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師茂樹『『大乗五蘊論』を読む』など

 久々に、本の話題です。

『大乗五蘊論』を読む (新・興福寺仏教文化講座)

『大乗五蘊論』を読む (新・興福寺仏教文化講座)

 

師茂樹『『大乗五蘊論』を読む』(春秋社)唯識哲学を大成したヴァスバンドゥ(世親菩薩)が伝統仏教の五蘊・十二処・十八界という枠組みを使って唯識アビダルマをコンパクトにまとめた論書の現代語訳と解説です。著者の師(もろ)先生は大著『論理と歴史 東アジア仏教論理学の形成と展開』(ナカニシヤ出版)が話題の仏教学者。自身も禅を実践されているだけあって、アビダルマが冥想実践のなかから発展してきたことを踏まえた解説がされているのが特徴です。北と南、大乗とテーラワーダ、同じアビダルマ(アビダンマ)と言っても随分色彩が違います(特に念・satiの解釈にはかなり隔たりがあります)が、スマナサーラ長老・藤本晃『ブッダの実践心理学』シリーズを齧った方なら、混乱せず読み通せるでしょう。「阿頼耶識」概念と滅尽定の関係など、興味深い論点がたくさん提示されています。

論理と歴史―東アジア仏教論理学の形成と展開

論理と歴史―東アジア仏教論理学の形成と展開

 

そして、大著のほうも読了…というかページに空気を通すのがやっと、という感じでした。『『大乗五蘊論』を読む』で本書の内容がチラリと紹介されていたので、先に読んどいてよかったかも。僕のボキャブラリで無理やりまとめるならば、仏教論理学をめぐる史劇という体の『TRAIN-TRAIN』が鳴り響く本でありました。冒頭の中村元「比較思想」批判や、本朝での論争史を投影した三国仏教史観へのツッコミなど、僕にもほんのり分かる面白い論点がザックザックしている雰囲気は味わえました。ほんとに仏教もとい仏教学は広大無辺すぎるわ。下敷きとなった博士論文に含まれていて、本書では割愛したという「明治期を中心とした近代における因明研究史や、仏教文献に対する人文情報学的な分析についての章」もぜひムキムキ増強版を拝読したいと思いました。 

~生きとし生けるものが幸せでありますように~