仏教を知るキーワード【17】上座部と大乗 ~南伝と北伝、2つの大きな流れ~

上座部は初期に編纂されたパーリ仏典を伝承するが、大乗は大量に仏典を創作してきた

仏教にはいくつかの分類法があるが、もっとも一般的なのが上座部(じょうざぶ,テーラワーダ)と大乗(だいじょう,マハーヤーナ)という二分法である。伝統的に使われていた小乗(しょうじょう,ヒーナヤーナ)と大乗という分類を調整して、蔑称とされる小乗を上座部と言い換えたものだ。

上座部仏教:ゴータマ・ブッダが説かれた教えの伝統に充実たらんとした流れである。いわゆる南伝仏教。仏滅後100年頃に戒律の解釈をめぐって教団は上座部と大衆部(だいしゅぶ)に分裂したと伝えられる。根本分裂時の上座部(厳格派)の系譜を引く上座部は、紀元前二世紀頃スリランカに布教された。ブッダ入滅後の第一結集(聖典編纂会議)に由来する経典・戒律、仏説を体系化した論(アビダンマ)を併せた三蔵(パーリ三蔵)と、西暦五世紀頃にブッダゴーサが完成した註釈書類を伝承する。紀元後十二世紀以降はタイやミャンマーなどの東南アジアにも教線を伸ばした。

大乗仏教:いわゆる北伝仏教。西暦紀元前後、出家サンガが伝承する三蔵の枠外で、大量の経典を創作される。そこには、ブッダの寿命は無量であること、他方仏土におわす諸々のブッダのこと、衆生救済の利他行に励む超人的菩薩のこと、我々も菩薩道を歩みブッダ(正等覚者)となるべきことなどが記されていた。経典制作者は自ら「大乗」と称し、時に従来の仏教を「小乗(劣った教え)」と批判した。これら文献に現れた大乗仏教はインドの既存仏教の枠内で発展し、龍樹(中観派)や無着・世親(唯識派)らによって体系化された。西暦後三世紀頃から中国で大きく花開き、朝鮮半島や日本・ベトナムに伝播した。インドで十二世紀頃に仏教が滅亡すると大乗や密教を含むインド仏教の総体はチベットに移植され、さらに発展を遂げた。

総図解 よくわかる 仏教

総図解 よくわかる 仏教

 

※『総図解 よくわかる 仏教』(2011,新人物往来社)に寄稿した原稿を再編集して掲載していきます。

日本「再仏教化」宣言!

日本「再仏教化」宣言!

 

現代仏教にまつわる諸問題に石を投げまくった拙著。第一部Ⅲ《仏教言説の認知の歪み》で、大乗>小乗という前提を温存したまま言葉を差し替え、相変わらず大乗仏教中心に語られる日本の仏教言説に異議申し立てを試みた。

 

~生きとし生けるものが幸せでありますように~