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マハ・ゴサナンダ師「伝統を保つ」

今年3月に逝去されたマハー・ゴーサナンダ大長老(マハ・ゴサナンダ師 Samdech Preah Maha Ghosananda 1913?-2007)は、ポルポト派による自民族大量虐殺と長い内戦によって荒廃しきった故国カンボジアで民族和解につとめたことで知られています。すでに品切れのようですが邦訳された著書『微笑みの祈り―智慧と慈悲の瞑想』asin:4393332075もあります。今日たまたま手に取ったら、次の一節で不覚にも涙が落ちそうになってしまいました。

マハ・ゴサナンダ師が、アメリカに移住したカンボジア人同胞を励ました法話です(上述書76ページ)。

伝統を保つ

 北アメリカは人種の坩堝です。私たちカンボジア人はまだ一世代しかここにいません。近年、私たちはヨーロッパやオーストラリア、アジア各地に移住しました。新しい土地で生活を築き、新しい社会の仲間入りをしていますが、私たちの文化的アイデンティティを保つことも大切です。自分の文化がないと、水がなく干あがった魚のように混乱してしまうでしょう。


 カンボジア人には貴重な遺産があります。豊かなカンボジア文化にはたくさんの恵みがあります。


カンボジア人は、むさぼり、怒り、迷いを克服できるので恐れを知らない。
カンボジア人は、謙虚で、ていねいで、気高い。
カンボジア人は、父母と、指導者と、土地と、そして世界の全てに感謝をする。
カンボジア人は、善の法(ダルマ)と、人道の本質である五戒を守る。
カンボジア人は、気づきに満ちた心とはっきりと知るという鎧を身につけている。
カンボジア人は、慈しみ、哀れみ、ともに喜ぶ心、平静心を実践する。
カンボジア人は、忍耐強い。大きな困難、苦しみ、苦労に耐えることができる。
カンボジア人は、他人のあやまちを許し、忘れることができる。
 これは過去の経験から学んだのである。そして現在によって未来を築く。
カンボジア人は、誠実で、品行がよい。中道を歩む。
カンボジア人は、柔和で、よく微笑む。その話し方は、誠実で、愛に満ち、実践的で、明瞭で、快活で、やさしい。その話し方には、心を不安から解き放ち、迷いから浄化し、鍛える力がある。
カンボジア人は、仏教と法への慈しみの心によって連帯する伝統を持つ。


 川に入れば、川に沿ってジグザグと流れていきます。しかし、ボートを忘れてはいけません。そのボートが伝統なのです。もろもろの仏のように、カンボジアの人々が平和を築く者になりますように。神聖なるわれらの土地の伝統に従い、あらんかぎりの深い感謝をもって、調和と慈しみと平和をたたえます。

カンボジア」のところを「日本」に入れ替えてもいいでしょう。もっち実感の湧くように、めいめいの故郷の名前に入れ替えてもいいでしょう。「私は」「私たちは」でもいいです。内向きのプライドを慰撫する俗世間のナショナリズムや集団意識とは無縁の言葉です。我々はこのように世の光たる者であろう、と決意する言葉です。日々隋念したい言葉です。

〜生きとし生けるものが幸せでありますように〜