訳注聯珠詩格
- 作者: 柏木如亭,揖斐高
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/07/16
- メディア: 文庫
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訳注聯珠詩格 (岩波文庫 黄 280-2)
作者: 揖斐 高, 柏木 如亭
文庫判・並製・310頁
定価 798円(本体 760円 + 税5%)
2008年7月16日 ISBN978-4-00-302802-5
学芸大前の恭文堂で購入。個人的には、岩波文庫久々のヒット作だな。
杜甫・李白・蘇軾などの漢詩を,江戸時代後期の漢詩人柏木如亭が当時の話し言葉をつかって訳した漢詩集。原詩に忠実に「訳」し,同時に初学者の理解をたすけるための「注」を付ける,という難題を解決。見事なできばえのこなれた「訳注」を完成させた。従来の訓読とはひと味もふた味も違う,清新な味わいの”現代語訳”。(カバー説明文)
漢詩に明るいわけでも取り立てて好きなわけでもないが、これはいい。江戸の話し言葉は「現代語訳」と言い切っても全然問題ない。読めば完全に分かる。言葉の力がビンビン伝わってくる。訳文はこんな感じ。
贈別 杜牧
多情恰似総無情
唯覚樽前笑不成
蝋燭有心還惜別
替人垂涙到天明
多情は恰も似たり 総て無情なるに
唯だ覚ゆ 樽前 笑ひの成らざるを
蝋燭 心有りて還つて別れを惜しみ
人に替つて涙を垂れて天明に到る
多情(なさけしり)ほど総無情(みんなやぼ)に恰似(みへる)が
樽前(さけのなか)でも笑不成(まじめである)から唯覚(しれ)る
蝋燭(らふそく)も有心(なさけしり)で還(やつぱり)別(わかれ)を惜んで
天明(よあけ)に到(なる)まで替人(おれがゝはり)に涙を垂(ながし)てゐたとらふそくのながれをみたてたのなり
最後のひらがなのみの一行は解説。飾らないさっぱりした散文訳だが、それがいい。ほんと、この本すごくいい。