『サンガジャパン』vol.9 読んだ

サンガジャパン Vol.9(2012Spring)

サンガジャパン Vol.9(2012Spring)

季刊『サンガジャパン』vol.9 ざっと読了した。
 
特集は「上座仏教と大乗仏教」。「巻頭言」は近代仏教学の世界における上座仏教と大乗仏教の位置づけの変遷についてかなり詳しく書かれている。本文といまいち噛みあわないような気もするが、このテキストだけでも勉強にはなる。
 
巻頭論文スマナサーラ長老「ブッダは、真理を語る」は高野山大学での講演に大幅加筆したもの。スリランカのテーラワーダ仏教文化に大乗仏教が与えた影響&パクリの実態について、かなりあけすけに語られている。
 
続く大澤真幸「二つの仏教」はいろいろ突っ込みたくなる(上座仏教と言いつつ、終始一貫『倶舎論』概説あたりから構築されたと思しき「空想上の上座仏教」の話をしている)が、我慢して読むとホホーッとなる不思議なテキストだ。
 
ケナス・タナカ先生のインタビュー「上座・大乗の違いなく、仏教はアメリカを目指した」はとても勉強になる。欲を言えば、先生のダジャレも収録して欲しかった。
 
プラユキ・ナラテボー師の体験記「ブッダの大地を築く、タイ仏教の開発僧」も素晴らしい。四摂事の「同事」について「これはエンゲージ(参画)することだ。すなわち、初めから終わりまで皆と同じ立場に身を起き、苦楽を共にして問題解決取り組んでいくということだ」これは金言。
 
爽やかな原稿が続いた後に、ネルケ無方老師インタビュー「南方仏教は好きじゃないです」を読むとちょっと拗ねてるような子供っぽい印象を受けてしまう。
 
正木晃「身体をめぐる大乗と小乗」は正直ちんぷんかんぷん。
 
石飛道子「龍樹菩薩の気持ち」はこれまでのおさらい的なエッセイ。
 
星飛雄馬ミャンマー仏教の巨人、マハーシ・セヤドー」簡潔な評伝。

気づきと智慧のヴィパッサナー瞑想 (入門者のための理論と実践)

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こちらの新刊の紹介ですね。
 
井上ウィマラ「今、仏教に求められているもの」震災復興の一環としてのグリーフケア実践と今後の支援のあり方について考察。
 
レポート「仏教書ナイト 日本仏教夜話パート2」前半メインのまとめ。後半寝てたのか?
 
特別インタビュー山田太一は脈絡よくわからず。薄い。ちなみに、言及されてる小説『空也上人がいた』はいっけんイイ話風ながら、山田太一の「若さへの呪詛」のような情念が込められた鬱小説ですよ。

空也上人がいた (朝日新聞出版特別書き下ろし作品)

空也上人がいた (朝日新聞出版特別書き下ろし作品)

 
連載、藤本晃「仏教としての浄土真宗」4は真宗内購読率が高かったりするのかしら?
 
同じく連載、拙稿「パーリ三蔵読破への道」9副題は「「菩薩」それは空洞」いぜん学研のムックでやった考察のアップデート+菩薩仏教について思うところを書いた。以上です。

図説ブッダの道―偉大なる覚者の足跡とインド仏教の原風景 (NEW SIGHT MOOK Books Esoterica エソテリ)

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〜生きとしけるものが幸せでありますように〜