ブータン仏教から見た日本仏教
- 作者: 今枝由郎
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2005/06/30
- メディア: 単行本
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以前、tenjin95さんという曹洞宗の僧侶が主催するブログ『つらつら日暮らし』にて「仏教原理主義」をめぐって激しい応酬をした。tenjin95さんは「他国の仏教を基準にして日本仏教を批判する」行き方に反発して、僕から見たら「見苦しい」としか言いようがない居直り護教論を展開しておられた。あまりにアホくさくてムラッときちゃったんだよね。
で、本書はその「他国の仏教を基準にして日本仏教を批判する」というスタンスで書かれた分かりやすい一冊。なんたってブータンですよ。著者は10年滞在したブータンの金剛乗仏教と日本仏教を比較するんだが、現在はフランス在住の研究者。その点でも日本人インテリのコンプレックスくすぐってくれる。書評も出て、それなりに売れてるみたい。
内容については、まぁ面白いところもある。大乗仏教・上座仏教を問わず、通仏教的な観点から見て日本仏教がいかに奇形的で異様な存在であるか、ということを淡々と証拠を出して語っている。宗派の利害に紐付けされた日本の仏教学者がさらけ出してしまうこっけいなまでの非論理性、明治以来の連綿たる努力に比例しない学問としての幼稚さについても、しがらみのない外部からの視点であっさり喝破している。この「ひじる日々」の「現代仏教論」カテゴリで指摘したポイントとも響きあうところは少なくない。
でも、ご本人はチベット仏教ひいきのダライ・ラマ好きの御仁なので、それ以外についての記述はひどいところも目立つ。特に、著者いうところの「テーラヴァーダ仏教」(テーラワーダ仏教)についての記述はかなり雑。その辺に売ってる豆知識本の書き写し程度です。アビダルマの研究が煩瑣哲学だとか、回向の思想が大乗仏教特有だとか、ちゃんと調べてたら言うはずもない、いい加減なウソばっかり羅列している。やれやれ。パーリ仏典も眺めただけでほとんど読んでないなぁという印象ですな。
あと、まとめんとこで梅原猛とかひろさちやとか上田紀行とか玄侑宗久師とか引用して吟味してるけど、チョイスがあまりにもベタすぎ。ひろさんなんか、日本仏教原理主義で、玄侑師との対談で「チベット仏教は邪教だ」と言い切ってるトホホな御仁なのに…。
確かに上記の論客はメジャーかもしれないけど、日本語の仏教はもちっと豊かですよ。せめてスマナサーラ長老の本一冊くらい紹介しなきゃ、現代日本仏教の言葉を論じたことになりません(と断言しておきましょう)。それでもインターネットやらない仏教書読みにとってはショックな部分もあるかもね。
〜生きとし生けるものが幸せでありますように〜