog.com

すでに上記ブログで報告済みですが、8月末に拙稿「テーラワーダ仏教」の載った『日本宗教史のキーワード――近代主義を超えて』が刊行されました。

日本宗教史のキーワード:近代主義を超えて

日本宗教史のキーワード:近代主義を超えて

 

10月20日には、丸善京都本店での出版イベント「大谷栄一×菊地暁×永岡崇  <日本宗教史>をアップデートする!」にお邪魔して、吉永進一先生、大谷栄一先生はじめ編著者の皆様と歓談できたことはよい刺激となりました。

naagita.hatenablog.com

こちらも上記ブログ記事で報告済みですが、10月~11月にかけて佼成出版社ウェブマガジン『ダーナネット』にブッダの瞑想法をテーマにしたインタビュー連載が載りました。ありがたいことに、ダーナネットで今年読まれた記事第2位だったそうです。

アクセス数アップに貢献できて幸いでした。それにしても……いくら立正佼成会系列とはいえ、自社広告すら一つも入っていないダーナネットのビジネスモデルは謎です。今度、編集者の方と会ったら勇気を出して聞いてみようと思います。

倫理――理性と信仰 (サンガジャパンVol.31)

倫理――理性と信仰 (サンガジャパンVol.31)

 

12月25日に刊行されたばかりの『サンガジャパン Vol.31 特集:倫理――理性と信仰』の巻頭記事「仏教における倫理とは何か?」で、スマナサーラ長老の前座的な役回りで「仏教とジレンマ」という文章(講演文字起こしのていの書下ろし)を寄稿しています。10月11日に行われた「第51回サンガくらぶ」でしゃべった内容がもとです。このイベントも有料配信されてますが、拙論のあら捜しをしたい人以外にはおススメできません。記事のさわりはこんな感じです。

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一応、サンガさんも売り始めたばっかなのでスクショはここまで。手前味噌にも程がありますが、スマナサーラ長老のパートも含めれば特集記事のなかで一番面白いと思うので、ぜひ読んで、なんじゃこりゃ~となってもらえれば幸いです。

そんなこんなで、今年は自分の名前を出した仕事も多かったですね。来年はどうなるかわかりません。

2018年も「ひじる日々」をご愛読いただきありがとうございました。皆様がよい年を迎えられますようにと祈念いたします。

 

~生きとし生けるものが幸せでありますように~

2018年の仏教系その他お仕事回顧:ダウンロード販売開始・プライムビデオ進出・YouTubeチャンネル開設

続いて日本テーラワーダ仏教協会の出版広報部門として2018年新たに始めた試みを備忘録的に書いておきたいと思います(公式ホームページのリニューアルも迫ってるんですけど、それはまた追々)。

STORES.jpでダウンロード販売ショップを開く

j-theravada.stores.jp

2018年5月からSTORES.jpにオンラインストア「心を育てる初期仏教法話」を開いています。個人的には、町山智浩さんのストア「映画その他ムダ話」で音声データファイルを購入したりしてた経緯があって、ある日スマナサーラ長老の法話音声ファイルもこういう形で頒布したら面白いかもなと思いついたら、その日のうちにショップ開設できました。ほんとネットはすぐやるに限りますね。もう10年近く前から、協会に保存されていたアナログ音源のデジタル化を進めており、コンテンツは唸るほどありましたから。いまのところ、かつてカセットテープやCD-ROMで出していたダンマパダ講義などの音声でーたを1巻216円(税込)でダウンロード販売しています。(ちなみにPodcastが流行った頃には販売商品とは別に長老の法話音声データも無料で大量に配信していたのですが、レンタルサーバー会社から負荷上がりすぎとのクレームが入って泣く泣く削除したこともありました……)音声データの他には、DVD旧作の映像ファイルや、月刊機関誌『パティパダー』のバックナンバー合冊本も頒布してます。まだまだ認知度は低いですが、一定のユーザーはついてくれているので、来年も引き続き拡充したいと思っています。オンラインストア心を育てる初期仏教法話」へのお気に入り登録をぜひお願いします!

AmazonPrimeVideoに進出!

www.amazon.co.jp

こちらは2018年7月から。AmazonPrimeVideoDirectでスマナサーラ長老の初期仏教月例講演会動画を月に1タイトルのペースで配信しています。最新作は、Amazon.co.jp: 仏教の怪談 ほんものの恐怖とは?を観る | Prime Video 。プライム会員なら無料で視聴できるし、スマホアプリにダウンロードして持ち歩けるのでたいへん好評なようです。これも大量にある映像コンテンツから厳選して配信を続けていくつもりです。これもまだ知らない人も多いと思うので、全国の初期仏教ファンによる口コミなどでの紹介をお願いしたいところです。観た人はぜひカスタマーレビュー書いてね!

YouTubeチャンネル開設

www.youtube.com

YouTubeの「日本テーラワーダ仏教協会事務局」チャンネルはこの12月から本格始動したばかり。これまでは協会の動画配信はFacebookライブがメインだったのですが、ハンJ民の皆様の活躍によりYouTubeのヘイト動画もだいぶ少なくなってきたので、いっちょここらでYouTube進出するか、と思い立ったわけです。(Dhammacast のカテゴリーを辿っていただけばわかりますが、個人アカウントでスマナサーラ長老の法話動画を流していた時期もあるので正確に言えば「再開」ですね。)手始めにFoacebookのアーカイブ動画を編集したものを流していました。

youtu.be

とはいっても、Facebookライブの頃から引き続き予算はゼロ。機材は自前のスマホと事務所のPCに入れた映像編集ソフトだけです。しかし、動画制作楽しいですよ。ついに法話会録画の編集だけでは飽き足らず、スマナサーラ長老に直接インタビューするオリジナル映像シリーズも始めてしまいました。

youtu.be

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YouTubeには字幕機能もあって(しかも自動生成してくれるんだけど、長老のイントネーションにはちょっと使えない……)しっかりした日本語字幕をつければ各国語への自動翻訳もしてくれるんですよね。これは布教伝道ツールとしてすごい!というわけで、YouTubeでの動画配信はこれから最重点分野として拡充していく所存です。だって楽しいから!長老にお聞きしたい疑問質問などある方、どしどしお寄せ下さい。あと、たいへん励みになるので、YouTube日本テーラワーダ仏教協会事務局」チャンネル登録をよろしくお願いします。励みになるだけではなく、登録者数と視聴時間が増えることで、YouTubeを使ってやれることの範囲も格段に拡がるんです。ぜひに!

というわけで、YouTube楽しい」しか言いたいことのない年の瀬でした。

 

~生きとし生けるものが幸せでありますように~

2018年の仏教書お仕事回顧:スマナサーラ長老の単行本(原始書籍&電子書籍)

さて、今年もあと二日というタイミングで一年のお仕事を振り返ってみたいと思います。スマナサーラ長老の言葉を通してお釈迦さまの教えを世に広めることが自分の大使命なので、当然その成果物がメインになります。

日本テーラワーダ仏教協会の月刊機関誌『パティパダー』の編集や施本制作はとりあえずのけました。あと、サンガさんの既刊電書化については、細かい校正以外はほぼ版元さんにお任せしているので割愛します。

ふりかえってみると、昨年に引き続きけっこう重要な本を上梓できたなぁ、という満足感のある一年でした。

原始書籍(紙の書籍)編

『観察――「生きる」という謎を解く鍵』ドキュメンタリー映画監督として『選挙』『精神』『ザ・ビッグハウス』『港町』などなどの「観察映画」作品を発表している想田和弘さん(最近は夫婦別姓を求める裁判でも話題になりましたね)と長老の対談集。長老の代表作『怒らないこと』に出会って人生が変わったという想田監督ですが、2016年に二日間行われた最初の対談収録(第一部に該当)ののち拠点のニューヨークでヴィパッサナー瞑想(マインドフルネス瞑想)のセッションを受けるんですね。そこで構成が固まりかけていた本の企画を仕切り直して、翌2017年に瞑想をテーマにした対談と瞑想個人指導の機会を設定したのです(第二部と付録に該当)。結果として、想田監督ご自身の「観察」の深まりを読者として追体験できるユニークな構成の本になりました。数多いスマナサーラ長老の対談本のなかでも、個人的に気にいっている作品です。

慈悲が世界を変える。 (サンガジャパンVol.30)

慈悲が世界を変える。 (サンガジャパンVol.30)

 

ちなみに、本書の出版記念イベント(長老と想田監督の公開対談)の様子は『慈悲が世界を変える――サンガジャパン30号』に収録されています。「ミッシングピースを探して――生命が「慈悲の本質」に気づく瞬間とは?」これまた素晴らしい内容なので、ぜひお読みいただきたいです。

慈悲の瞑想〔フルバージョン〕――人生を開花させる慈しみ

慈悲の瞑想〔フルバージョン〕――人生を開花させる慈しみ

 

『慈悲の瞑想〔フルバージョン〕――人生を開花させる慈しみ』は長老が提唱されているじっくり長文の「慈悲の瞑想フルバージョン」を段落ごとに解説したガイドブックです。慈悲の瞑想では、「わたし」「人々」「生命」といった概念(施設)とひとまず認めたうえで、それらの対象への親愛の気持ちを拡げていきます。心を拡げるというと大それた感じもしますが、具体的な言葉を念じるところから入るので、ヴィパッサナーはちょっと合わない、という方でもとりくみやすい瞑想(修習)でしょう。長く読み継がれ、実践されていってほしいと思います。

スッタニパータ 第五章「彼岸道品」

スッタニパータ 第五章「彼岸道品」

 

『スッタニパータ 第五章「彼岸道品」』4巻シリーズの第1巻です。ゴータミー精舎でのパーリ経典解説をもとにした作品。サンガジャパン連載が3篇、書下ろしが1篇です。以下、Twitterで書いたエモい文章を再録します。

スマナサーラ長老の新刊『スッタニパータ 第五章「彼岸道品」』第一巻がついに刊行されました。中村元博士の邦訳『ブッダのことば スッタニパータ』(岩波文庫)を通して、前世紀から「これこそ原始仏典」という評価が日本で定着したスッタニパータ(経集)。

文献学的に再古層とされる後半箇所のなかでも、ブッダと十六人の仙人たちとの問答で名高い第五章「彼岸道品(Pārāyanavagga)」。仏教のエッセンス中のエッセンスたるテキストをスマナサーラ長老が満を持して紐解くという、画期的シリーズの第一巻です。広く読まれているからこそ、皆「知ってるつもり」になっていたスッタニパータの凄みを引き出す長老の解説力は腰が抜けるほどの切れ味です。

こんな仕事は、かつてのブッダゴーサ長老を含め、他のどんな学識者にも為し得なかったでしょう。しかも、スッタニパータを「難解な教え」として我々の手から取り上げるのではなく、むしろ我々がリアルな「苦」を克服する導きとして、実践的に使いこなせるよう方便を尽くしてくださっているのです。真理の教えとは如何に偉大で親切なことか!

ゴータミー精舎での講義のスピード感を生かしながら、初期仏教のエキスパートたる著者の緻密な加筆を経た本書は、二十一世紀の日本を代表する仏典註釈になると確信します。思い起こすと二〇〇三年、私が長老の著作編集にたずさわった最初は『慈経(Mettasutta)』でした。慈経もまたスッタニパータ所収ですが、以来ずっと長老の本づくりをお手伝いしてきて、彼岸道品の解説書を出せたのは編集者冥利に尽きると思います。

自分はこの仕事をするために生まれてきたのだと、堂々と言い切れます。あとは、「自分はこの本と出会うために生まれてきた」と思ってくださる方が一人でも増えることを念じてやみません。

今年は、ほんとこれに尽きましたね。来年は第2巻も刊行予定です。残り3冊完結できるように、しっかり編集を頑張りたいと思います。

テーラワーダと禅――「悟り」への新時代のアプローチ

テーラワーダと禅――「悟り」への新時代のアプローチ

 

テーラワーダと禅――「悟り」への新時代のアプローチ』は藤田一照さんとの対談集です。サンガジャパンの連載をまとめたもの。藤田さん対談中は聞き手に徹してましたが、巻末の加筆ではテーラワーダ仏教について、禅仏教の立場からあれこれツッコミを入れてます。長老は華麗にスルーするという形で回答。食い足りない、という方もいれば、これでいいのだ、と得心する方もいるでしょうね……。

『こころおだやかにニャる ゆるねこ×ブッダの言葉』2018年に出した子猫×ブッダの言葉カレンダーがわりと好評だったようで、第二弾の企画が来ました。今回は毎月の言葉を「サンユッタニカーヤ(相応部)」の経典から採録・意訳しています。個人的には、『辛くてもマイペースで生きる 野良猫×ブッダの言葉』カレンダーとか作ってみたいんですけど、なかなか聞いてもらえません……

『一瞬で心を磨くブッダの教え――ブッダの教え3』サンガの既刊からテーマ別に文章を拾った名言集です。忙しい時にも拾い読みできるし、出典明記されてるので本書から長老の膨大な著作にアクセスするきっかけにもなるし、こういう「まとめ系」企画もけっこう大切だなと思います。

ブッダの瞑想と脳科学――心を一気に進化させる仏教の脳開発プログラム』こちらは類似するテーマを扱った協会施本『なんのために冥想するのか?』(2016)と『ブッダと脳―こころはどこで成長するのか?』(2017)を合冊再構成した作品です。協会会員向けのテキストが底本なので、語り口は厳しく理詰めでゴリゴリしてます。脳科学と瞑想に関する著作はいろいろ出てるけど、スマナサーラ長老のこういう直球ぶん投げる感じの本も一般書店に並んでいてほしいなと思って企画しました。

がんを治す心の力 (仏教と統合医療が語る、豊かに生きるための「心と体のメカニズム」)

がんを治す心の力 (仏教と統合医療が語る、豊かに生きるための「心と体のメカニズム」)

 

年末に刊行されたがんを治す心の力 ――仏教と統合医療が語る、豊かに生きるための「心と体のメカニズム」』の成り立ちについては、対談相手である小井戸一光先生のまえがきに詳しいです。長老の札幌講演を一貫してサポートして下さっている福士宗光さん(ケルプ研究所社長)や石飛道子先生(札幌大谷大学教授)とのご縁の賜物です。素材になった最初の公開対談は2012年に行なわれており、それから2013年、2016年、2018年と繰り返された対話の成果が熟成されて本になったのですね。医療従事者やがん患者さんとそのご家族の心に届く深い内容に仕上がったと思います。ちなみに、宗教やスピリチュアルに傾倒した医師(小井戸先生はその辺と一線を画しています)や研究者が口走りがちな「サムシンググレート」について、スマナサーラ長老は対談の中ではっきり否定しています。

仏教では、サムシンググレートがどうこう、ではなく、因果法則の結果、生まれたのだと簡単に説明します。因縁がそろったら、その結果にならざるを得ないのです。(202p)

生命はみんな非科学的な行為をしているだけです。生命とは、サムシンググレートというべきものではなく、誰かに管理されて、誰かの指令によって動いているものでもありません。「神が命じたので、私はあなたと恋に落ちることにしました」ということは、決して成り立たない。なぜならば、「あなたが恋に落ちたのはあなたの勝手で、私はあなたのことが大嫌い」という相手の反応もあり得るのですから。サムシンググレートか、神の指令であるならば、互いになんの異論も感じず相思相愛になるはずです。生命の仕組みを説明するときに使った、サムシンググレートという概念はどうかと思いますよ。(207p)

Samgha JAPAN(サンガジャパン) vol.29 (2018-04-25) [雑誌]

Samgha JAPAN(サンガジャパン) vol.29 (2018-04-25) [雑誌]

 

雑誌記事ですが、『サンガジャパン』vol.29にはスマナサーラ長老のスリランカでの講演録「苦しみは希望がつくる 」が掲載されています。サンジャパの他号については、別記事で。

電子書籍

それならブッダにきいてみよう

『それならブッダにきいてみよう』シリーズはAmazonKindleのオリジナル企画です。日本テーラワーダ仏教協会の月刊機関誌『パティパダー』に連載されてきたスマナサーラ長老のQ&Aコーナーから、テーマ別に昨年12月から刊行開始して、 こころ編1・2、人間関係編、教育編、ライフハック編、想実践編1・2の計7タイトルが出ました。来年には合冊版や新たなQ&Aをまとめた続編も出したいと思ってます。版元のウエスタパブリッシングさんのFBページで内容見本を読めますよ。

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スマナサーラ長老クラシックス

4作品まとめて並べました。Evolvingさんからは、底本の版元(学研、大法輪閣)に電書化の意思がないことを確認したタイトルの電子版を2016年から出してもらっています。おかげさまで好評なのですが、刊行時期が10年以上前のものも含まれるので、読者の利便性を考えて「スマナサーラ長老クラシックス」というシリーズ名に統一してもらった次第です。内容を改めて校正し直し、表紙も新たにデザインしています。あと何冊か、刊行予定があります。

もしかすると抜けがあるかも知れませんが、今年はこんな感じでありました。来年も良質な仏教書を世に出せるように精進してまいりたいと思います。

 

~生きとし生けるものが幸せでありますに~