日本テーラワーダ仏教協会がらみの新刊が3冊。
スマナサーラ長老の講演原稿をもとに執筆された『ブッダの集中力』(サンガ新書)。禅定に関する乾いた解説かと思いきや、第1部は「危ない集中力」と題されていて、人間に先天的に備わっている集中力(認識対象に心がべったり張りついた状態)のはたらきを悪用した
振り込め詐欺や様々なマインドコントロールなどのカラクリを暴きだしている。第2部「究極に楽しい集中力」で、これまであまり語られていなかったサマーディ瞑想の心理学が詳述される。「役立つ初期仏教法話」シリーズも9巻目にしてかなり深いところまで来た感じ。
藤本晃(慈照)師の『仏教の正しい先祖供養―
功徳はなぜ廻向できるの?』は
国書刊行会から出版された『
功徳はなぜ廻向できるの?』を新書化したもの。いっけん「自業自得」と矛盾することから、初期仏教にあとから混入した異物 or 土着信仰との習合と貶められてきた「
功徳廻向」理論による先祖供養が、実はパーリ増支部のジャーヌッソーニ経に説かれた由緒正しい仏事作法だったことを論証している。
盂蘭盆経の原型回復や中陰説の考証など、謎解き本としても楽しめるが、学術的成果を仏道実践の場に役立つように見事に還元した、非常に実用性の高い新書と言えるのではないか。ブッダへのお供え物に関する解説など、事実とずれた著者の「戒禁取」がちょろっと角を出しているのは玉に瑕だけど。
星飛雄馬さん初の単著となる『初期仏教キーワード』はアビダンマ講義『ブッダの実践心理学』シリーズを読むためのハンディな用語集。手帳風のビニール壮丁も上品で内容も過不足ないクールな記述がかっこいい。「初期仏教キーワード」というタイトルにはちょっと語弊がある(パーリ経典由来ではないアビダンマ独特の用語も多いので)が、初期仏教の流れを唯一引き継ぐ
テーラワーダ仏教の基本用語集として、高い実用性を備えた本だと思う。詳しい内容紹介は、著者のブログをご覧頂きたい。
〜生きとし生けるものに悟りの光が現れますように〜