仏教を知るキーワード【07】戒律 ~ブッダが定めた正しい生き方~

人格を育むために各自が心がけて守る戒と、僧団生活の規則である律の2種がある

戒律(かいりつ)とは「ブッダが定めた正しい生き方」の総称で、仏教で説かれる戒定慧の三学の第一である。戒律を保って生きることは、禅定(定学)と智慧(慧学)を進歩する基礎として重要視される。

いわゆる戒律は、二種類ある。第一は人格を育てるために各自が心がけて守る戒めであり、戒(シーラ)と呼ばれる。代表的な戒は、釈尊が在家仏教徒に授けた五戒だ。1)殺生をしない(不殺生)、2)与えられていないものを取らない(不与取)、3)性的な邪な行為=不倫をしない(不邪淫)、4)嘘をつかない(不妄語)、5)人の理性を破壊するアルコールや麻薬を摂らない(不飲酒)、の五項目である。上座部仏教の諸国では、満月と新月の行われる布薩日に、在家者が特別な戒(十戒、八戒など)を受けて守る習慣もある。

第二は出家サンガという特別な社会に限ってブッダが定めた規則で律(ヴィナヤ)と呼ばれる。宗派によって異動があるが、上座仏教の比丘(男性出家者)は227カ条に及ぶ。これは出家サンガが社会の非難を浴びずに秩序を保って生活するため、問題が起こるたびに釈尊により定められた法律であり、違反した場合にはサンガ(僧団)による罰則がある。最も重い、性交、殺人及び自殺教唆、窃盗、さとったという嘘の4項目(四波羅夷法)を犯した場合は僧団追放となる。

日本仏教では大乗経典『梵網経』に説かれる十重四十八軽戒や、殺生・偸盗・邪淫・妄語・綺・悪口・両舌・慳貪・瞋恚・邪見の十悪を戒める「十善戒」が用いられたが、出家サンガの法律として律を運用するシステムはついに機能しなかった。また、五戒のうち不飲酒戒はつねに無視されており、全体として戒律軽視の仏教という評価を受けている。

総図解 よくわかる 仏教

総図解 よくわかる 仏教

 

※『総図解 よくわかる 仏教』(2011,新人物往来社)に寄稿した原稿を再編集して掲載していきます。

テーラワーダ仏教「自ら確かめる」ブッダの教え

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 五戒の守りかたなど、在家生活に仏教を活かす方法について詳説されている著作です。

 

~生きとし生けるものが幸せでありますように~