仏教徒人口に見る「統計」の怪しさ

きのうの日記、2009-02-07 アメリカ下院の仏教徒議員(オバマ就任演説における「仏教スルー」を嘆く)のブックマークのなかで、

http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/9460.html 素直に多い順では? てかこの分布で2%の仏教を取り上げる方が異常な気はする。

というコメントを戴いた。なるほどリンク先のグラフ「世界各国の宗教(2000年)」を見る限り、そのような感想をもたれても仕方はない。しかしこのグラフにはちょっと問題がある。

「世界各国の宗教(2000年)」ではアジアで仏教徒人口の多いタイ(63,884,000人)・ミャンマー(48,798,000人)・スリランカ(19,299,000人)がすっぽり抜けている。すべての国を網羅するかわりにいくつかの国を抽出する場合は、宗教構成が特徴的なケースを選んで載せるべきで、仏教徒人口が約95%のタイ、約89%のミャンマー、約70%のスリランカを排除して「世界各国の宗教(2000年)」を作表するのは不適切だと思う。

そうでなくとも、仏教、とりわけ中国系(日本・台湾・韓国を含む)の大乗仏教はシンクレティズム(宗教融合・混交)を通じてアジアに浸透していったため、宗教統計が取りづらい。Wikipedia の宗教統計ではその揺らぎ・ブレをそのまま反映しているので、むしろ誠実ではないかと思う。

全世界の仏教徒人口が、7.33% - 22.67% というブレは、仏教という宗教の性質からいって、決しておかしな数字ではない。

仏教に関する統計の問題については、昨年にも記事を書いたことがある。

2008年『週刊ダイヤモンド』新春号(2008/1/12 ダイヤモンド社)の特集、「寺と墓の秘密 誰も知らない巨大ビジネス」では、やはり伝統仏教の教団信者数の推移グラフを用いて、

2005年現在の「伝統仏教」信者数は5427万人で、1995年の信者数からたった10年で13.9%(約695万人)も急減している

として、日本の伝統仏教がここ10年で急激に衰退していると結論付けた。しかし、同誌の統計はデータの扱い方があまりにも雑で、恣意的、かついい加減なものだった。はっきり言えば、間違いであった。詳しくは上記の記事で論じておいた。日本仏教の「衰退」は、気分としては共有されているとしても、週刊ダイヤモンドが煽ったような劇的な形で、数字に現れているわけではないのだ。

現代社会では宗教に関する関心が薄い。時々、メディアに取り上げられる際にも、宗教に関する基礎知識を欠いたままで、目の前のデータをやみくもに解釈するとトンデモナイ間違いを流布することになりかねない。いったん間違いが流布されても訂正されることなく、人心に定着してしまうことになる(例:勝間和代の「三毒追放」)。誰もが「宗教通」になる必要はないが、メディアに関わる人々にはある程度、宗教という視点から世の中を眺めるクセをつけておいて欲しいと思う。

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