ラジオの戦争責任
連休中は原稿作成と原稿作成と原稿作成と麻婆豆腐とスティービーワンダーの日々。ここ二日はスマナサーラ長老の対談本収録に立会い。
- 作者: 坂本慎一
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2008/02/14
- メディア: 新書
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読了。ブラボー!どんな本かとゆーと……
●見返しの解説
なぜ当時の国民は太平洋戦争を支持したのか? この根本的な疑問に答えるために、本書では、戦前戦中のラジオ放送にかかわった五人の人物を取り上げる。労働=修行の思想を説いた高嶋米峰と、それを引き継いだ友松圓諦、受信機の普及に情熱を燃やした松下幸之助、「大東亜共栄圏」を広めた松岡洋右、玉音放送の真の仕掛け人・下村宏。これまで見過ごされていた「声の文化」の歴史的影響力を真正面から検証する。昭和天皇の「終戦の御聖断」の内幕も新資料から明らかに。当時世界最強のマスメディアの功と罪。●目次
はじめに
序章 世界最強のマスメディア・日本のラジオ
第一章 「超絶」の演説家 高嶋米峰
第二章 時代の寵児友松圓諦
第三章 熱意の商人 松下幸之助
第四章 希代のラジオ扇動家 松岡洋右
第五章 玉音放送の仕掛け人下村宏
終章 昭和初期ラジオの功と罪
あとがき
おもな参考文献
よくまとまった書評は以下のリンクをどうぞ。
公共ラジオ黎明期から名講演家として人気を博した高嶋米峰は佛教清徒同志會(後の新佛教同志会)の創設メンバーであった。彼はラジオ出演を通じた啓蒙活動によって長く「逆賊」扱いされていた聖徳太子を国民的英雄としてリバイバルさせ、荒廃した法隆寺の中興にも尽くした。丙午の年生まれの女性に対する差別を解消することにも、彼のラジオ啓蒙活動が大きな貢献をしたという。また彼に続いた友松圓諦(『法句経講話』)や高神覚昇(『般若心経講義』)はラジオを通じて、近代資本主義社会における労働・経済活動を精神的な「修養」の機会と捉えて校定する「生き方」としての仏教思想をひろく日本国民に広め、ラジオによる「耳学問」の人であった松下幸之助(彼はラジオ受信機を日本中に広めた功労者)の思想にも大きな影響を与えた。松下幸之助の言葉として伝えられるキーワードは実は高嶋米峰や友松圓諦のラジオ講話に由来するものが多いそうだ。
後半の松岡洋右や下村宏に関する記述もたいへんスリリングで、戦前の日本におけるラジオを著者がなぜ「世界最強のマスメディア」と呼んだのか。そのあたりの謎解きもたいへん面白い。でも個人的には、前半第三章までは近代仏教史研究の盲点を疲れた感じがして、まさに蒙を開かれた。ラジオという最新メディアに「思想」を注ぎ込んだのは、やはり仏教だった。昭和初期の「仏教ブーム」は仏教を語る知識人の「声」の力、オーラルな「言葉の力」によって形成されていたのだ。戦後においてもなぜNHKで「仏教系知識人」が重用され続けたのか、というあたりもちゃんと歴史的な因縁があったことがわかって、感慨深かった。「アジ活」をまとめる時には気づかずにいたのだが、拙著を読まれた方はぜひ、関連書籍として『ラジオの戦争責任』を読んでみてほしい。
そして、PHP総合研究所HPでは、坂本慎一氏の研究論文PDFが、惜しげもなくたくさん公開されているではないか。
『ラジオの戦争責任』を読んだら、ぜひこちらもトライしてみてね。素晴らしい。坂本氏はいま下村宏の評伝を準備中とのこと。楽しみだなぁ。今年は同年代&さらに若い世代の研究者の素晴らしい仕事にたくさん出会えた。経済はどーかしらんが、文系ジャパンの未来はそう暗くないと思うよ。
関連書籍を紹介しておく。
- 作者: 友松圓諦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1981/03/06
- メディア: 文庫
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- 作者: 高神覚昇
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1968/01
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- 作者: 田中清玄,大須賀瑞夫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2008/05/08
- メディア: 文庫
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- 作者: 佐藤哲朗
- 出版社/メーカー: サンガ
- 発売日: 2008/09/01
- メディア: 単行本
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〜生きとし生けるものに悟りの光が現れますように〜