『諸子百家<再発見>』

寒風吹きすさぶ。

諸子百家「再発見」―掘り起こされる古代中国思想

諸子百家「再発見」―掘り起こされる古代中国思想

浅野裕一・湯浅邦弘 編『諸子百家<再発見> 掘り起こされる古代中国思想』読了。1993年,94年に相次いで発掘・発見されたシナ古代戦国時代の竹簡資料について紹介しつつ、新資料によって塗り替えられつつある「諸子百家」思想の諸相を論じてゆく。浅野『諸子百家』(講談社学術文庫)で諸子百家の概要を掴んでから、次に読んでもへこたれない程度の平易な文章の共著。第一章「諸子百家と新出土資料」(浅野裕一)は諸子百家思想の始末をざっと眺めた後、秦の焚書を生き延びた古典資料の評価をめぐる信古派、疑古(ギコ)派&釈古派の論争史を紹介し、そこに核弾頭級の衝撃をもたらした上述の新出土資料の概要と、その採用・研究に及び腰の日本学会への批判など。以下、目次のテーマについて小論が並んでいる。

まえがき(湯浅邦弘)
第一章 諸子百家と新出土資料 浅野裕一
第二章 諸子百家の時代の文字と書物 福田哲之
第三章 天と人との距離 菅本大二
第四章 人間の本性は善か悪か 竹田健二
第五章 孔子の教えは政治の役に立つか 湯浅邦弘
第六章 老子と道家 湯浅邦弘
第七章 孔子は『易』を学んだか 浅野裕一
附録
郭店楚簡形制一覧
上博楚簡形制一覧
書誌情報用語解説
新出土資料関係文献案内
あとがき(浅野裕一

浅野先生ほどの迫力はないものの、どれも一読の価値ある面白さだ。第一章などで報告されているが、出土した古代の竹簡資料は、当初、大量の水を含んでコンニャクのような「プルンプルン」状態だったという。「プルンプルンの古文書」なんて……これまでのイメージと落差が激しすぎて思わず笑ってしまった。あとがきで浅野先生は、現在の日本における戦国楚簡研究の立ち遅れを危惧しつつ、「本書の読者の中から、一人でも多くこの分野の研究に興味を抱く後進が現れることを、切に希望して筆を擱くこととしたい。」と述べている。いやぁ、僕も高校時代にこれ読んでいたら、中国思想の方に進んだかもしれない。新出土資料をもとにした古代シナ思想史の書き換えを通じて、東アジアの漢字文化圏ルネッサンスの機運が起るのではないか、という希望まで抱かせてくれる。これは日本がどーのとゆーより、日中韓が一緒になって、欧米の学舎も交えながら、わいわい研究するのがいいと思う。うーん、楽しそうだ。

ちなみに本書執筆グループの最新研究動向は、以下のHPで確認できる。

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