丸の内丸善『怒らないこと』講演会

午後7時から丸善丸の内本店(東京駅下車すぐ)3階でスマナサーラ長老の講演会『怒らないこと』が開催された。巨大書店の中に設置されたホールはキャパ100名ほど。書架の木立を抜けてたどり着くような感じで、本好きにはたまらん居心地のよさだった。ほぼ満席に埋まった会場には丸の内という土地柄もあってスーツ姿の男性も目だった。質疑応答含めて1時間20分ほどの講演会のテーマは新刊『怒らないこと』(サンガ新書)にちなんで「怒り」について。断片的にとったメモから講演の一部をうろ覚えで紹介すると……

  • 人間が生まれてきて真っ先に覚える仕事は「怒ること」です。仏教では泣くことは怒りのひとつなのです。嫌なことがあるから泣く。嫌なことがあるから怒る。おんなじことです。
  • 皆さんは忘れていますが、生まれることは我慢できないほど苦しいことなのです。
  • 人間は怒りのプロです。だから「怒らないこと」はたいへん難しいのです。それは魚に「泳ぐな」というようなもの。
  • 人間に「怒るな」というのは大変な修行なのです。その事実をごまかすのはよくない。人間は怒りやすい、歩くダイナマイトのようにすぐ爆発するのです。
  • 怒らない簡単な方法はありますか?と訊かれて、わたしは「ありません」と答えます。聞いた人は私に怒ります。また他の人に同じことを訊かれたら「ありますよ。怒らないことです」と答えます。その人も私に怒ります。結局、私は怒られて終わるのです。
  • 怒らない簡単な方法はないけれど、自分が怒りに慣れたらどうでしょうか? それで自分は楽になりますよ。社会では24時間、周りの人が自分を怒っています。でも怒りに怒りを返したらキリがない。怒られていちいち落ち込んでいたらキリがない。だから怒られたって気にしないで、怒りに慣れてしまうことです。
  • 怒りはなぜ起こるのでしょうか?1)嫌なものに出会う 2)自我意識にぶつかる という二つがあります。後者がより問題なのです。人間は自我意識にぶつかるものに怒るのです。生まれてから教育などを通じてどんどん自我意識が強化されて、硬い自我ができあがるのです。
  • 怒りは良いことか、悪いことか、と問うならば、明らかに「悪い」のです。怒ることで人生は失敗して、不幸になります。だから、難しくても怒らない方が幸福になります。日本でも有名な『スッタニパータ(ブッダのことば)』の最初の句では、「怒りは猛毒である」と教えているのです。
  • 人間にはものすごい長寿を保てるポテンシャルがあるのに、怒りのせいで短命になるのだと経典にも説かれています。(寿命だけならいいのですが)異常な欲や異常な怒りによって、身体が壊れる前に頭(知性)が壊れてしまうのです。
  • いじめ自殺が問題になっていますが、自殺する人も怒りで自殺するのです。自我意識が攻撃されて、強烈な怒りで死ぬのです。いじめの根絶なんてできません。だって現代社会ではみんな強烈な自我で生きているのですから、当然、誰もが他人に怒って攻撃するのです。何をしても攻撃されて、怒られて、いじめられてしまうのです。社会はそんなもんです。それをよく覚えておいてください。いじめに慣れてしまうしか、怒られてもいじめられても、へっちゃらでいるしかないのです。
  • 具体的に『怒らないこと』を実践して生きるためには、人生のアプローチを変えることです。人生のアプローチには、ネガティブアプローチとポジティブアプローチとニュートラルアプローチがあります。仏教が推薦する正しい道はニュートラルアプローチですが、これにはすごい智慧が必要です。だからまずは、ネガティブな心をポジティブに入れ替えてください。
  • 具体的には「笑うこと」です。何があっても、人生にユーモアを探して笑っちゃうのです。とにかくよく笑うこと。笑うことの中でも、クールでかっこいいのは「自分を笑うこと」です。自分の置かれている状況や自分の考えにちょっとした可笑しさを見つけて、自分で自分を笑ってしまうのです。それですごく明るくなれるんです。
  • 幸福に生きたければよく笑うことですが、他人を嘲笑って侮辱するのは人権侵害です。やってはいけません。人を侮辱することも怒りの仕業なのです。ポジティブに笑うためには、生命への慈しみが必要です。愛情・慈しみで笑うことのできる「笑いのプロ」になったら、その人はやっと「怒らなくなる」のです。
  • それから皆、他人の評価を気にするでしょう?ほめてもらいたがるでしょう。でも、社会はいくら期待してもほめてくれません。他人の評価を期待していたら、一生怒りで生活することになります。だから世間の評価は気にしない、放っておくことです。云々

怒らないこと―役立つ初期仏教法話〈1〉 (サンガ新書)

怒らないこと―役立つ初期仏教法話〈1〉 (サンガ新書)

仙台からスタッフ動員かけて臨んだ(株)サンガはグッジョブ!12月22日に予定されている立松和平氏とスマナサーラ長老との対談講演も期待できそう。

追記:KOJAKU WORLD NEWS 06/11/25 (Sat) 怒らないこと  同じ講演を聴いた方の日記。併せてご覧ください。

〜生きとし生けるものが幸せでありますように〜