今西憲之+週刊朝日取材班『福島原発の真実 最高幹部の独白』

福島原発の真実 最高幹部の独白

福島原発の真実 最高幹部の独白

6日の未明に読んだ本のメモ。

今西憲之+週刊朝日取材班『福島原発の真実 最高幹部の独白』朝日新聞出版。「大本営発表」繰り返す東電本店や政府を激怒・狼狽させた、ど迫力のフクイチ現場取材録。
 
1章:フクイチ最高幹部のメモから事故直後の危機的状況を再現
2章:循環注水冷却システム設置された7月前後から現在までの動き
3章:4月上旬に取材を初めてから継続的に入ったフクイチ内部の記録ルポ
4章:最高幹部へのまとめインタビュー。
 
印象に残ったところを抜き出すと……

フクイチでぜんぜん役に立たなかったアレバの除染装置、「仕様書の言語がフランス語だけでなく、一部がイタリア語だった」(86p)って……。中古品も混ざってたと。人の不幸に親切顔で近づいてきて、高額でガラクタ売りつける商魂すさまじい。

(そもそも三カ国の混合システムつくること自体無茶だったと思うので、アレバの対応の悪さばかり言いたてるのはフェアではないかもしれないが)
 
2011年5月から着手されたフクイチ一号炉カバーリングも、放射性物資の漏洩防止というより「覆いをすれば、グーグルなどで原発衛星写真が世界中に広がるのを隠せる」(87p)という東電本店の主導で行われたと。こういう提案する奴が偉くなる会社なんだろうな。
 
311後の流れが表にまとめてあるけど、震災から三ヶ月も経ってない6月2日に自民・公明が菅政権への内閣不信任決議案を出していたってのは、今考えるとすごいな。
 
フクイチ現場と東電本店は衝突ばかり。ある本店幹部は情報公開を巡って「そんな情報が保安院や政府にわかると、大変なことになる。(問題が)ますます拡大するばかりじゃないか」そして最後には、「私の立場や出世はどうなるんだ。キミはわかってるのか!」(95p)
 
いまフクイチの「免震重要棟の前にある街灯の電源は、太陽光パネルでまかなっている」のだそうだ。(101p)
 
原発事故処理については、チェルノブイリの事故処理に協力した経験から国土交通省にノウハウは蓄積されており、政府にも進言された。しかし経産省との縄張り争いで潰されたと。(109p)これは「聞いた話」なので精度低いが、確かに国交省の影は薄かったよね。
 
東電の「耐久性に問題はない」発言に反し、フクイチ原子炉格納容器や建屋の劣化は激しい。「格納容器は、内部が蒸気や水に長期間さらされる事態を想定していない。」果たして、燃料棒を取り出す予定の「10年後」まで建屋と容器耐えられるのか疑問だと。(133p-)
 
第四章は件の最高幹部インタビュー。相変わらず「日本の原発技術は世界一です」と原発存続を訴えてる。アレバへの悪口も技術ナショナリズムの現れだろう。菅直人退陣の際に「祝杯をあげた」とも述べているので、今西氏以外にもあちこちリークしてた可能性はあるね。
 
福島原発の真実 最高幹部の独白』というわけで素晴らしい本ではあるけれど、本書もまた311後の日本の原子力政策をめぐる「情報戦」の一貫として捉える必要があるのかなぁと思った。既存の原子力ムラを解体してでも「俺たちの原子力」を守りたいと願う人達もいるんだろうな。
 
(大飯原発再稼働の件で腹立って眠れなかったので、最後まで読んでしまった……。)
 

6日夜の首相官邸前抗議の写真です。大飯原発の再稼働反対!
 
〜生きとし生けるものが幸せでありますように〜