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日本経済新聞の編集委員署名記事「スリランカ、内戦経てインド洋経済圏の要所に」のトンデモ記述

日経新聞に「スリランカ、内戦経てインド洋経済圏の要所に」(http://www.nikkei.com/article/DGXZZO48913460Y2A121C1000022/)という編集委員・後藤康浩氏の署名記事が掲載されました。

内戦終結から4年が経過し、スリランカは今、大きく変貌しつつある。「インド洋の真珠」と呼ばれたかつての美しい姿を取り戻すだけではない。成長するインド洋経済圏の中央に位置する「インド洋のビジネスセンター」になろうとしている

という論調で、スリランカの経済的な可能性を大いに賞賛している記事なのですが、そのなかで目を疑うような記述が……。

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 街の雰囲気をつくっているもう一つの要素は仏教だ。英国から独立する際にインドには主にヒンズー教徒、パキスタン(今のバングラデシュは当時の東パキスタン)にはイスラム教徒、スリランカには仏教徒が住み着いた。仏教の持つ寛容性、包容力が、スリランカをヒンズー、イスラムの国にない落ち着きを与えている。

えっ!インド独立時にインドとパキスタン(東西)が分離した際にイスラム教徒とヒンドゥー教徒の大変な悲劇を伴う人口移動があったことは事実だけど、スリランカはまったく無関係です。植民地時代にプランテーション労働者として流入したいわゆるインド・タミール人の処遇をめぐる政争は、記事中でも触れられているスリランカ内戦の原因にもなりました。でも、それとインド独立は時期的に関係ない。スリランカは2300年前から仏教を受け入れており、島内では一貫して仏教徒が多数派だったことは歴史的事実です。いったいどんな資料を読んだらこんな意味不明の間違いをできるのかと思います。

一応、日経新聞にもメールを送っておきましたし、Twitter上で発言している他の日経新聞編集委員の方にもメンションで訂正をお願いしました。

記事の文末には、

「私が見た『未来世紀ジパング』」はテレビ東京系列で毎週月曜夜10時から放送する「日経スペシャル 未来世紀ジパング~沸騰現場の経済学~」(http://www.tv-tokyo.co.jp/zipangu/)と連動し、日本のこれからを左右する世界の動きを番組コメンテーターの目で伝えます。随時掲載します。筆者が登場する「知られざる親日スリランカ! 経済&観光急成長…その裏には世界マーケットが!」は1月13日放送の予定です。

 とあるのですが、もしこの記事の内容のままスリランカの紹介がなされたら日経新聞テレビ東京は赤っ恥でしょうし、「親日国」ともちあげているスリランカに対してもたいへんな侮辱でしょう。

日本人が"親日国"という言葉を使う時には、相手に対する敬意が伴っているとは限らないのが現状です。むしろ軽んじている場合も多いのではないでしょうか? スリランカの来歴に関するごくごく基本的事実誤認をスルーして編集委員署名記事を載せてしまった日経新聞の姿勢にもそういう「親日国」への軽侮の構えが現れているのではないか、と感じてしまうのです。この記事を書いている時点では記事は更新されないままですが、日本経済新聞社におかれましては、速やかな訂正をお願いしたいと思います。

~生きとし生けるものが幸せでありますように~

 

スリランカを知るための58章 (エリアスタディーズ117) (エリア・スタディーズ)