山際素男氏の死去 佐々井秀嶺師の来日

作家・翻訳家、山際素男氏の逝去を伝える情報を先月末からチラホラ目にしていたのだが、4月7日には訃報が配信されていた。

山際 素男さん(やまぎわ・もとお=作家、翻訳家) (04/07 13:56)
 3月19日午前11時18分、間質性肺炎のため東京都東大和市の病院で死去、79歳。三重県出身。(略)葬儀は近親者のみで行った。喪主は置かない。
 法政大卒業後、インドに留学。インドのカースト制度の実態を日本に紹介した。代表作に「不可触民 もうひとつのインド」(81年)。古代インドの大叙事詩「マハーバーラタ」(全9巻)で、98年度日本翻訳出版文化賞を受賞した。*1

ずいぶん遅くなってしまったが、山際氏のことをご存じない方もいるだろうから、当ブログでもそのお仕事の一部を紹介したい。略歴はwikipediaにもまとめられているが、色川武大との交流エピソードは、いかにも無頼派という風情で面白い。

20代のころは、小説家志望で、同人誌活動を行っており、そこで同い年の色川武大と知り合い、お互いの家に泊まりあうほど、親密になり、色川が死去するまで交際があった。色川は山際を「奇人」ととらえ、後に執筆した、奇妙な人物たちが次々と登場する色川の出世作『怪しい来客簿』に、山際を登場させたかったという。その後、色川の小説の中に、キャラクターとして登場した。また、山際には二人息子がいたが、次男が色川の少年時代にそっくりたったため、「下の息子は、俺がインドに行っている間に、色川がつくった子供じゃないか」と冗談を言っていたという。

また、1984年に、吉行和子岸田今日子から「インドに行ってみたい」と依頼され、1984年末から1985年初めにかけて彼女らを案内してインド旅行につれていき、その旅を、『脳みそカレー味 岸田今日子吉行和子とのインド旅日記』としてまとめた。*2

不可触民と現代インド (光文社新書)

不可触民と現代インド (光文社新書)

アンベードカルの生涯 (光文社新書)

アンベードカルの生涯 (光文社新書)

ブッダとそのダンマ (光文社新書)

ブッダとそのダンマ (光文社新書)

インド不可触民の実態を赤裸々に報告し、不可触民解放とカースト差別打破のために生涯をささげたアンベードカル博士の伝記を翻訳して広く日本人に知らしめたことは、山際素男氏の大きな業績である。


チベット問題 (光文社新書)

チベット問題 (光文社新書)

ダライ・ラマ自伝 (文春文庫)

ダライ・ラマ自伝 (文春文庫)

ダライ・ラマ 幸福になる心

ダライ・ラマ 幸福になる心

山際氏は、チベット問題にも造詣が深かった。「ダライ・ラマ法王日本代表部事務所」にもかかわり、ダライ・ラマ自伝など、いくつかのチベット関係の著書・翻訳書もある。


フォトジャーナリスト山本宗補氏の「山本宗補の雑記帳」に山際氏の葬儀について記されている。

 近親者のみで行われた簡素な葬儀と火葬に参列させていただいたことは光栄だった。葬儀の一連の記録写真は、ご遺族とインドの佐々井秀嶺師、光文社の編集者にお渡しした。
棺には山際先生の代表作2冊と原稿用紙に鉛筆、それと杖も遺族の手により収められた。
「不可触民 もうひとつのインド」(光文社文庫)と「破天 インド仏教徒の頂点に立つ男」(光文社新書)の二冊だ。「破天」とは佐々井秀嶺師の事実は小説よりも奇なりの自伝。二段組で600ページの新書らしくない新書だ。*3

山際氏のライフワークは、やはりインド不可触民の解放という世界史的なドラマを活写し続けることだったのだ。

不可触民―もうひとつのインド (知恵の森文庫)

不可触民―もうひとつのインド (知恵の森文庫)

破天 (光文社新書)

破天 (光文社新書)

山際氏が記した大作の伝記『破天』を通じて、多くの日本人がインド仏教指導者・佐々井秀嶺師を知ることとなった。その佐々井氏が現在、四十有余年ぶりに来日中であると知って驚いた。こちらも、山本宗補氏の「山本宗補の雑記帳」、そして電脳和尚の「てやんDay!」でも密着レポートが掲載されている。テレビクルーも同行しているようだ。


佐々井師は、なんと「アルファブロガー小飼弾氏と会見したそうだ。ブログ「404 Blog Not Found」で小飼氏が興奮気味に報告している。

小飼弾の 「仕組み」進化論

小飼弾の 「仕組み」進化論

まさか、生きてお会いできるとは。

しかも、この日本で。


あの「男一代菩薩道」の佐々井秀嶺師が、実に44年ぶりに日本にいらっしゃった。それに生きて立ち会うことが出来ただけでも信じられない良縁なのに、直に話ができるとは。機会を設けて下さったアスペクトに改めて感謝。

男一代菩薩道―インド仏教の頂点に立つ日本人、佐々井秀嶺

男一代菩薩道―インド仏教の頂点に立つ日本人、佐々井秀嶺


アスペクトが出版企画で動いているのか。サンガももう少しアンテナ張って動いていれば……。佐々井師は5月23日に臨済宗大本山南禅寺(京都市左京区)で一般公開の講演会を行うそうだ。新幹線に乗って駆けつけたいけど、ううう、正山寺のウェーサーカ祭の日ではないか……。


東京でも、ぜひ一般公開の講演会を開いていただければと思う。チベット問題で積極的に動いている護国寺あたり、どうなの?


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*1:http://www.hokkaido-np.co.jp/news/fuhou/157588.html

*2:[http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E9%9A%9B%E7%B4%A0%E7%94%B7:title=wikipedia:山際素男]

*3:http://homepage2.nifty.com/munesuke/za-2009-4-14.htm