倶舎概説

倶舎概説

倶舎概説

いろいろ思うところあって、倶舎論関連の本を読んでいる。河村孝照先生の『倶舎概説』のあとがきにこんな一節が。

 古来「アビダルマ」は仏教の基礎学としてきわめて重要視されてきたが、戦後の文化潮流は実証主義を主流として、文化科学方面では歴史学と文献学の研究に主力が集中され、思想・文化・哲学はきわめて影が薄くなった。だが、日本文化を尋ねようとすれば仏教研究は避けて通れない。仏教研究に志すとき、このアビダルマを端折れば研究は堂々めぐりをして埒があかない。そのことから多くは批評論にとどまって自ら新説奇説に翻弄され、苦しい羽目に陥る。(p211)

ゾーッとするほど鋭いじゃないか。そーだ、そーなんだよ。総ルビで読みやすいのはいいけどサンスクリット語との対応が一切スルーだし、本文の十二因縁の解説など「えーそんなバナナー!」とゆー記述も散見されたりして、とても一般の人に薦められる本ではないが、あとがきのこの文章に出会えただけでも読んだ甲斐はあった。僕も倶舎論を読むようになって、大乗仏教の人と話しててどーも噛み合わなかった点がかなり氷解した。そんで唯識ちらっと眺めてからパーリ三蔵の論事(kathaa-vatthu)あたりを参照すっと、部派仏教がどー脱線したら大乗仏教んとこまでブロークバックマウンテンしちゃうのか、サーッと見取り図が描けた。昔は唯識三年倶舎八年なんて言ったそうだが、スマナサーラ長老の『ブッダの実践心理学』シリーズ読んでれば、倶舎論もだいたい三日で早飲み込みできるだろう(漢文嫌いでなければ)と思う。第三巻、はよ出せるように頑張ろうっと。

アビダンマ講義シリーズ〈第2巻〉心の分析―ブッダの実践心理学

アビダンマ講義シリーズ〈第2巻〉心の分析―ブッダの実践心理学

ブッダの実践心理学 (アビダンマ講義シリーズ―物質の分析) (アビダンマ講義シリーズ (第1巻 物質の分析))

ブッダの実践心理学 (アビダンマ講義シリーズ―物質の分析) (アビダンマ講義シリーズ (第1巻 物質の分析))

それにしても、森章司先生といい、早くしてお亡くなりになった里道徳雄先生といい、河村孝照先生といい、考えてみれば超豪華な先生方に囲まれていた東洋時代の学恩をひしひし感じる今日この頃だったりするな。

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