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読了メモ(2012年3月)

 
3月の読書メモ、まとめました。
 
2012年03月02日(金)

西遊

西遊

まどの一哉『西遊』ワイズ出版、読了。これまで読んできた「西遊記」もののなかで、一番好きかも。短編集『洞窟ゲーム』もよい。この二冊で単行本はすべて。
 
2012年03月13日(火)徳川家広『なぜ日本経済が21世紀をリードするのか―ポスト「資本主義」世界の構図』 (NHK出版新書)読了。「経済学という科学の装いをまとう」自由主義思想への痛烈な批判の書。経済学のイデオロギー暴露という点で、安冨歩さんともちょっと通じるかも。徳川家広さん、宮崎哲弥トーキングヘッズで観たけど著書初見。短期的破局論と併せた中長期的な超楽観論。後半開陳される「元和偃武」後の日本社会パネーから大丈夫論は、末裔だからってそこまで…と引くほどのパクス徳川ナ礼賛。でも、経済史を俯瞰する読み物として面白かった。
 
極楽の人数―高木顕明『余が社会主義』を読む

極楽の人数―高木顕明『余が社会主義』を読む

菱木政晴『極楽の人数―高木顕明『余が社会主義』を読む』白澤社、読了。大逆事件連座し、獄中で自死した真宗大谷派僧侶の論文を精読。清沢満之精神主義批判など、「浄土真宗左派」論客の面目躍如かな。高木顕明の読解を経て「実に、専修念仏は「社会主義」である。」と言い切っちゃう菱木政晴さん。長いあとがきで、真宗大谷派原発問題への取り組みや、311後の震災天罰論についても言及している(末木文美士さんの発言についても)。その辺興味ある仁は読まれた方がよいかと。
 
2012年03月15日(木)
日本の文化ナショナリズム (平凡社新書)

日本の文化ナショナリズム (平凡社新書)

鈴木貞美『日本の文化ナショナリズム平凡社新書、読了。著者の大正生命主義の研究には拙著『大アジア思想活劇』をまとめる上でもかなりインスパイアされたが、本書はさらに近代史を俯瞰するところまで歩みを進めている。第五章で丸山眞男吉本隆明らの言説をかなり辛辣に斬っている。2005年12月刊だけど、311を経た今こそ読まれるべき内容と思った。
 
2012年03月16日(金)
釈尊と日蓮の女性観

釈尊と日蓮の女性観

植木雅俊『釈尊と日蓮の女性観』論創社,2005、読了。第一部:検証・仏教は女性差別の宗教か?は植木さんのインド仏教とジェンダーに関する研究成果が概観できる分かりやすい読み物。第二部:男性原理・女性原理で読む日蓮は、正直ついていけなかった……(著者の信仰的にはこっちが本筋?)
 
2012年03月16日(金)
史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち (SUN MAGAZINE MOOK)

史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち (SUN MAGAZINE MOOK)

飲茶『史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち』(マガジン・マガジン)読了。かなり面白かった。特にコラム「東洋哲学とは何か?」1〜3は密度が濃い、抱腹絶倒の東洋哲学まとめになっている。目次は強引だが、トップにヤージュニャヴァルキヤ持ってきたら、ああなるより仕方ないかな。本書は入門書つーより「東洋哲学(インドより東の地域で共有している、…ひとつの哲学体系)」があるという無理・無茶な設定の枠内で、いかに血湧き肉躍る思想活劇を語れるか、という古典的難題に挑んだ東洋哲学「論」だ。
 
2012年03月20日(火)
没落する文明 (集英社新書)

没落する文明 (集英社新書)

萱野稔人・神里達博『没落する文明』集英社新書、読了。四方山話風の構成だが、九万年前の阿蘇山大噴火の話は衝撃的だった……。強烈な掴み。これからの日本は成長神話を捨て、負の課題に対処する「縮小対応力」を洗練すべきと説く。神里さん「エネルギー危機による低成長社会への突入は、じつは古代から中世への移行期でも起きたようです。まず古代に木材によるエネルギー革命が起こり、木材を使いきってしまいました。その後、古代文明はいわば「脱物質文明化」していく。つまり精神的な文化や宗教が強くなっていくんですね。」(140p)仏教クラスタの皆さん、アップを始めてください。…ってのは安直すぎるかも知れないけど、情報化も浸透して、金融操作もネタが尽きると、確かにそっち行くしかないような。同書「おわりに」で神里さんが綴る、編集に関わった斎藤哲也さんへの謝辞が素晴しい。曰く、”いまや論壇・思想系の出版において欠くべからざる「公共財」とも言うべき、優れたライター” これは最高の褒め言葉だね。
 
2012年03月24日(土)
メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故

メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故

大鹿靖明『メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故』講談社、読了。フクイチ事故に際して、官邸、東京電力、経産省、金融界で何が起きたのか? 永田町・霞ヶ関という一種の「密室」での暗闘を中心に描かれる。事故の裾野の広さ、根深さ、重さを改めて突きつけられた。経産省の政策立案能力は低く、画期的に見える政策も外国からのパクリを仰々しく宣伝するだけ。マスコミへのリークと政治家へのレクチャーが上手い者が出世する。そもそもOBの天下り先の業務に影響が及ぼす大胆な政策転換など、省益に反するので忌避されると。同書では抑制された筆致ながら、脱原発依存を掲げた菅政権は、経産省と東電が執拗に陰謀を巡らした「倒閣運動」に倒れたと匂わす。東電は救済され、経産官僚は誰一人責任を問われず順当に出世・天下りしている。国民の疲弊をよそに、経産省と電力業界の作り上げた秩序は無傷のまま。
 
ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)

橋爪大三郎×大澤真幸『ふしぎなキリスト教』講談社現代新書、読了。故・小室直樹の本で書き散らされてた内容とほぼ同じ。これが何で各方面から批判されるかとゆーと、要するに1980年代のカッパブックスのノリで、2010年代の講談社現代新書を作ってしまったからではないだろうか? ……しかし何だかだ言っても、人文科学というのは百年一日ののんびりした世界だよね。カッパブックス的なもの(端的には小室直樹)に、批評に値する言説として光を当てたのは橋爪さん達の功績が大だろう。しかし、光を当てるために、エンタメ言説のいい加減さには「あえて」目を瞑ってきた面があると思う(面白主義の確信犯は措く)。
 
2012年03月25日(日)
論語 - 真意を読む (中公新書)

論語 - 真意を読む (中公新書)

湯浅邦弘『論語 真意を読む』中公新書、読了。「新出土文献研究の成果を踏まえた『論語』入門決定版」とあるが、論語の成立史や注釈の流れ、最新の研究成果まで概説され、かなりの「通」でも得るものがあると思う。述而篇「甚だしきかな吾が衰えたるや。久しきかな吾復夢に周公を見ず。」この「夢」をめぐる解釈史が本書のクライマックス。苦く寂しい読後感は、良質な人文書ならではと思う。死後、聖人・素王と崇められ、分厚い注釈の格納容器に包まれて伝承された論語。 「真意を読む」という本書の副題はアイロニカルだ。論語の端々から聴こえる「異音」を覆い隠した注釈という「誤解」の防護壁こそが、論語を後世まで伝えてきたのだから。論語の「真意」を読もうとする本書の試みもまた、論語と我々の間にもう一枚壁を作る行為なのだから。
 
〜生きとし生けるものが幸せでありますように〜