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近代仏教スタディーズ/仏教をめぐる日本と東南アジア地域/『スッタニパータ』と大乗への道

最近、献本いただいた書籍を紹介します。

近代仏教スタディーズ: 仏教からみたもうひとつの近代

近代仏教スタディーズ: 仏教からみたもうひとつの近代

 

最近盛り上がりを見せている近代仏教研究の最新成果を29人もの研究者がよってたかって紹介するという入門書的な作品です。まだカオスなところもある分野だけに、「迷宮散歩」への誘いだと編者の吉永進一先生も仰ってます。その吉永先生の「はじめに」から一文字&コマの無駄もない知の宝庫だと思います。あと、人物相関図に出てくる数々の似顔絵(宗教学者の内藤理恵子さん作)が、イメージを豊かにする上でもすごくいい効果をあげています。図書コーナーでは、拙著『大アジア思想活劇―仏教が結んだ、もうひとつの近代史』も取り上げて頂いてます。仏教への興味は薄くても、近代史や広く人文科学全般に関心がある人ならば、マストバイでしょう。 

主要目次:第1章 「近代仏教」とは何か?(「近代仏教」を定義する 日本の近代仏教の特徴とは? ほか)/第2章 近代日本の仏教史をたどる(近代の衝撃と仏教の再編―幕末・維新期 “新しい仏教”のはじまり―明治期 ほか)/第3章 よくわかる近代仏教の世界(グローバルに展開する 学問と大学のなかで発展する ほか)/第4章 近代仏教ナビゲーション(初心者のための人脈相関図 初心者のためのブックガイド ほか) ※詳細目次は版元ページに載っています。

仏教をめぐる日本と東南アジア地域 (アジア遊学 196)

仏教をめぐる日本と東南アジア地域 (アジア遊学 196)

 

「日本と現在の世界趨勢を築いた過去一五〇年間に東南アジア地域に関わった日本人仏教者の動向を軸にして、仏教をめぐる人と社会、地域間の動態と推移を総合的にとらえることが本誌の目的である。」序文(大澤広嗣)

こちらも近代仏教に関する共同研究の最新成果です。テーラワーダ仏教圏でもある東南アジア地域と日本仏教がどう関わっていたのか? 現代日本におけるテーラワーダ仏教の広まりの背景を知るうえでも重要な著作だと思います。その観点から必読なのは小島敬裕「ミャンマー上座仏教と日本人―戦前から戦後にかけての交流と断絶 」と藤本晃「テーラワーダは三度、海を渡る―日本仏教の土壌に比丘サンガは根付くか」です。前者の論考では、ヴィパッサナー瞑想ブーム以前にミャンマーのマハーシ長老から直接冥想指導を受けた日本人僧侶たちのその後を追っているのですが、ほんの数十年前の近過去と現在で、テーラワーダ仏教への関心の動機づけががらりと変わっていることに驚かされます。後者は、釈興然らの上座仏教日本移植の試みなどを概観しつつ、スマナサーラ長老の活動の意味を現在進行形で考察する参与観察的なレポートです。藤本師はそれで自坊が宗派離脱するところまで行っちゃったんだから、”参与”するにもほどがありますが。目次は版元ページに載ってます。

『スッタニパータ』と大乗への道

『スッタニパータ』と大乗への道

 

龍樹に関するユニークな研究で知られる石飛道子先生が『スッタニパータ』の第四章「八偈品」 を新たに訳しつつ読みこんだ作品です。パーリ語の文法用語なども出てくるので仏教書読みの中級者がターゲットかもしれませんが、著者のガイドに沿ってブッダの直説に触れていくうちに心が静寂になっていく素晴らしい読書体験でした。「法にしたがった法の実践ということを特に意識して」読み進める著者の真摯な姿勢がそうあらしめたのでしょう。2回通読しましたが、これからも折に触れて読み返す本になると思います。ただ、タイトルにも入っている「大乗への道」云々の記述は、著者のこだわりとしては分からなくもないし、大乗仏教関係者にとっては慰めと励ましになるでしょうけど、「八偈品」 そのものを味わううえでは割とどうでもいいようにも感じたのも事実です。それにしても、以下のような冴えわたったコメントにはため息が漏れます。必読です。

「見たこと、聞いたこと、戒や行や、考えたことについてあらゆることが捨てられると、どうなるのか、ということが、ブッダのこの経典のことばを通して、みなさまの心に伝わるでしょう。残ったものは、何でしょうか。何も残さないブッダ。しかし、わたしたちの心にはブッダの行道すべてが残ることでしょう。」(216-217p)

主要目次:1 「八偈品」について(「八偈品経」と「義品経」 部派への道「八偈品」 大乗への道「義品」 大乗との連関 『スッタニパータ』の「スッタ(経)」について ほか)/2 「八偈品」訳と解説(欲経(Kamasutta) 洞窟の八(偈)経(Guhatthakasutta) 悪しきことの八(偈)経(Dutthatthakasutta) 清らかなことの八(偈)経(Suddhatthakasutta) 最高のことの八(偈)経(Paramatthakasutta) ほか)

 

~生きとし生けるものが幸せでありますように~