竹中彰元/新宗教ビジネス

JR千種駅近くのちくさ正文館書店にて、昨日の日記で取り上げた竹中彰元師(真宗大谷派)に関する本を購入。事実上、ETV特集のネタ本だね。

戦争は罪悪である―反戦僧侶・竹中彰元の叛骨

戦争は罪悪である―反戦僧侶・竹中彰元の叛骨

戦争は罪悪である―反戦僧侶・竹中彰元の叛骨
作者:大東 仁
出版社: 風媒社

表紙画像をよく見てほしい。なんと惚れ惚れするような面魂だろうか……。昔の日本人には尋常ではない良い顔の人がいたけど、彰元師もその一人だと思う。この表紙だけでも買う価値があるんじゃないかな。本書は彰元師のバイオグラフィから説き起こして、少ない資料から彼の「反戦発言」とその波紋を解明している。また(旧幕府側寄りだったことへの負い目からか)明治時代から積極的に戦争協力を行い、大東亜戦争期には「浄土真宗」であることすら捨てて「皇道真宗」を名乗るまでの痴態を演じた真宗大谷派、ひいては「一殺多生」によって殺生戒の抑止力を蒸発させて国策に追従し続けた日本仏教の負の歴史を淡々と告発している。

留置所に面会に訪れ、「反戦発言」を取り下げてくれと懇願する家族に、「何をいうか。わしは自分の得手勝手をいうとるんじゃない。仏法を語ったのじゃ。間違ったことはいっていない」と語った彰元師と、彼をギリギリのところで守ろうと奔走した門徒の努力が、国策に追従することに汲々としていた宗派の姿と対照して取り上げられている。

……大谷派僧侶である私にとっては大切なことがあります。彰元の存在がなかったら真宗大谷派は浄土真宗の組織ではなくなっていたということです。一〇〇パーセント「皇道真宗」という教団になってしまっていたのです。
 わずかとはいえ、戦争の時代にも浄土真宗の教えが継続していました。だからこそ、大谷派は真宗の教団です、といえるのです。だからこそ、私は大谷派の僧侶です、といえるのです。彰元の存在は、浄土真宗が現在にまで継続していることの根拠なのです。
(おわりに より)

という著者の言葉ははたして大袈裟なものと言い切れるかどうか。彰元師は哲学館(東洋大学の前身)に学んでいた。とゆーわけで、筆者の大先輩にもあたる人なのだ。また機会があれば紹介したいと思う。

新宗教ビジネス (講談社BIZ)

新宗教ビジネス (講談社BIZ)

新宗教ビジネス (講談社BIZ)
作者: 島田 裕巳
出版社: 講談社

行き帰りの新幹線で読んだ。キワものっぽいタイトルだが中身は至極まじめで、役に立つ本。新宗教組織の成り立ちと行き方から編み出された多様な「ビジネスモデル」をキャッチーな呼び名でざっくり分類していく手腕は島田裕巳の真骨頂という感じだが、宗教法人がなぜ非課税なのか、既存宗教と新宗教の経済構造の違い、といった基本的な問題から丁寧に解説してくれているので、新宗教への偏見をなくすための啓蒙的な意義はなかなか大きいと思う。創価学会がなぜ群を抜いて「成功」したかという謎についても、島田の「ビジネスモデル」論に基づいた説明で、かなりすっきりと納得できた。現代に隆盛を極めるテレビ・ショッピング、ネットワークビジネス、あるいはヤマギシ会のような農業コミューンの運営にも「新宗教ビジネス」との深い相関性が見られるという。「宗教の金集め」は執拗に批判される事象だが、気がつけば、新宗教が作り出したビジネスモデルは日本の経済社会に深く浸透しているのだ。新宗教の動向はむしろ、その手法を応用した俗世間の先を行っている面もあるのだと示唆されている。読みやすいのに読みごたえがあった。島田裕巳の本は、ヒット率いまだに高い。

〜生きとし生けるものに悟りの光が現れますように〜