善語勝利経(Subhaasita jaya sutta)

『善語勝利経(Subhaasita jaya sutta)』は岩波文庫『ブッダ 悪魔との対話 サンユッタ・ニカーヤII』(中村元訳)260p〜に邦訳が載ってます。アスラ(阿修羅)王ヴェーパチッティとスラ(神)王帝釈天との「善語(善なる言葉)」をめぐる歌合戦ですが、そのまま「俗世間の思考」と「賢者の思考」の対決になってます。

第一ラウンド
先攻:ヴェーパチッティ

もし止むるものなければ 愚人は益々猛り募らん
この故に重き刑罰にて 智者は愚人を止めよかし。

後攻:帝釈天(サッカ)

われ思ふに 愚者を止むるには
他の怒れるを知りて 正念*1に静かなることなり

第二ラウンド
先攻:ヴェーパチッティ

ワーサワ(帝釈天の異名)よ、この忍ぶことに、 我は過失を見るものなり。
愚人は「我を恐れて かれ忍ぶ」と思ひ、*2
牛が逃ぐれば益々猛り逐ふ如く*3 愚人は益々増長すればなり。

後攻:帝釈天(サッカ)

恐れて忍ぶと 好まば思はしめよ、好まざれば思はざれ。
己利の勝れしものの中 忍辱に勝るものなし。*4
力ありて 力なきものを忍ぶは
これ最勝の忍辱なりと云はる
力なき人は常にしのぶ、 そは無力の力と云はれ その力は愚人の力なり。
力ありて法*5に護らるる人には 反駁の要なし。
忿(いか)るものに忿り返すは 更に悪しきことなり。
忿るものに忿り返さずして 戦に二度の勝利を得るなり。
他の怒れるを知りて 正念に己を静むる人は
自と他との 双方の医師なり。
法に無知なる人のみ その人を愚人と思ふなり。

帝釈天の判定勝ち!(訳文は南伝大蔵経第12巻389p〜)


〜生きとし生けるものが幸せでありますように〜

*1:sati,気づき

*2:こいつビビッてやがるな、と思って

*3:怒った牛から逃げようとすると益々興奮して追ってくるように

*4:sadattha paramaa atthaa khantyaa bhiyyo navijjati.

*5:dhamma,真理