今年読んで印象に残った本 追加

あ、だんだん思い出してきた……というわけで今年読んで印象に残った本、何冊か追加します。

 

「在日特権」の虚構 : ネット空間が生み出したヘイト・スピーチ

「在日特権」の虚構 : ネット空間が生み出したヘイト・スピーチ

 

 ”在日特権?あるかボケ”

「宝島社および井野良介は、「在日特権」デマを利用して在日コリアン一般に対する憎悪を煽った主体であるということは、ここにきちんと明言しておきたい。」( p37)

在特会の言う「福祉給付金という在日特権」は、国民のみが年金を受給できることをデフォルト状態と認定し、在日外国人への給付はそれに対する上乗せ=恩恵だという発想にもとづいている。しかし、各種条約では社会保障の内外平等がデフォルト状態であり、それが実現されていない状態をマイナス状態だと考える。人種差別撤廃条約等の国際規約に照らすなら、もちろんこちらがスタンダードだ。
 在特会の言う「特権」とは、すべてにおいてこのモデルを理解できないところから導かれる倒錯なのである。」( p115)

ここらへん、テストに出るよー!

「この、形式的平等の不備を針小棒大に取りあげて叩けば、もっと大きな不平等、すなわち差別やヘイト・スピーチを覆い隠すことができる。在特会がやってきたことは、常にそういうことである。」(p187)

ここも線引いておこうね!

「マイノリティへの憎悪を煽る表現が侵すのは、まずは社会の多様性そのものであり、ひいては自由である。民主主義社会は多様性と個人の人格の尊厳を保障することで成り立ってから、ヘイト・スピーチは民主主義社会そのものを蝕むのだといえる。」(p196) 

まさに日本語読める奴ら一般教養として必読の本でしょ。

卍とハーケンクロイツ―卍に隠された十字架と聖徳の光

卍とハーケンクロイツ―卍に隠された十字架と聖徳の光

 

ロフトプラスワン『日本仏教夜話』でたいへんお世話になった中垣顕實師の著作。地味だけど非常に重要な研究だと思います。ナチスドイツを率いたヒトラーは、宗教改革で知られるマルティン・ルターの反ユダヤ主義文書を信奉していました。欧米のキリスト教圏では、戦後『かぎ十字架』をスワスティカ=東洋の吉祥印と呼び替え、ナチスが十字架を掲げて戦った事実を消したのです。東洋文化への偏見とナチス思想を「悪魔祓い」したいという思惑が合致したわけですね。

現代オカルトの根源:霊性進化論の光と闇 (ちくま新書)

現代オカルトの根源:霊性進化論の光と闇 (ちくま新書)

 

ブラヴァツキーにはじまり幸福の科学に終わる構成がキテる!現代日本政治にも多大な影響を与えているスピリチュアル思潮を俯瞰するためにも必読です。新左翼~エコロジー運動の流れからレプティリアン陰謀論が流布されて、いまでは新自由主義イタコ新宗教で採用されているという驚愕の事実が……。

論語集注1 (東洋文庫)

論語集注1 (東洋文庫)

 

朱熹による本文に続いて、伊藤仁斎荻生徂徠によるダブルツッコミ(取意)を載せてて超面白いです。諸註釈を集大成した朱熹のドヤ顔に、小言を述べるような仁斎、「んなわけねーだろ朱熹も仁斎もバーカバーカ」と全否定する徂徠無双。例を挙げれば……「(伊藤)仁斎は全く道や礼のことを理解できていない。」(263p) ひでぇw そいにしても荻生徂徠のドライすぎる論語解釈は、相変わらず"心学的な読み"一辺倒の現代日本(最近の中国も?)の論語ブームに過去からツッコミ入れられてるみたいで面白いです。東洋文庫論語集註4巻揃えるのは気が重いけど、『論語徴』は後でちゃんと読みたいと思いました(と思って図書館から取り寄せたけど、太刀打ちできそうもないので通読は諦めた)。ちなみに前のエントリーで紹介した『体罰の社会史』によれば、理想主義的な教育学として儒教を体系化した朱熹はこの『論語集注』のなかで、孔子が愚鈍な原壌の脛を杖で叩くくだりに「微かに」という形容詞を加えたんだそうです。該当箇所は確認してないけど、興味深いです。

荘子 内篇 (ちくま学芸文庫)

荘子 内篇 (ちくま学芸文庫)

 
荘子 外篇 (ちくま学芸文庫)

荘子 外篇 (ちくま学芸文庫)

 
荘子 雑篇 (ちくま学芸文庫)

荘子 雑篇 (ちくま学芸文庫)

 

恵子「荘子の話ってホント役立たずよね」。

荘子「役に立たないことを理解できてこそ、役に立つことについて話し合えるのよ。大地は広大だけど、人が用いるのは足を置くわずかな場所だけよね。でも足の寸法に合わせてその外側を地底まで掘ってしまったら、その土地は人の役に立つかしら?」

恵子「役に立たないわね」。
荘子「ほらね!役に立たないものこそ役に立つ[無用の用]ってことは道理じゃないの(ドヤッ!)」。
(恵子「(・_・; 」)

外物篇7より

こんなガールズトークが楽しめる、荘子(しょうこ)の屁理屈大全集は、ちくま学芸文庫から3巻シリーズで売ってますよ。

浄土真宗は仏教なのか?

浄土真宗は仏教なのか?

 

ようやく登場した”仏教書”ですが、結局は同志の著作ですね。教界に爆弾投げ込んだような本です。スマナサーラ長老の本以外で、今年出た読むべき仏教書と言えば、やっぱこれでしょ。

『アビダンマッタサンガハ』を読む

『アビダンマッタサンガハ』を読む

 

 こちらも藤本同志の本です。スマナサーラ長老との共著『ブッダの実践心理学』シリーズ全8巻が完結したところで、さらにそのエッセンスをまとめたような本です。高いけど普及版が出たら協会教学部(そんなものはない)の教科書にしたいです。

 

あと、自分が関わった仏教書(スマナサーラ長老の本)についてもまとめてみます。

 

~生きとし生けるものが幸せでありますように~