パール博士「世界に必要な宗教」より

佼成出版社の原稿書いているうち夜になった。所用のついでに書店で買った本。

勤勉の哲学 (NON SELECT)

勤勉の哲学 (NON SELECT)

勤勉の哲学 日本人を動かす原理・その2
作者: 山本 七平
出版社: 祥伝社

日本的革命の哲学 (NON SELECT 日本人を動かす原理 その 1)はすごく面白かったので、こちらも楽しみだ。

ゴーマニズム宣言SPECIAL パール真論

ゴーマニズム宣言SPECIAL パール真論

ゴーマニズム宣言SPECIALパール真論
作者: 小林 よしのり
出版社: 小学館

SAPIO連載では、ちょっとしつこく感じてしまったパール判事論だが、単行本で読むとどうだろうか。

そういえば、↓も積読だった。

パール博士「平和の宣言」

パール博士「平和の宣言」

パール博士「平和の宣言」
作者: ラダビノード・パール
出版社: 小学館

本書に収められた、仏陀のこころに生きる(p165 法政大学での講演録)、世界に必要な宗教(p267)といった文章を読むと、パール博士は仏教を深く理解していたことが分かる。後者の言葉を引く。

(前略)
 仏陀の教えには各人の直接経験に含まれていないものは一つとしてない。仏陀はこの点から、そこにあるいろいろな要素を指摘し、あるがままの人生のはかない現実に直面するために、この実際生活においてこれらの要素が提供する原動力を明らかにしている。さらに仏陀はこのようにして情緒的な、審美的な、したがって本質的に精神的な、満足を得ることが可能であることを発見し、それによって、われわれの愛するものの死のみでなく、他の有限な一切のものの死に対して心構えをもたせてくれた。またあらゆる被造物、人間や動植物にたいする深い、悲劇的といってもいいほどに深い同胞感を、われわれにもたせることによって、仏陀はわれわれに独立独歩の仕方を教えてくれたのである。
(中略)
 仏陀なくしては人は完全な道徳的宗教的な生活に達しえないということはない。明らかにその本性上、われわれが責任をとることができないような、遠い過去に起源をもつ罪(人間の原罪)が、われわれに課せられていて、つねにわれわれの重荷となっているというようなこともない。その結果として、仏陀がわれわれのために苦しみを受けたとか、死んだとかいって、われわれをして永久に仏陀に負目(おいめ)を感じさせたり、それをもって仏陀の財産にするというような、自己犠牲の過度な正義感も、なんの権利も、仏陀の側には存在しない。仏陀の人間生活にたいする権利は、たんに一人の有限な人間の権利にすぎない。彼はそれ以上何も要求しなかった。彼は徹底的な現実主義と、最も冷静な合理主義をもって、ただ、あらゆる有限な被造物にふりかかる不可避的な死が課する人間と自然物の不幸にたいして人の関心を呼び起こし、人とともにこの不幸に同情をもつにすぎないのである。それと同時に仏陀は、事物の本性内の他の一つの要素と、それの存在とを知り、これを啓発することによって生ずる審美的な観賞や、魂の滋養や感情の平静に関する実利的な結果とを指摘している。仏陀が、名目上――といいきれなければ精神上、他のいかなる世界の宗教的指導者よりも、より多く――地上の住民たちの感情と愛情とをかちえたということは、不思議ではない。
 彼は他の諸宗教をしりぞけたり、破壊したりするよりも、むしろ寛容な態度で、友誼(ゆうぎ)的にこれらと結び、また彼みずからそれに溶け込むことによって、献身をかちえたのである。「インドのヒンドゥー教は紀元前六六〇年このかた、そのかなりの部分、内部における仏陀の改革のおかげで、今日のごとき隆盛をみている。中国、朝鮮、日本、モンゴルの文化は、儒教的、道教的、神道的なものであると同時に、仏教的なものである」(※引用者注:ロースノップ教授の言葉)
 仏教の教養ある後継者のなかには、知的な事物や美的な事物を鑑賞するものも起こった。これはとても、包括的な態度であって、じっさい、自分の宗教上哲学上の教義以外のものを積極的に歓迎するということであり、またそれに伴う寛容心であって、事物の本性中の神的な要素が真に文字通り、たんに全人類にのみでなく、あらゆる美的な自然物のうちにも存するということを主張する人にとっては、ふさわしい精神である。
 これこそ戦争によって破壊された世界が、是非とも必要としているものである。世界は教育体系としての宗教を必要としている。それによって、人類は自己を訓練し、その結果は自分自身の人格を望み通りに変化せしめ、次に社会を望み通りに変更し、かくして自覚を高め、彼ら自身と彼らを構成している宇宙との関係を、さらに適切化することができるようになるであろう。
(ラダビノード・パール「世界に必要な宗教」より

「教育体系としての宗教」とは、すなわち仏教のことである。パユットー師の『テーラワーダ仏教の実践asin:4901679449』『仏法asin:4901679643』でも繰り返し説かれている仏教の価値の中心をずばりと捉えたパール博士の眼力はすさまじい。右であれ左であれ、パール博士を論じる人は、彼が日本人に「仏陀のこころに生きる」ことを諄々と説いたことも忘れないでほしいものだ。