仏教を知るキーワード【14】地獄と極楽 ~仏教が説くあの世の成り立ち~

地獄は最下層の転生場所で、極楽浄土は聖者が特別に転生する浄居天がルーツとも

地獄は六道(五道)輪廻の底辺に位置づけられる。極端な苦しみの世界で、しかも極めて寿命が長い。ブッダは「極端に不幸な、極端に不快な、極端に不適意な処だと、まさしく言えるのが地獄である。喩えで説明することも難しい」と述べる。後世の仏典では、等活・黒縄・衆合・叫喚・大叫喚・阿鼻・焦熱・大焦熱の八大地獄、付随する十六の少地獄が説かれた。ちなみに地獄を治める閻魔大王(えんまだいおう)も、文学的意匠として初期経典に登場している。

極楽(浄土)の成り立ちは少々複雑である。経典によれば、如来(菩薩)が母胎に入る時、母胎を出る時(降誕)、等正覚してブッダとなる時、初転法輪時、寿命力を棄てる時、般涅槃する時、小千世界の十倍の範囲(一万世界)が振動し、無量の広大な光が現れる。この一万世界に他のブッダが現れることはないと解された。しかし他の経典にはブッダは三千大千世界の範囲まで音声を届かせることが出来ると記される。

仏教思想が発達して大乗仏教が起こる過程で、経典に説かれた宇宙の外側に、ゴータマ・ブッダ(釈尊)とは別のブッダがいると考える人々が現れた。彼らは禅定を通して別世界(他方仏土)のブッダとまみえようとした。そのような人々の間で信仰されるようになったのが、西方十万億土の彼方にある極楽という清浄な世界(浄土)で説法しているという阿弥陀如来である。

極楽の原点は、初期仏教で説かれた浄居天(じょうごてん)と推測される。浄居天は不還果に達した聖者が、死後転生する特別な梵天のこと。浄居天に生まれた聖者は、そこで阿羅漢果に達して輪廻を脱する。これは、阿弥陀如来を念じて極楽に生まれ変わり、そこで修行して成仏するという浄土教と符合する。

総図解 よくわかる 仏教

総図解 よくわかる 仏教

 

※『総図解 よくわかる 仏教』(2011,新人物往来社)に寄稿した原稿を再編集して掲載していきます。

初期仏教の輪廻説について、パーリ経典から豊富なエピソードを挟んで解説したスマナサーラ長老のロングセラー。地獄の生命に関する記述もある。

アビダンマ講義シリーズ〈第5巻〉業(カルマ)と輪廻の分析―ブッダの実践心理学

アビダンマ講義シリーズ〈第5巻〉業(カルマ)と輪廻の分析―ブッダの実践心理学

 

パーリ・アビダンマ教学に準拠した業と輪廻の分析。専門的内容だが決して「難解」ではない。

 

~生きとし生けるものが幸せでありますように~