週刊ダイヤモンド「寺と墓の秘密」がかなり変

ひたすら原稿作成の日々。たまには身辺雑記以外の記事を書きます。


週刊ダイヤモンド新春号の特集、「寺と墓の秘密 誰も知らない巨大ビジネス」を読んだ。週刊誌なのであまり知られない仏教「業界」の内幕に興味ある人は買っておいた方がいいだろう。

しかし、数字やグラフについては首を傾げざるを得ない。


伝統仏教「衰退」のグラフは本当??


同誌28ページ右のグラフ(及び41ページの図)によると、「苦戦する伝統仏教」として2005年現在の「伝統仏教」信者数(なぜか真如苑立正佼成会も入っている。だったら創価学会阿含宗も「伝統仏教」に入るんじゃねぇの?とゆー気もするが)は5427万人で、1995年の信者数からたった10年で13.9%(約695万人)も急減していると結論付けられている。グラフもカックンと落ちている。


しかし、これ、変!
データの扱い方があまりにも雑である。

  1. 日本仏教を代表する大宗派である曹洞宗の2005年の信者数が「データなし」として除外され、その分が「減少」となっている。
  2. 特記事項とすべき「創価学会日蓮正宗離脱」の影響にまったく言及がない(創価学会は「伝統仏教」あつかいではないので、これも「減少」となっている)。


同41ページの「仏教宗派別の信者増減率ランキング」を見ると大谷家VS内局の内紛で分裂を繰り返している真宗大谷派(お東)をはじめ、浄土真宗本願寺派(お西)、浄土宗などで1995年比増減率が軒並み0.0%とされている。「阿弥陀様を信じると死なない、子宝にも恵まれない」なんてことはあり得ないから、つまり実質的に調査もせずに古いデータをコピペしてるだけなのだ。正直に調べてないからデータを出していない(と思われる)曹洞宗の1995年の信者数(公称)は157万9301人である。創価学会と絶縁した日蓮正宗もその影響で93.2%減の39万3000人となっているが、創価学会員の信者も含めた1995年の信者数は576万人である。つまり伝統仏教信者数の「急減」を示すグラフの「減」の内訳は、この2宗派の影響(695万人)で吸収されてしまう。


つまり数字に現れるような日本仏教の「危機」は認められない、幻だ、ということになってしまう。
これ、意図的なデータの曲解でないとすると……経済雑誌として赤っ恥ではないのか?


特に41ページのランキングを分析して「信者数を大きく減らしているところは、単なる減少だけではなく、末寺ごと離脱したケースもあると見られる」とか書いて、創価学会の影響をまったく「忘れている」のは、2004年8月4日号で「創価学会の実力」を特集して快哉を浴びた雑誌とは思えない「うっかり」ではないか。


様々な構造的なひずみの中でゆれている日本仏教は確かに「ゆるやかに衰退」しつつある……という慢性的な不安心理に覆われているが、それは都市化・地方の衰退など日本社会の構造変化と深く結びついている。ゆえに都会の寺院や僧侶は、現実の変化に対応したそれなりの宗教活動を行っているし、地方山村地域の寺院では地域再生と仏教復興が切り離せない。それが「伝統仏教」たるゆえんだろう。


フォローしますと、他の記事は面白かったです。同特集で触れられている末端寺院の宗派フランチャイズからの離脱傾向、都市部のいわゆる「マンション坊主」増加なんかは、日本テーラワーダ仏教協会という現場にいても確認できる日本仏教の変化だ。そういう変化の先端のところで、テーラワーダ仏教も日本仏教から「求められて」いる面もあるのだから。上記の「衰退」グラフにしても、浄土系宗派がまったくいい加減なふざけたデータ(増減率0.0%%)しか出してないことも大きな問題であるし。

お寺の経済学

お寺の経済学

↑『お寺の経済学』中島隆信(東洋経済新報社
こちらも日本伝統仏教を経済の視点で分析した書籍。読み物としても面白いし堅実です。


※追伸:僕は数学は中一から落ちこぼれなんで、算術については、自信持って「自信ない」と表明できます。間違いはご指摘いただければ改めますので、よろしくお願いします。

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