馬場紀寿『初期仏教 ブッダの思想を辿る』岩波新書1735について。「布施」の語釈と、アレクサンドロス大王のインド遠征軍に同行したジャイナ教行者の話など
同じこといろんな場所に書く気力がない、ということでTwitterやFacebookにかまけてブログはさぼってますが、いくつか残しておきたいことが出てきたので書きます。
以下、馬場紀寿『初期仏教 ブッダの思想を辿る』岩波新書1735についてのTwitterメモ。「布施」の語釈と、アレクサンドロス大王のインド遠征軍に同行したジャイナ教行者の話など。
馬場紀寿先生、中村元の引力圏をぶっちぎったなぁ。(『初期仏教 ブッダの思想を辿る』岩波新書1735) pic.twitter.com/OxhRBnp6FR
— nāgita #antifa (@naagita) August 23, 2018
え? 馬場紀寿先生、ダーナの訳語である布施の「布」を「(衣の)布」のことだと断言してる。これ誤解じゃないのかな? ずっと布教や流布の「布」だと理解してたんだけど……。 pic.twitter.com/R2jgTSA7cR
— nāgita #antifa (@naagita) August 23, 2018
第4章「贈与と自律」 では、長部「起源経(世起経)」「転輪王経」が取り上げられてて、個人的に激しく胸熱です。数年前に拙著(『日本「再仏教化」宣言!』)でワーワーまとまり無く書き綴ったことをエレガントにまとめて頂いたみたいな。(妄想です。)
— nāgita #antifa (@naagita) August 23, 2018
読了。「アーリヤ」の意味転換を論じた第6章「再生なき生を生きる」は素晴らしい締めくくり。贅沢を言えば、仏教入門という性質を補強するために、大乗と上座部それぞれの展開(神話の創造 vs 歴史の創造)に触れたエピローグをあと50ページくらい書き加えてほしかった。そこは続編のお楽しみかな?
— nāgita #antifa (@naagita) August 23, 2018
第1章のこの記述。紀元前5世紀頃に人類史を画期する思想哲学を生んだ、ギリシアの都市国家(ポリス)も、インドの諸国家(ジャナパダ)も、超巨大帝国たるアケメネス朝ペルシアの“周辺国家”だったという史実。西からオリエントを望む史観でも、伝統仏教の三国史観でも、等閑視されていた重要ポイント。 pic.twitter.com/ntkonjKSK2
— nāgita #antifa (@naagita) August 24, 2018
アレクサンドロス大王は遠征でインダス川上流域のタキシラに滞在した際、ジャイナ教の行者たち(裸形派)に出会って感銘を受け、そのうち一人を同行させて自分の友人にした……。『アレクサンドロス大王東征記』にあるそうだ。これって有名な話なのかな?
— nāgita #antifa (@naagita) August 24, 2018
「布施」の件について辞書類を確認しましたが、「布(ぬの)をほどこす」という解釈は間違いで、「しき・ほどこす」が正しいようです。布施(ふし)は『莊子』など先秦時代(仏教伝来以前)漢籍でも使われて、後にダーナの訳語に用いられました。画像は、岩波仏教辞典、字通、佛教語大辞典の該当箇所。 pic.twitter.com/E7D5kVPEle
— nāgita #antifa (@naagita) August 24, 2018
アレクサンドロスがインド遠征中にジャイナ教の教えに惹かれ、出家修行者を遠征軍に同行させていた、という記述について。アッリアノス『アレクサンドロス大王東征記 下巻 付インド誌』岩波文庫青483-2確認したら、第7巻(前324年春―前323年夏 p157-)に該当記述があった。 https://t.co/xGU5YnK6DO
— nāgita #antifa (@naagita) August 27, 2018
目次の見出しを記すと、《現世の価値を軽んずる哲学教説への彼の関心。タクシラでの「裸の哲学者」たちとの邂逅と彼らの言説。インドから軍に同行してきた「裸の哲学者」カラノスの自焚死の逸話》あたり。インドを撤退してペルシアに入るとジャイナ教の修行者カラノスは健康を害し、
— nāgita #antifa (@naagita) August 27, 2018
大王に希望して自焚死(薪の上に横たわり生きながら火葬)する。全軍注目のなか微動だにせず炎に焼かれたジャイナ教者カラノスの姿に、人々は驚異の念に打たれた。『アレクサンドロス大王東征記』は大王の死後450年を経て編纂されたので、原資料が残っていればもっと興味深い記述があるのかも。
— nāgita #antifa (@naagita) August 27, 2018
アレクサンドロス大王が魅了されたジャイナ教僧団の指導者はダンダミス、カラノスは彼の弟子の一人らしい。ダンダミス→ダーンタ( dānta 調御されたる)とか、カラノス→カルナ(karuṇa 憐れみ・悲)とか、サンスクリット系インド名に復元できそうな気がする。もうとっくにやられてるだろうけど 笑
— nāgita #antifa (@naagita) August 27, 2018
まとめ。
- 布施とは断じて「布を施す」という意味ではありません!
- アレキサンドロス大王と友達になったジャイナ教行者カラノスについてもっと知りたい!
アレクサンドロス大王東征記〈下〉―付・インド誌 (岩波文庫)
- 作者: アッリアノス,大牟田章
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2001/06/15
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~生きとし生けるものが幸せでありますように~