雪

オルハン・パムク『雪』(藤原書店)

読了。2006年にノーベル文学賞を受賞したトルコ人作家の「政治小説」。中近東諸国の寂寥感ただよう精神的な負けっぷり、神を論じることの出口のなさっぷり、主人公である文系ダメ男(Ka)の無駄な悶々ぶり、などなど物悲しいにもほどがある、とゆー小説だった。比較的マイナー言語であるトルコ語からの翻訳ゆえか、訳者の文体の生硬さに「下訳」のゲラを読まされているよう。編集者モードで読んだから我慢できたけど、一般読者だったら投げ出すところだろう。あと悲しかったのは裏表紙カバーに書かれた「あらすじ」。

1990年代初頭、トルコ北東部の地方都市カルス。雇われ記者の詩人Kaは、イスラム過激派によるクーデター事件に遭遇し、宗教と暴力の渦中に巻き込まれ…。世界40か国語に翻訳され、各国でベストセラーとなった超話題作。

読んでいない人が書いた文章のようで、太字にしたところは明らかな間違い。上に引いた「MARC」データベースでも直されないまま。ストーリーの基本的な設定を取り違えていては話にならない。誰か気付けよ。あるいはイスラム教のテロリズムに絡めて売るためにあえてウソを書いたのか。編集者不在で、実質自費出版レベルの放置プレイで出された本ということなら、訳者も比較的、健闘したと評価すべきかもしれない。というわけで、隅から隅まで物悲しい本だった。

にほんブログ村 哲学ブログ 仏教へ

〜生きとし生けるものに悟りの光が現れますように〜