争名の賦

こないだ読了した草森紳一『争名の賦―自己宣伝と古代中国知識人』の目次を以下に書写しておく。古今東西を問わず、知識的人間にべっとり付きまとう「嫌なところ」を見事に描出しているなと、目次を眺めていただけば分かると思う。ぜんぜん古さを感じさせない、むしろ現在こそ読まれるべき内容ではないかと思う。筑摩文庫あたりから復刊してもらえないものだろうか……。

争名の賦 (1978年)

争名の賦 (1978年)

争名の賦 (1978年)
作者: 草森 紳一
メーカー/出版社: 徳間書店

『争名の賦―自己宣伝と古代中国知識人』目次

  • 党錮伝「たがいに相抜挙す」
    • 逆恩のクーデター/心弱き知識人の「退隠」という自己宣伝/官を辞すことの流行/清流派のスター李膺と郭林宗/仲間ぼめの番付批評/宣伝的武器としての里謡工作/孝廉の人陳蕃の処世の構図/選挙をめぐる農村知識人の宣伝狂い/スタンドプレーヤー郭林宗の謎/人材発掘の宣伝旅行/マイナスになった諫言戦術/清流派掃滅の党錮の禁
  • 葛洪「空に飛ばぬ鵬」
    • 仙人が儒教を語っている/仙人もセックスする/不平の書『抱朴子』/辛辣な郭林宗批判/自己否定の自己宣伝
  • 屈原「我 独り醒む」
    • 愚痴の昇天/莞爾として笑う/傲慢の陥し穴/賢者の不賢/人徳と人気/怨みの的を失えり/美人を思う/屈原の宣伝係たち/屈原はいなかった
  • 東方朔「その文辞たるや不遜」
    • 憶えている字は四十四万字/まず相手を呆れさせるという術/もったいぶることの注目効果/口だけの命賭け/挫折した諫言の技術/朝廷に世を避ける/滑稽の英雄
  • 呂不韋「奇貨 居くべし」
    • 名を棄て利を残す/商人の雄弁術/まず相手の暗黒面のみを言いたてる/まず女性に脅迫しながら自分を売りこむ/他者宣伝は自己宣伝/楚服の効果/商人が宰相になることの誤算/裏が表にひっくりかえる/不幸がますます人気を呼ぶ不幸
  • 魯仲連「功名 立つべし」
    • 人に頭を下げないという芸当/過去形の「天下の賢君子」/「無言」の手/画策好きで仕官嫌いの矛盾を生きる/利を棄て名を残すエゴイズム
  • 韓非子「亡ぶべきなり」
    • 列挙のスタイルと体力/スピード感で人を圧倒する/吃音者の饒舌/法と術と勢/賢ならずして不肖/相手をひっくりかえす論法/どもりの韓非、使者として秦へ行く/秦王と李斯の謀計/説くことは難し
  • 孔子「沽らんかな 沽らんかな」
    • 他人が認めなくても気にかけぬ/一般論に紛れこむ愚痴/巧言令色と剛毅朴訥/「礼」で粉飾された事故宣伝/宣伝術の高度化を促した儒教
  • 王莽「真天子となれ」
    • 外戚政治が生んだ宣伝の怪物/セックス・サポタージュ/隠忍なる王莽の自己宣伝/ライバルとの看病合戦/他者に自分の評判をたてさせる/「親切」にめりはりをつける/裏街道の自己宣伝/ライバル一蹴のための謀略/「漢」簒奪を胸に下野する/王莽、後宮での権力闘争に巻きこまれる/引き際のよさと自己宣伝/遠隔地からの大衆操作/自己宣伝=政治宣伝/残酷化してきた自己宣伝/ついに「新」の皇帝となる

〜生きとし生けるものに悟りの光が現れますように〜