仏教のまなざし

仏教のまなざし―仏教から見た生死の問題

仏教のまなざし―仏教から見た生死の問題

仏教のまなざし―仏教から見た生死の問題
作者: モーリス・オコンネル・ウォルシュ
出版社: コスモス・ライブラリー

訳者の大野龍一氏とご縁の深いSさん(肥田式強健術のオーソリティ)からのご紹介。パーリ長部経典(diigha nikaaya)を英語で全訳した英国人テーラワーダ仏教徒Maurice O'Connel Walshe(Amaravati僧院の設立にも関わっている)がBUDDHIST PUBLICATION SOCIETYのWheel (法輪)誌に掲載した論考を訳出し、訳者がそれらの論考に触発されて書いたエッセイやら、訳者の導き手であるクリシュナムルティが輪廻に関する質問に答えたQ&Aの抜粋やらをカップリングした本。収録されたのは、仏教の「死後生存」への見解をまとめ、無我説と輪廻の関係にまで踏み込んだ「仏教と死」、仏教徒がとるべき無執着の態度と外部世界との関わりの問題を論じた「無執着」、性の問題に仏教サイドから答えた「仏教とセックス」の三篇。どれもコンパクトにまとまっているので読みやすい。ウォルシュの論考を受けた訳者の文章からは、精神世界系インテリ?の情報環境・読書環境みたいなものが垣間見られてたいへん興味深い。訳者あとがきでは、スマナサーラ長老の著書に多くを学んだと述べている。

惜しむらくはアルファベットのパーリ語表記がバラバラだったり、「ヴィパッサーナ」「パーリー語」といったカタカナ表記の間違いがあったり、パーリ経典の構成について知らないためにWalsheの代表的訳業であるThe Long Discourses of the Buddhaについて説明が間違ってしまっていたりと、「一言かけてくだされば……」といった瑕疵が散見されることか。

The Long Discourses of the Buddha: A Translation of the Digha Nikaya (Teachings of the Buddha)

The Long Discourses of the Buddha: A Translation of the Digha Nikaya (Teachings of the Buddha)

とまれ、(テーラワーダ系は英語文献が豊富なのに)英文を見ると鬱になる筆者のような仏教書読みにとっては、どのような形であれ、このような訳書を出していただけることは干天の慈雨のようにありがたい。ぜひ第二弾、第三段のアンソロジーも出してほしいものだ。ちなみに大野龍一氏のクリシュナムルティ訳書はamazon.co.jpのカスタマーレビューでも評価が高い。追って読んでみようと思う。

人生をどう生きますか?

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生と出会う―社会から退却せずに、あなたの道を見つけるための教え

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