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仏教を知るキーワード【16】菩薩 ~ブッダになるべく修行中の行者~

ブッダとなるための修行を積む存在で、大乗仏教では救済者としての面が強調された

菩薩(ぼさつ,菩提薩垂)とはブッダ(正等覚者)となるために波羅蜜(はらみつ)という特別な修行を積む生命である。初期の仏典で菩薩と呼ばれたのはブッダとなる前の釈尊だった。ジャータカ(本生)に登場するスメーダ行者は、ディーパンカラ・ブッダ(過去二十八仏の4番目)から授記(将来、汝はブッダとなるだろうという認証)をうけてから、24人のブッダに仕えながら果てしない輪廻を繰り返し、十波羅蜜を完成して、兜率天に転生する。そして世界にブッダが現れる歴史的・環境的な条件がすべて揃ったと確認してから、釈迦国に菩薩として降誕し、出家修行を経て成道した。

パーリ仏典(経典より後に編纂された注釈書)によれば、人がブッダを目指す菩薩となる条件は八つ挙げられている。1)人間であり、2)男性であり(男根をそなえ)、3)〔覚りに達する〕素因があり、4)師(ブッダ)にまみえ、5)出家しており、6)〔冥想や神通力の点で〕優れた特質をそなえ、7)〔ブッダに〕奉仕し、8)〔修行への〕意欲を持つ。この八つの条件が揃ってはじめて、菩薩となる決意(誓願)が完遂する。

このうち2)の条件は、大乗仏教時代に覚りの平等性を巡って論争を引き起こす(ブッダは初めて教えを説く存在でその弟子は男女とも平等に覚れるとした初期仏教ではそれほど問題とならなかった)。

以上の条件をそなえた菩薩は、1)布施、2)持戒、3)出離(出家して心身ともに欲を離れる)、4)慧(問題解決する智慧を開発)、5)精進、6)忍辱(自己制御)、7)真諦(つねに真実を話す)、8)決意(目的を必ず達成する決意)、9)慈心(一切衆生に友情を抱き、他者の幸福と繁栄のために働く)、10)捨(常に心の平静を保ち世俗の誘惑に揺るがない)、という10の波羅蜜(ブッダとなるための能力完成)を4阿僧祇10万劫という期間(一劫は宇宙誕生から消滅までの周期)にわたり修行を続けたとされた。仏教の開祖たるブッダの偉大さを強調した菩薩の観念は、菩薩道を宣揚した大乗仏教の時代に、観音菩薩など「救済者」としての菩薩像も生み出した。

総図解 よくわかる 仏教

総図解 よくわかる 仏教

 

※『総図解 よくわかる 仏教』(2011,新人物往来社)に寄稿した原稿を再編集して掲載していきます。

パーリ経典や注釈書に基づいたお釈迦様の伝記。第一章「釈迦族とブッダの前世」で菩薩伝承について触れている。

日本「再仏教化」宣言!

日本「再仏教化」宣言!

 

現代仏教にまつわる諸問題に石を投げまくった拙著。第一部Ⅳ《菩薩仏教という魅惑の「空洞」》で、菩薩となる条件における男女差別など、菩薩伝承が仏教にもたらした矛盾と葛藤について考察している。

 

~生きとし生けるものが幸せでありますように~