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今年読んで印象に残った本10冊

そんなに本を読まなかった年のような気もしますけど、一応エントリーしてみます。

順不同ということで。

狼の群れと暮らした男

狼の群れと暮らした男

 

狼の生態に深く分け入った著者は、その末裔たる犬と人間の不幸な関係を正すことも提案しています。犬を飼っている人は必読の一冊だと思います。

体罰の社会史 新装版

体罰の社会史 新装版

 

「わが国では、18世紀には大声で叱ったり、残虐な行為をなすことは動植物に対してさえ避けたいとする心理が一般化していた。この雰囲気は幕末から維新期にも、普通の庶民の普通の価値観になっていた」のだそうです。類書が無い貴重な研究書。体罰問題への関心の高まりを受けて、緊急復刊されました。

〔コミック版〕はだしのゲン 全10巻

〔コミック版〕はだしのゲン 全10巻

 

 再読して、3.11後の不条理な出来事が想起されて、それは中沢さんが広島で遭遇したことと一続きになっていると思いました。妹・友子の死を描いた4巻までが有名だけど、5巻以降も壮絶。平家物語並のスケールの文学作品だと思います。

決定版 感じない男 (ちくま文庫)

決定版 感じない男 (ちくま文庫)

 

「私はこの本において、自分の内面を掘り下げる。内在的なセクシュアリティ研究を試みている。」このような手法をはっきり宣言した本を、僕は他に読んだことがあっただろうか? 情報を頭に入れるというより、固有の生命の体験をある個体からある個体にニュルッと手渡しするような生々しさがありました。ちょっと感動して、古本扱いの新書と増補版の文庫両方買っちゃった。!(^^)!

新徴組 (新潮文庫)

新徴組 (新潮文庫)

 

小説フランス革命の著者による幕末維新史。新徴組の隊士沖田林太郎(沖田総司の義兄)を主人公に、庄内藩の名将・酒井吉之丞(了恒)との交流と戊辰戦争の戦いを描いてます。維新の敗者を描いた小説だが読後感が爽やか。さりげなくフランスネタも入ってますよ。

永続敗戦とは?「敗戦の帰結としての政治・経済・郡司的な意味での直接的な対米従属構造が永続化される一方で、敗戦そのものを認識において巧みに隠蔽する(=それを否認す5)という日本人の大部分の歴史認識・歴史的意識の構造が変化していない、という意味で敗戦は二重化された構造をなしつつ継続している。無論、この二側面は相互を補完する関係にある。敗戦を否認しているがゆえに、際限のない対米従属を続けなければならず、不快対米従属を続けている限り、敗戦を否認し続けることができる。かかる状況を私は、「永続敗戦」と呼ぶ。」47-48p

ある奴隷少女に起こった出来事

ある奴隷少女に起こった出来事

 

1820年のアメリカ、ノースカロライナ州で育った黒人奴隷の少女による自伝。脳天を撃ち抜かれるような読書体験とはこういうものか。人類必読!

 すごい本でした。1960年代の公民権運動の高揚以降の歴史にかなりのページが割かれており、現代の日本人が置かれている状況とも対照しながらアメリカ黒人史を考えることができる良著です。特に第6章「分権化」と「多様化の時代」3収監者数の激増と産獄複合体の肥大化198-208pの記述は圧巻。アメリカの監獄問題というとグアンタナモ収容所の閉鎖問題に注目が集まるが、世界人口の4.5%を占めるに過ぎないUSAに全世界の刑務所収監者の四分の一が集中している。そして収監者の多くはTVメディア等を総動員した「麻薬との戦争」政策による厳罰化のフレームアップで摘発された黒人たち。民営化された刑務所は企業と契約して、黒人囚人を安価な労働に駆り出しているのです。公民権を奪われ囚人労働に従事する黒人たちは、白人が圧倒的多数を占める農村部(刑務所立地)の人口にカウントされます。結果としてアメリカ農村の白人は、人口と不釣合の代表権と補助金を獲得しているのです。黒人女性を含む大量収監は「社会を安全にする」どころかマイノリティの家庭崩壊を促進し、貧しい人々の政治的発言力を奪い、貧しい地域を一層寂れさせ、社会をより危険にしています。「産獄複合体」の肥大化に対して、公民権運動を担ってきた運動体も有効な批判ができない状態。「犯罪者を甘やかすな」という厳罰化に異議を唱えることは政治家にとってタブー(日本の生活保護受給者バッシングとも通じますね)になっているのです。アメリカ南部では奴隷制廃止後も司法行政を掌握した白人支配層が大量の黒人を恣意的に逮捕して囚人労働に従事させることで、実質的に黒人奴隷制度を継続させてきました。21世紀のUSAでも、実はそれと類似する「産獄複合体」による「奴隷制代替制度」が機能していると静かに告発しています。いやはや……。

まんが 哲学入門 生きるって何だろう? (講談社現代新書)

まんが 哲学入門 生きるって何だろう? (講談社現代新書)

 

読んでいて突き当たった「時間論」の項目。まるで仏教の話かと思ったら、「私は思うのです。」という箇所のスタンスは生命主義でした。 「しかし、どんな痛みや絶望が湧き上がってきたとしても/その痛みや絶望を湧き上がらせてくる力そのものは喜びに満ちた力なのだと考えることができます」と一見"イイコト"言いながら、直後に原爆投下を例に出す毒々っぷりが素敵。どこで通り魔に遭うか分からんスリリングな本です。 「人生の内容は、けっして固定されたものではなく、誕生の気づきのたびごとに、たえず過去の人生の末端までリニューアルされていくのです」212p おぉー!これだよ。いぜん過去生の想起について説明しようとして似たようなこと書いた憶えが……。^_^ 森岡先生は"火の鳥"か!楽しく読めるほんものの「哲学」マンガです。おすすめします。

ソクラテスの弁明 (叢書ムーセイオン)

ソクラテスの弁明 (叢書ムーセイオン)

 
クリトン (叢書ムーセイオン)

クリトン (叢書ムーセイオン)

 
大ヒッピアス 美について (叢書ムーセイオン)

大ヒッピアス 美について (叢書ムーセイオン)

 

最後は電子書籍のシリーズです。Amazon kindleから刊行されてる藤田大雪先生のプラトン翻訳シリーズが超読みやすくて、エキサイティングで面白いです。『ソクラテスの弁明』『クリトン』は読みました。『大ヒッピアス 美について』はまだだけど、お正月に読みます。

 

こんなところでしょうか。え?仏教書が一冊もない?そうなんですよね……。これは別枠で思い出すことにします。では、みなさまよいお年を!

 

~生きとし生けるものが幸せでありますように~