大法輪5月号「心とは何か」/祝『仏法』初amazonレビュー

スマナサーラ長老の単行本や雑誌インタビュー記事の校正。
夕方から夜半まで長老とアビダンマ4巻の原稿作成。進捗率まだ29%といったところか。


仏教月刊誌『大法輪』5月号

『大法輪』(大法輪閣)平成20年5月号にスマナサーラ長老が寄稿。ご一読を。

特集‖心とは何か─そのしくみと目指すもの
心労の多い現代日本社会。「心」を病む人は年々増加しています。仏教では釈尊の時代からこの「心」を見つめると共に、安定させる方法も実践してきました。ここにその教えを紹介します。

【第一部 仏教が説く心】
ブッダは心をどう説いたか………………A・スマナサーラ
唯識─心の分析…………………………村上太
天台が説く心………………………………塩入法道
密教の十住心……………………………宮坂宥洪
禅が説く心………………………………中尾良信
仏教が目指す心…………………………菅沼 晃
上座仏教のヴィパッサナー瞑想…………井上ウィマラ

【第二部 現代人と心】
現代日本人の心の変容…………………福島 章
仏教カウンセリングの実際………………奈倉道隆
「スピリチュアルブーム」を考える…………山崎龍
宮沢賢治作品にみられる心………………鎌田東二

アマゾンにパユットー師『仏法―テーラワーダ仏教の叡智』のカスタマーレビューがようやく載った。
お、vivekatrekさんじゃん。

仏法―テーラワーダ仏教の叡智

仏法―テーラワーダ仏教の叡智

仏教の叡智を実相面で理解し、倫理面で実践することが梵行!, 2008/3/23
By vivekatrek (大阪府枚方市)

パユットー師の『仏法』には、原版(全375頁)と増補改訂版(全1145頁)の二種類があり、本書は前者を翻訳し、かつ後者で本文を訂正・補足したことにより、私家版に比べれば遙かに読みやすくなった。しかし、本書は腰を据えて読む必要がある。例えば「六処」の説明(p.37〜46)など、最初は定義や体系が整理されていないと感じたのだが、何度も読み返して自分で整理している内に、“如理作意の原理に従って、構成するものの分析と因縁を調べ求めるように思考させる(p.279)”ことを意図した著者の老婆心だと感じている。

仏教の叡智を「実践面」で専門書レベルまで理解させ、続く「倫理面」で日常生活での役立て方を具体的に示す本書のような仏教書はこれまでに見たことがない。例えば、次の内容は必見である。
1)無常や苦に比べて分かりにくい「無我性」の価値を最初・中間・高位で説いている(p.83〜84)。分かりやすく表現すれば、貪・瞋・痴の心を最初段階では理屈抜きに我慢し、中間段階では自ずと出せなくなり(∵出る前に気づくから)、高位段階では自ずと出なくなる(∵「無我性」の原理を知るから)ということであろうか。
2)仏教で根本原因を考えることは執着に他ならない。従って“(十二縁起の)無明が根本原因でない”ことの文証として、「無明の生は漏の生起による」というパーリ仏典(p.92)を引用している。
3)「十二支縁起」で、【過去世の因と現在世の因】及び【現在世の果と未来世の果】の対応を導き、更に「二十支縁起」と「三輪転(煩悩→業→異熟)」へと展開する説明(p.119〜126)は、今まで見たことがない。
4)釈尊がブッダになった理由が明確にされている。つまり、「止(シャマタ=色禅定+無色禅定)」=「世間解脱」であり、「出世間解脱」=「滅尽定」に到達できるのは「近行定」(p.331)の後に始まる「観定」で育成される「慧」≡「観(ヴィパッサナー)」である(p.335)。

さすがよく読んでくださっている。『仏法』サンガ版への反響はあまり目にしなかったので、うれしい。

〜生きとし生けるものが幸せでありますように〜