紹介記事(仏報ウォッチリスト)

いつも拝読している仏教系ニュースブログ仏報ウォッチリストの2006-12-31記事「今年読んだ3冊」にて、拙著『大アジア思想活劇』が取り上げられました。たいへん光栄です。

* 『大アジア思想活劇』
 佐藤哲朗=著 オンブック 06.8刊

 主軸はスリランカ仏教徒アナガーリカ・ダルマパーラの伝記です。彼を見いだしたのがアメリカ人神秘主義者のオルコット大佐で、両名を日本に招いた立役者が講釈師の野口復堂でした。そうした背景を丹念に追いながら、知られざる明治仏教史を検証してゆきます。

 著者はかねてよりこのテーマの考察をウェブ上で公開しており、私も折にふれて拝見しておりました。というより余人が手がけない分野なので、固有名詞を検索して結局ここにたどり着き、ご厄介になっていた次第。その内容が1冊にまとまるというので、資料として重宝することもあって迷わず購入したわけです。

 通読してみて、読み物としてこんなに面白いとはと正直びっくりしました。個性的な登場人物の魅力を見事に描き出し、そのアクさえもがいとおしく思えてきます。武器を持たない「活劇」を堪能しました。

 とりわけ興味深かったのは、彼らを迎えた日本仏教界側の反応です。オルコットは2回、ダルマパーラは4回来日しており、回を重ねるごとに冷遇されてゆくさまが、日本側の気持ちも分からぬでもないだけに印象に残ります。

 同書は最後に、ダルマパーラらの熱意によって1952年の世界仏教徒連盟会議の日本開催が実現したことを示し、「ユナイテッド・ブッディスト・ワールド」というスローガンを再確認して結んでいます。先人の尊い努力を私もこうして知り得たことに心から感謝いたします。

〜生きとし生けるものが幸せでありますように〜