幽霊のいる英国史・イエスは仏教徒だった?

講義のあと、ゴータミー精舎に戻ると、たくさんの方が明日のウェーサーカ祭にそなえて精舎の飾りつけなど祭の準備をしてくれていた。僕ももろもろ掲示物作成など。

行き帰りの電車で読んだ本。

幽霊のいる英国史 (集英社新書)

幽霊のいる英国史 (集英社新書)

石原孝哉『幽霊(ゴースト)のいる英国史』 (集英社新書)

イギリスでは幽霊(ゴースト)は不動産の付加価値になるそうだ。幽霊が出ると買い手がいない……どころか、その逆。幽霊付きの物件は価値が高額で取引されるのだ。不動産広告でも「幽霊出ます!」と堂々と表示されるとか。英国において、幽霊とは公に語られてこなかった敗者の歴史を庶民が記録するフォーマットでもあった、とゆーことで幽霊(ゴースト)の伝承から英国の歴史を照射したユニークな新書本。それにしても、英国史(諸民族と諸王朝の興亡史)は野蛮すぎる。王朝なんて言っても、所詮は手斧を振り回しながら裸足でボコりあってた野蛮人の閻魔帳である。人間臭いどころか、処刑されて臓物をえぐりだされた死屍累々の腐臭が漂ってくるような凄惨なおはなし。著者も事前申告しているが、同名異人が多すぎてわけわかめ。それでも、幽霊になった死者をいとおしみ尊敬する英国庶民の気質ってのは、なかなか面白いなぁと思った次第。

読んだけど、ほっといた本。

イエスは仏教徒だった?―大いなる仮説とその検証

イエスは仏教徒だった?―大いなる仮説とその検証

  • 作者: エルマー・R.グルーバー,ホルガーケルステン,市川裕,小堀馨子,Elmar R. Gruber,Holger Kersten,岩坂彰
  • 出版社/メーカー: 同朋舎
  • 発売日: 1999/05
  • メディア: 単行本
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『イエスは仏教徒だった?―大いなる仮説とその検証』
以前から気になっていたがとっとと絶版になったので、読まずにいた。図書館で取り寄せてもらったのだが、イマイチ。キリスト教の福音書はかなりいい加減なしろもので、イエスその人にまでさかのぼれる言行はわずか。イエスより500年以上まえに活躍した釈尊の教えがほぼ完璧に保存されたのに比べると、比較にならないくらい「原資料」としての価値は低い。中東に散らばったいろんな言い伝えやら、他宗教の教えやらからのパクリで固めて、何とか読めるものに仕上げているだけ。ブッダはサンガという聖なる集いを「理想の共同体のモデル」として後世に残したが、イエスは弟子が勝手に作った教会という名の暴力団によって、新宗教の開祖に祭り上げられた。だから、理性を持ったインテリになればなるほど、西欧人だってキリスト教は嫌いになるのである。でも、イエス≠キリストの言行として伝えられている教えの中には、なるほど確かに傾聴に値するものが含まれている……と思って調べてみると、それはほとんど、ブッダの教えに元ネタがあるのだ。なんだ、イエスは仏教徒だったんじゃねぇのか、とゆーことで書かれたのが本書。まぁ、アショーカ王のミッションやらのおかげで、イエスが仏教経典にも親しんでいたのは確かだろうけど、「仏教徒」と言えるほど精通していたかと言うと、ちょっと怪しい気がする。まして、エジプトにテーラワーダの教団があったのでは?と主張するのは現時点ではちょっと勇み足に過ぎるだろう。イエスは「仏教もかじったことのある情緒不安定なおっさん」とゆーくらいが関の山ではないか。あるいは、福音書をでっち上げる過程で、仏教文献を読んだことのあるインテリや修行者の知識が拝借されたというのが、妥当な線かもしれない。本書の巻末には、本書の趣旨に批判的な立場から検証する日本人研究者の論文がいくつも載せられているけど、それもまた穿ち過ぎで、ピントを外している感は否めない。何より、これだけ雁首集めて訳出しておきながら、仏教用語(パーリ語サンスクリット語)のカタカナ表記がデタラメ(○○大学の○○氏にチェックしてもらったと書いてあるけど、名前出された方は赤っ恥だよ)なのはどうしたものか。その点では、とっとと絶版になってよかったかもしれないね。

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