韓国の僧侶デモ

去る8月27日、韓国ソウルで仏教徒による大規模な示威行動が起きた。

曹溪宗(チョゲジョン)をはじめとした佛教27の宗教団体は同日午後2時、ソウル市市庁前のソウル広場で、僧侶1万人あまりと佛教信者など20万人あまり(主宰側の試算、警察の試算では6万人)が出席し、「憲法破壊や宗教差別を行っている李明博(イ・ミョンバク)政権を糾弾する汎仏教徒大会」を開いた。

解説すべき背景はいろいろあるのだが、一番よくまとまっている「レイバーネット」の記事を注釈入りで紹介しておこう。太字は引用者。

仏教界、なぜ「角」を出したか

ソウル市長の時、ソウル市を「神様に奉献」した李明博大統領の就任以後、仏教界が「宗教差別」と呼ぶような事例は着実に起きていた。就任初期に政府の主要閣僚を任命する時から、「希望教会(引用者注:ソマン(所望)教会)」のコード人事が問題になった程、キリスト教偏重人事引用者注:韓国でキリスト教とゆー場合はプロテスタントのみを指す。カトリックは「天主教」とされる)が目立った。

李明博大統領が3月にキム・ジノン・ニューライト牧師と大統領府での礼拝を行ったり、5月の純福音教会の朝食会祈祷会には参加しても、釈迦生誕日は無視したこと引用者注:釈迦誕生日は韓国の公的な祝日。李明博は自分のプライベートな教会行事を優先して、国家行事を軽んじたのである。信仰以前に、国家元首としてこれはNGだろう)等、直接の活動とともに政府公職者の連続する仏教界の気持ちを逆撫でしてきた。

3月にキム・ソンイ保健福祉部長官候補の「(引用者注:韓国社会の二極化は信仰心が足りないから引用者注:貧富の差が生まれるのは国民がキリスト教プロテスタントを信じないから!!!)」という過去の寄稿が表面化して論議になり、5月にはチュ・テジュン前大統領府警護処次長が「すべての政府部署の福音化が私の夢引用者注:韓国政府をキリスト教で完全に牛耳ることが夢ですっ)」と発言した。6月にはチュ・ブギル大統領府広報首席が「キャンドル集会参加者はサタン引用者注:プギャ〜〜!)」という発言で物議をかもした。

そのうちに6月末、国土海洋部が公開した交通情報システム「アルコガ」には教会の情報は詳しいのに、曹渓寺のような寺社情報が脱落している事実引用者注:邪教=仏教の存在そのものをソウル:神にささげられた市から抹殺!)が伝えられ、仏教界の本格的な怒りが起こり始めた。数日後、オ・チョンス警察庁長官が「警察福音化クムシク大成会」の広告ポスターに汝矣島純福音教会のチョ・ヨンギ牧師と並んで登場引用者注:警察権力はキリスト教の味方と宣言)し、1ヶ月後の7月には曹渓宗総務院長チグァン僧侶の車両を警察が強制検問捜索引用者注:これはBSE牛肉の輸入反対デモの首謀者を曹渓寺で匿っていることへの嫌がらせ)したことで対立が深刻化した。

最近「仏教新聞」が「李明博政府の宗教差別監視のための汎仏教連席会議」の発表資料を土台に、宗教差別関連の事例を分析した結果、この6か月間で16件が集まり、盧武鉉前大統領在任期間5年間での19件と同様の数値を示した。

今日の汎仏教徒大会に参加した仏者たちは「国民に差し上げる文」で「李明博政府発足以後、公職者の宗教差別と仏教蔑視によって宗教平和が破壊されている」とし「宗教間の平和を破るいかなる行為も未然に防止する制度的な立法措置を望む」と明らかにした。

以下、その他の記事リンク。

大手新聞も事態を憂慮している様子。基本的に仏教界に同情的である。そりゃ、こんな「神の国ごっこ」を続けてたら国が滅茶苦茶になるわな。

曹渓寺に反政府活動家が匿われている件。

韓国の最大宗派、曹渓宗には日本語サイトもある。更新が途切れているが法話などけっこう充実。華厳哲学を中心に据えた禅宗だが、李氏朝鮮から続く数百年の弾圧に耐えてきたど根性集団だけに、その修行は「韓国陸軍の特殊部隊より厳しい」(場合もある)らしい。

とりあえず27日は平和的なデモに終始したようで、社会に模範を示したという面でも仏教徒の面目躍如だったのではなかろうか。

〜生きとし生けるものに悟りの光が現れますように〜