もしリアルパンクロッカーが仏門に入ったら

架神恭介著『もしリアルパンクロッカーが仏門に入ったら』イカロス出版を読んだ。

パンクロッカーと歴史上の名僧たちが悟りの境地を目指して奮闘する青春物語。

パンクロッカーの“まなぶ”を狂言回しにした小説＆解説パートで構成された仏教入門書です。

原始仏教〜中観（龍樹）・唯識〜中国仏教〜最澄・空海・徳一〜鎌倉新仏教（法然、日蓮、道元etc）というオーソドックスな流れで、主要な仏教人物をキャラ化しつつ、教義の要点もワンフレーズで上手にまとめて解説してあります。

小説パートはいかにも無理矢理感が漂いますが（ひたすらゲロ吐いたり殴り合ったりしてるだけなので、飽きる）、解説パートの切れ味はさすが。僕は本書を読んで、唯識思想がはじめて解った(気になった)YO!

あと、大乗仏教の悟りを「全体ドカーン」のワンフレーズで説明してみせた蛮勇はすごいっす。

別に原典を読んで書かれた本ではないので、参考図書の受け売りに首を傾げるところも随所にある。

たとえば釈尊パートを宮元啓一に全面依拠したり、道元について留保なく「修証一等」を持ち出したりするのはどうかと思ったが。

でも学者の書いた現役の一般書で宮元啓一の他にどんな人選があるかというと難しいよなぁ。

あと、袴谷先生ら批判仏教派の説は一般書レベルでは影響力が皆無ということらしい。

ともあれ、仏教書読みでも仏教のすべての流れを全体的に網羅してる人なんかいるわけないので、かなりディープな仏教オタクでも参考になる箇所はあると思う。

同じ著者の『完全教祖マニュアル』ほどのインパクトはないけれど、些細な事はおけば読み応え充分の好著です。オススメします。

架神さんの既刊。

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