上座仏教事典/サンガジャパン25

最近、自分もちょこっとかかわった本が出たので告知いたします。

上座仏教事典

上座仏教事典

 

 『上座仏教事典』(編:パーリ学仏教文化学会 上座仏教事典編集委員会 発行:めこん)は、パーリ語中心の仏典研究とアジア地域研究の両面から上座仏教テーラワーダ仏教)を総合的に扱った世界初の大著。画期的な事典です。

事務局を担当された駒澤大学の矢野秀武先生、おっつおっつお疲れさまでした!

執筆者はなんと総勢一〇三名。総説編では聖典・教義、修行・儀礼の実際などの教理面から、スリランカミャンマー・タイ・ラオスカンボジアにおける上座仏教の歴史と実践形態、社会との関わりまで幅広く解説されています。

項目編では五十音順に用語・人名・地名・仏典など七三五項目を収録し、「梵網経」などの主要経典から「マハーシ長老(マハースィー・サヤドー)」といった現代の名僧まで広範囲に検索可能です。資料編はパーリ語学習手引き、戒律一覧、パーリ語文献リスト(三蔵・注釈書・他)、上座仏教圏各国の現行憲法における宗教関連規定、年表など。

日本テーラワーダ仏教協会の関係ではスマナサーラ長老が「スリランカ上座仏教と日本」を寄稿の他、藤本晃先生と佐藤哲朗もいくつか項目を担当。僕が担当させていただいた項目は、梵網経、沙門果経、大念処経とゆうパーリ長部の重要経典で、分不相応ながら汗かいて書きました。

あまりの大部のため、まだ全体に眼を通すに至っていませんが、非常に勉強になります。ただ、ダルマパーラとか、ダルマパーラとか、……自分で調べた経験のある項目については、あれ、事実関係が違うんじゃね?という気になるところも散見されます。

ぜひ増刷、電子化とさらなる普及を図って、アップデートしてほしいものです。書店に流通する数は少ないと思いますが、注目していただきたいところです。

サンガジャパンVol.25

サンガジャパンVol.25

 

サンガジャパン25号特集「原始仏典――その伝承と実践の現在」最近スピってんじゃねーか?マインドフルネスでビジネス寄りに日和ってんじゃねーか?と思ってたサンガジャパンが渋めの特集です。アッキーこと藤本晃先生が「原始仏典とは何か」の文中で下田正弘先生や馬場紀寿先生にケンカ売ってて、楽しいです。両先生とも、ぜひ無視しないで全面論争に発展してほしいものです。あと、ざっと読んで面白かったのは吉村均先生の大乗仏教は大乗経典に基づく教えか? 大乗の仏教理解と阿含経典」ですね。現代のチベット大乗仏教に息づく阿含アーガマ)の教え、そして阿含を駆使したナーガルジュナの主要文献が紹介されます。片山一良先生のインタビューも、背筋伸びますね~。

しかし、なんといってもサンガジャパン25では、スマナサーラ長老の重厚な法話が2編も読めるのがお得感あると思います。特集巻頭に置かれた「経典の読み方 自分にピッタリの金言を見つける」では、数多くの経典のなかから自分に合った教えを選び、人格向上の道しるべとして活かしていく方法がレクチャーされます。圧巻なのはパーリ経典解説の新連載「スッタニパータ 第五「彼岸道品」一、アジタ仙人の問い」〔前編〕です。文献学的に最古の経典と謂われることの多いスッタニパータ(経集)の核心部分ともいえる彼岸道品ですよ。今回はたった2偈の解説ですが、なんと密度の濃い法話か。

この世界は何によって覆われているのですか?

なぜ(世界の)本当の姿が見えてこないのですか?

(世界が見えないように)塗りつけられた汚れは何なのですか?

(この世界にとって)最大の恐怖とは何なのですか?

というアジタの問いへの釈尊の答えとは? スマナサーラ長老の稀代の説法師としての力量が発揮されたお話だと思います。両編とも、構成を担当させていただきました。ぜひ読んでみてください。

 

~生きとし生けるものが幸せでありますように~