イスラームから考える

イスラームから考える

イスラームから考える

イスラームから考える
作者: 師岡 カリーマ・エルサムニー
出版社: 白水社

イスラームが絡む事件はどうしてもイスラーム問題として捉えられがちですが、それらは多くの場合、実はイスラーム云々以前の問題です。〔中略〕では、イスラームをめぐるいくつかの時事問題を、イスラーム問題としてではなく、言葉は大げさですがもっと広く単に人間の問題として捉え直してみようというのがこの本のテーマです。(本書「あとがき」より)
(帯のテキスト)

往路の新幹線で読了。イスラームがらみで、こんな素晴らしい本に出合えるとは思わなかった。「単に人間の問題」という著者の言葉のなんと力強いことか。巻末の酒井啓子氏との対談も読ませてくれる。ブログの評判を見たわけでも、amazonの書評につられたわけでもない。ただふと書店の棚を眺めていて(新宿ルミネ1ブックファースト)手にとった本に、こんなに感銘を受けた、ということが、またうれしい。五つ星である。今年上半期「ひじるベストエッセイ賞」(宗教をテーマにした優れたエッセイに贈られる賞。たった今創設)を差し上げたい。

イスラームから考える*目次

悪の枢軸を笑い飛ばせ
表現の自由という原理主義
「いつアラブの死亡を宣告するのか」
「ベールがなんだっていうの?」
懲りずにフランクフルト
原理を無視する「原理主義」
青年よ、恋をせよ!
翻訳を読むことのむずかしさ
愛国心を育成するということ
私の九・一一
対談 私たちが前提にしている現実派なにか(酒井啓子*師岡カリーマ・エルサムニー
あとがき

白眉はパレスチナの現代詩人の作品を通して、アラブの知識人の苦悩と模索を描いた「いつアラブの死亡を宣告するのか」だろうか。まさに、「単に人間の問題として」こころに染みてきたよ。

〜生きとし生けるものが幸せでありますように〜