仏教を知るキーワード【13】仏教の宇宙観 ~生命世界と物理宇宙の緻密な分析~

有情世間(輪廻する生命の世界)と器世間(物理的な宇宙)の構造

「世間」は世界、宇宙を意味する仏教語である。

仏教の世間は【1】有情世間(生命の世界)と【2】器世間(物理宇宙)に分けられる。

輪廻(生存)からの解脱を説く仏教では【1】有情世間の分析が重視された。有情世間は、1)欲界:五根の刺激に依存する衆生、地獄・餓鬼・畜生・阿修羅と人間、欲界の神々が生存する領域。2)色界:五根の刺激に依存しない梵天。3)無色界:物質に依存しない梵天の三界から成る。いわゆる六道輪廻はこの三界で起こる。

六道のうち地獄道・餓鬼道・畜生道阿修羅道は四悪趣とされる。このうち阿修羅は、初期仏教では天道に属した。阿修羅はアーリヤ人インド侵攻以前の土着神で、仏教興隆当時はアーリヤ系の天(デーヴァ)と対等だったのだ。餓鬼道は古くから先祖供養の対象だった祖霊(ペータ)に由来する霊的生命。日本で御先祖様、守護霊、幽霊などと呼ばれるものは餓鬼道に含まれる。善趣は人道(人間)と天道。天道は欲界の神々と色界・無色界の梵天に分けられる。欲界天は欲を享受する天国。色界・無色界は禅定を修した聖者が死後に赴く境地である。六道輪廻、仏道修行に適するのは人間界のみとされた。阿羅漢果に達した聖者は三界を超脱し、もう二度と輪廻しない。

【2】器世間は、巨大な須弥山を中心に四大陸が東西南北に配され、大洋とそれを囲む鉄囲山、地上を照らす太陽と月で構成されるのが一世界。現代的に言えば太陽系である。その一世界に地獄から梵天までの有情世間がある。一世界を千倍したのが小千世界、さらに千倍した中二千世界、また千倍した三千大千世界が説かれる。経典には、ブラックホールを連想させる世界中間(ローカーンタリカ)の記述もある。 

総図解 よくわかる 仏教

総図解 よくわかる 仏教

 

※『総図解 よくわかる 仏教』(2011,新人物往来社)に寄稿した原稿を再編集して掲載していきます。

日本で仏教の宇宙論が解説される場合は、北伝部派仏教の論書である『倶舎論』をベースにして語られる場合が多い。本書はそれを踏襲しているが最新の趣向を凝らしており読みやすい。

『アビダンマッタサンガハ』を読む

『アビダンマッタサンガハ』を読む

 

一方、こちらは南伝パーリ仏教のアビダンマ(アビダルマ)綱要書をまるごと一冊平明に解説した画期的な著作。スマナサーラ長老との共著『ブッダの実践心理学』シリーズの副読本としても、単独の著作としても楽しめる。

 

~生きとし生けるものが幸せでありますように~