ソクーロフ『太陽』

銀座シネパトスでアレクサンドル・ソクーロフが敗戦前後の昭和天皇を描いた『太陽』を観た。単館上映だが、富田メモ発覚の話題性もあってか、超満員。基本的に時系列にストーリーが進むが、「伝記」的な分かりやすいエピソードをあえて外しているので、劇的な盛り上がりには欠ける。しかしロシア映画らしいのったりしたテンポは悪くない。昭和天皇も含めて登場人物がすべて、どんよりした空気の重みで頭を抑えつけられている感じ。それもロシア映画らしい。歴史観については、大東亜戦争の原因としてアメリカの排日移民法について天皇に語らせたり、パールハーバーと原爆投下についてマッカーサーと応酬させたりと、ずいぶん俯瞰的だ。昭和天皇イッセー尾形の演技は賞賛に値するだろう(こないだ結婚した大学時代からの友人I君の所作とダブってしまい、それが気になって仕方がなかったけど…)。映画は昭和天皇が地下壕で悶々としているシーンが長い。映画の効果音と地下鉄の騒音(シネパトスは地下鉄が通るたびにゴーっという音が鳴るんです)がまじって変な臨場感があった。観終わった後で、いろいろと思い起こすところの多い映画だ。DVDが出たら買っちゃうかもな。日本人が終戦前後に昭和天皇を絡めた作品をつくるなら、側近の目線から、もっとドタバタ劇的に描いてもいいのではないか。その際はぜひ、昭和天皇仁和寺出家計画の顛末も入れて欲しいものだ。そういえば今年に入って『imprint(ぼっけえ、きょうてい)』とか『猫目小僧』とか、観てるのはそんなんばっかりです。
〜生きとし生けるものが幸せでありますように〜