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今年読んだ仏教書ベスト8

今年読んだ本を振り返っているうちに、2015年仏教書ランキングみたいな記事を書きたくなりました。自分でももっぱら仏教書を編集・制作しているのですが、新刊をもれなくチェックしているわけではなし、たまたまご縁で今年読んだ本のなかから何冊かピックアップしてみたいと思います。ランキングの順位は紹介したい&思いだした順なので、それほど意味はありません。

 

第1位 松尾宣昭 『仏教はなにを問題としているのか―龍谷大学講話集』永田文昌堂

www.kinokuniya.co.jp

実は松尾先生に拙著『日本「再仏教化」宣言!』を差し上げたご縁で献本していただいたんですね。永田文昌堂はAmazonにも卸してないので、著者のご好意が無ければ怠惰な僕は一生知らずに終わったかも。表題のとおり龍谷大での講話集で、しかもテーマが建学の理念ときたもんで、内輪向けのお話かと思いきや、浄土真宗的な仏法の「掴み方」が見事に表現された内容で、ちょっとやばいくらいに耽溺して読み込んでしまいました。入手しづらいとは思いますが、仏教好きな方はぜひ手に取ってほしいと思います。

無明とは「宇宙にはどこにも中心はない」という真理をはねつけ、「宇宙には〈この私〉という中心がある」という言葉で指し示されるような身心のありかたをしていること、なのだと思います。30p

「自灯明、法灯明」といっても、灯明が二つあるわけではないのです。法灯明つまり仏法という一つの灯明があるだけです。他方の「自灯明」というのは、その仏法という唯一の灯明を、自らの内にしっかりと点火せよというお示しなのですね。86p

「生かされて生きている」といえば聞こえはいいですが、それはとりもなおさず「殺して生きているということと表裏一体なのです。
けれども「生かされている」になら感謝でいいですけど、「殺している」に「感謝」ではおかしいでしょう。151p

どんな生きものでも死にとうないの一念で生きている。それを殺すのですから、とるべき態度は「感謝」ではなく「慚愧」のはずですね。「生かされていることへの感謝」とは、少なくとも食事ということでいうなら、「殺していることへの慚愧」と表裏一体でなければならない。p152

生かされて生きているから"罪深い"(原文傍点)のです。しかし生存様式そのものが罪深いなどという実感など、まるでないわたしです。だから無慚無愧。自分の自己中心性に驚かない。そしてわたしには見えない"そこ"(原文傍点)こそを問題にしているのが仏教のはずです。そこを外して単に生かされて「ありがとう」では、欲を満たしてもらってうれしいなと言っているのと変わりないことにならないでしょうか。p153

 

第2位 及川真介[訳註] 『仏の真理のことば註(一): ダンマパダ・アッタカター』春秋社

仏の真理のことば註(一): ダンマパダ・アッタカター

仏の真理のことば註(一): ダンマパダ・アッタカター

 

ついに出た!ダンマパダ(法句経)の注釈書であり、初期仏教にまつわるエピソード集としても名高いダンマパダ・アッタカター(法句註)の日本語全訳シリーズが刊行開始されました。例によって超お高いですけど、これはお小遣いはたいて買う価値があると思います。 第一巻には釈迦族滅亡にまつわる物語の詳細も。

 

第3位 加藤みち子[訳 ] 『鈴木正三著作集』中公クラシックス

鈴木正三著作集? (中公クラシックス)

鈴木正三著作集? (中公クラシックス)

 
鈴木正三著作集? (中公クラシックス)

鈴木正三著作集? (中公クラシックス)

 

この本についてはブログ記事を書きました。

naagita.hatenablog.com

 

第4位 藤本晃 『悟りの4つのステージ』サンガ

悟りの4つのステージ

悟りの4つのステージ

 

悟りって何?どうすれば悟れるの?「3.0」でも「ゼロポイント」でもない「悟り」のスターティングポイントからゴールまで!「ブッダはニートだった?」「仏道を学んでも人格は成長しない?」「悟ったらすぐに死なないとおかしい?」―仏教をめぐる昨今の誤解について、『ブッダの実践心理学』の著者が、パーリ語聖典に基づいて真正面から答え、「悟り」の真実を解き明かしてゆく。最初の悟りである「預流果」に悟る方法も解説! 

という具合に煽ってるわりに、幸福の科学を名指しで批判したりした僕と違って「3.0」や「ゼロポイント」の著者を名指しで糾弾とかはしていません。ゼロポイントの魚川氏がマーケティング的にボカしたと思われる「悟りのステージ」という問題に焦点をあてて、息詰まるほどにギュウギュウと聖典に基づいて詰めています。労作中の労作でしょう。

 

第5位 魚川祐司 『仏教思想のゼロポイント―「悟り」とは何か―』新潮社

仏教思想のゼロポイント: 「悟り」とは何か

仏教思想のゼロポイント: 「悟り」とは何か

 

すでにいろんなところで論じられている本だけど、日本語圏における「輪廻と解脱」に関する議論は、本書が世に出たことを期にかなり風通しよくなったことは事実だろうと思う。和辻哲郎の呪いで歪められてきた仏教言説の基礎の基礎をメジャーどころに通じる語り口で啓蒙した業績は素直に素晴らしいと思う。ちなみに和辻哲郎の「輪廻」理解を魚川氏に先立って徹底的に批判したのは第一位に挙げた松尾宣昭先生です。

関連するTwitterまとめ二つとブログ記事一つ、リンク張っときます。

 

第6位 蓑輪顕量 『日本仏教史』春秋社

日本仏教史

日本仏教史

 

これまで教学史(仏教各宗派の教えの変遷)に偏重していた仏教史の書き方を大胆に改め、学(教学)と行(修行)の両面から、伝来以来の日本仏教の歩みを通史的に概観した著作です。蓑輪氏の前著『仏教瞑想論』とスタンダードな仏教史の見取り図を頭に入れないと、著者の狙いを掴みにくいところもありますが、十章「戦後・現代の仏教」にスマナサーラ長老のお名前が登場するあたり、いま現在の自分たちの活動が、仏教史の「歴史観」にも影響を及ぼしていることを実感できました。

 

第7位 師茂樹 『『大乗五蘊論』を読む (新・興福寺仏教文化講座)』春秋社

『大乗五蘊論』を読む (新・興福寺仏教文化講座)

『大乗五蘊論』を読む (新・興福寺仏教文化講座)

 

この本についてはブログ記事を書きました。

naagita.hatenablog.com

 

第8位(番外) ジョージ秋山アシュラ幻冬舎

naagita.hatenablog.com

今年出版された仏教書ではないですが、今年、僕のなかで仏教マンガとして見出された作品が『アシュラ』でした。

 

~生きとし生けるものが幸せでありますように~