Mettasuttaṃ 慈経(Suttanipāta 143-152)※パーリ/和訳交互読誦のため改訳私案

Mettasuttaṃ 慈経(Suttanipāta 143-152)

 

1.Karaṇīyam atthakusalena, yantaṃ santaṃ padaṃ abhisamecca;

Sakko ujū ca sūjū ca, suvaco cassa mudu anatimānī.

 

幸福を目指す人には、静かな場所で為すべきことがあります。

何事にも巧みで、正直で、善にまっすぐで、

ひとの言葉をよく聞き、柔和で、謙虚な人になること。

 

2.Santussako ca subharo ca, appakicco ca sallahukavutti;

Santindriyo ca nipako ca, appagabbho kulesu ananugiddho.

 

足るを知り、手が掛からず、雑務少なく、さっぱりと暮らし、

身心ともに落ち着いて、理性を保ち、裏表なく、他者に依存し過ぎないこと。

 

3.Na ca khuddaṃ samācare kiñci, yena viññū pare upavadeyyuṃ;

Sukhino va khemino hontu, sabbe sattā bhavantu sukhitattā.

 

些細なことでも、良識あるひとびとに非難される行ないは慎しむこと。

(そして、このように念じます。)

すこやかで、やすらかでありますように。

生きとし生けるものすべてが幸せでありますように。

 

4.Ye keci pāṇabhūtatthi, tasā vā thāvarā vā anavasesā;

Dīghā vā ye mahantā va, majjhimā rassakā aṇukathūlā.

 

いかなる生命であろうとも、動きまわるものも、じっとしているものも、その他のものも

長いものも、大きなものも、中くらいのものも、小さなものも、微細なものも、巨大なものも、

 

5.Diṭṭhā vā yeva addiṭṭhā, ye ca dūre vasanti avidūre

Bhūtā vā sambhavesī vā, sabbe sattā bhavantu sukhitattā.

 

目に見えるものも、見えないものも、

遠くに住むものも、近くに住むものも、

すでに生まれているものも、これから生まれようとしているものも、

生きとし生けるものすべてが幸せでありますように。

 

6.Na paro paraṃ nikubbetha, nātimaññetha katthaci naṃ kañci;

Byārosanā paṭighasaññā, nāññamaññassa dukkhamiccheyya.

 

いかなる時も、ひとを欺いたり、軽んじたりしないこと。

怒鳴ったり、腹を立てたり、互いにひとの苦しみを望んだりしないこと。

 

7.Mātā yathā niyaṃ puttaṃ āyusā ekaputtamanurakkhe;

Evampi sabbabhūtesu, mānasaṃ bhāvaye aparimāṇaṃ.

 

あたかも母が、たった一人の我が子を、命がけで守るように、

そのように全ての生命に対して、無量の慈しみを育くんで下さい。

 

8.Mettañca sabbalokasmiṃ, mānasaṃ bhāvaye aparimāṇaṃ;

Uddhaṃ adho ca tiriyañca, asambādhaṃ averaṃ asapattaṃ.

 

慈しみの心を全世界に向けて、限りなく育くんで下さい。

上に、下に、周囲に棲む、どんな生命に対しても、

わだかまりなき、怨みなき、敵意なき心を育くんで下さい。

 

9.Tiṭṭhaṃ caraṃ nisinno vā, sayāno vā yāvat’assa vigatamiddho;

Etasatiṃ adhiṭṭheyya, brahmametaṃ vihāraṃ idhamāhu.

 

立っていても、歩いていても、坐っていても、横になっていても眠らない限り、

この慈しみの念をしっかりと保つこと。これが「崇高なる存在」の生き方と言うものです。

 

10.Diṭṭhiñca anupaggamma, sīlavā dassanena sampanno;

Kāmesu vineyya gedhaṃ, na hi jātuggabbhaseyyaṃ punaretīti.

 

このように励む人はまた、邪見を乗り越え、常に戒を保ち、正見をそなえ、

欲望を追う生き方から離れ、もう二度と輪廻に戻ることはないのです。

 

 

祈願文

 

Etena sacca vajjena pātu no ratanattayaṃ.

この真実語の力によって、我らは三宝に護られますように。

Etena sacca vajjena hotu no jaya maṅgalaṃ.

この真実語の力によって、我らは幸福でありますように。

Etena sacca vajjena sadā sotthi bhavantu no.

この真実語の力によって、我らは常に安穏でありますように。

 

※協会版の訳文をパーリ語に続けて日本語でも読誦しやすいように微調整してみた。どんなもんでしょうね? 協会版の訳は藤本晃先生の訳です。そっちが定本であることを前提にして、唱えやすいように意訳箇所を増やした感じですね。

※追記:最初のアップからだいぶ直しました。語尾も揃えてみました。

 スマナサーラ長老による『Mettasuttaṃ 慈経』逐語解説版です。

ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)

ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)

 

慈経が収録されている『Suttanipāta スッタニパータ,経集』中村元博士による全訳。

書店で立ち読みしたけど、attaをアートマンと訳していて、こりゃダメだろと思って買わなかった。他のとこはどうなんでしょうね?(^_^;)

小部経典 別巻 ?正田大観 翻訳集 ブッダの福音?

小部経典 別巻 ?正田大観 翻訳集 ブッダの福音?

 

正田大観さんの和訳。スッタニパータ含む小部経典のハイライトが読めます。逐語訳と達観訳(意訳)が両方入っているので、パーリ経典を解釈したい人にとってはたいへん勉強になるんじゃないかと思います。

  

~生きとし生けるものが幸せでありますように~