イスラームへの誤解を超えて/近世仏教思想の独創

お盆に読んだ本。2冊とも類書がない画期的な作品。おすすめ!

イスラームへの誤解を超えて―世界の平和と融和のために

イスラームへの誤解を超えて―世界の平和と融和のために

イスラームへの誤解を超えて―世界の平和と融和のために
作者: カリード・アブ・エル・ファドル
メーカー/出版社: 日本教文社

穏便主義的な邦題につられてスルーするなかれ。本書は「現代を代表する有力なイスラーム思想家の一人。イスラーム法研究の第一人者でありジャーナリスト」たる著者が自ら拠る「イスラーム穏健派」(イスラームの潜在的多数派)の思想的立場を鮮明にしつつ、聖地マッカ(メッカ)を牛耳りサウジ王室と癒着するワッハーブ派ら「イスラーム厳格派」の思想を真っ向から完膚なきまでに批判した力作。従来のいまいち思想的立脚地がはっきりしない曖昧かつ感情的なイスラーム擁護本、偏見むき出しのイスラーム批判本とは一線を画したたいへん意義深い作品。イスラームに関して、まさに、こういうのが読みたかったんだ。著者は学究肌の「生長の家」三代目と懇意のようなので、ぜひ他の本もどんどん、日本教文社から翻訳してほしい。イスラーム研究者もシカトしないで、きちんと評価するように。

近世仏教思想の独創 僧侶普寂の思想と実践

近世仏教思想の独創 僧侶普寂の思想と実践

近世仏教思想の独創 僧侶普寂の思想と実践
作者: 西村 玲
出版社: トランスビュー

こちらは5000円出しても、もっとよこせと言われる高い本だが、仏教書読みなら必読。江戸仏教のマイノリティたる律僧(いわゆる小乗戒を実践する清僧)でありながら、増上寺で講義を行うなど朝野の尊敬を集めた普寂の思想を手がかりに、富永仲基らによる伝統的な仏教世界観の解体(出定)に仏教者はいかに向き合い、乗り越えようとしたかを浮き彫りにしている。読後、さざなみのように感動が押し寄せてきた。『上座部仏教の思想形成』の馬場氏といい、本書の西村氏といい、同世代のよい仕事をする仏教研究者が台頭してきたのはうれしいな。

〜生きとし行けるものに悟りの光が現れますように〜