ウェーサクを寿ぐローマ教皇庁

ローマ教皇ベネディクト16世のジハードに関する「失言」(なのかなぁ?)をめぐって気の毒な騒動が起きていますが、カトリック中央協議会のHPを検索していたら、2005年ウェーサク祭にあたっての仏教徒へのメッセージ とゆー文書が引っ掛かりました。教皇庁諸宗教対話評議会のマイケル・フィッツジェラルド議長名で出されたもの。2002年ウェーサク祭によせてとゆーのは、教皇庁諸宗教対話評議会 議長 フランシス・アリンゼ枢機卿名で出ている。たぶん毎年出してるんでしょうね。ローマ教皇庁(俗にいう法王庁 当事者が嫌がってるみたいだから、ちゃんと教皇と呼ぼうね)も仏教(テーラワーダ仏教)の中心的なお祭はウェーサク祭(ウェーサーカ祭)だと認識しているってことですね。公式文書でしょうから、以下に2005年のものを引用します。2004年12月26日のスマトラ沖地震に伴う大津波被災を踏まえて、「仏教徒とキリスト教徒の連帯について」というタイトルになっています。

仏教徒とキリスト教徒の連帯について

親愛なる仏教徒の皆さん

1 今年もまたウェーサク祭が巡ってまいりました。この機会に皆さまに心からのご挨拶を申し上げたいと存じます。この日が、皆さまお一人ひとりにとって、また、ご家族と、皆さまの共同体にとって、喜びに満ちた日となりますように。この機会を用いて、仏教徒とカトリック信者が、ともに生活している多くの場所で、すでに両者のあいだに存在する良好な関係を深めていけることをわたしは確信しています。

2 カトリック教会は今年、第二バチカン公会議の『キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度についての宣言』発布40周年を祝います。この文書は、ある意味で、カトリック信者が他の伝統に属する人々との間で持つ関係を導く憲章と考えられます。本文書は、仏教や他の多くの宗教について言及しながら、「普遍なる教会は、これらの諸宗教の中に見出される真実で尊いものを何も退けない」(『キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度についての宣言』2)と述べています。したがって、仏教徒とカトリック信者は、多くのさまざまな形の対話を行いながら、開かれた心と誠実さと相互に対する尊敬をもって、互いに出会うことができるのです。

3 仏教徒とカトリック信者が協力し合いながら生活し、働いている国々において、彼らは「いのちの対話」を通じて、それぞれの信仰をあかししながらも、互いの理解を深め、善意を育み、隣人としての精神を促進することができます。実際、多くの仏教徒の僧侶とカトリックの男女修道者のあいだで、特別な絆が深められてきました。両者はそれぞれの僧院や修道院にお互いを迎え入れて、ともに沈黙、瞑想、考察を行ってきました。ある共同体のあいだでは、社会的な分野で協力することが可能になりましたし、また、暴力に特徴づけられた世界で平和のためにともに働いている共同体もあります。

4 2004年12月26日に起きた地震とその後の津波による被害に遭った、南アジアと東南アジアの国々においてほど、互いに協力し合う必要性を切実に感じたことはほかにありません。この惨事は、溢れ出る祈りと、憐れみの表明と、寛大な行為とを、今までに見たことのない規模で引き出しました。仏教徒とキリスト教徒は、被災者を助けるために手を取り合ってともに働いてきました。緊急の支援を行い、将来必要なものを評価するうえで、さまざまな宗教組織が協力しています。しかし、長期にわたる再建の必要性は、こうした形に現れた宗教間の連帯が、継続的に行われることを求めています。人間の尊厳を守り、人権を尊重するための解決が見つかるように、善意の人々のあいだでの協力が必要な状況は、ほかにも数多くあります。

5 今年のウェーサク祭には、家族の誰かが行方不明になった家庭がたくさん見られます。これらの家族の皆さまに対して、わたしは、この愛する家族の人々をけっして忘れず、かならず彼らを祈りのなかで思い起こすことを申し上げたいと思います。『キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度についての宣言』が促進しようとしてきた対話は、喜びのときも悲しみのときも、互いに語り合うようにと、わたしたちを励ましています。このような精神をもって、わたしはあらためて皆さますべてに対して、ウェーサク祭のお喜びを申し上げます。

教皇庁諸宗教対話評議会議長 
マイケル・フィッツジェラルド大司教

カトリック中央協議会 司教協議会秘書室研究企画 監訳)

なかなか立派な文章です。仏教とキリスト教の相互批判や対話・討論には長い歴史があります。「御前試合」は別にして、暴力による強制を伴わない対等の立場での討論が行われるようになってからも、はや150年くらいの歴史はあります(参照:キリスト教か仏教か―歴史の証言)。それでも、カトリックが公式に、仏教はじめ諸宗教と「開かれた心と誠実さと相互に対する尊敬をもって」接するようになって、まだ40年余りというわけです。イスラム原理主義(厳密主義)をめぐってイスラム、非イスラムの相互に嫌悪と恐怖の感情が渦巻いていますが、「カトリックだって40年前までは……」と思えば悲観することもないのかな、という気もする(なかなかそんな気になれないけど、無理にでもそう思いましょう)。仏教徒はずっと以前から能天気にクリスマスを祝ってるけど、カトリックの皆さんも、ブッダの出現を祝福してくれてありがとね。お幸せでありますように。


〜生きとし生けるものが幸せでありますように〜