イスラム法はやっぱ酷い

レイプ被害の女性を罪に問う「悪法」改正へ パキスタン

 パキスタンで、レイプの被害に遭った女性が姦通(かんつう)罪に問われてしまう「ハッド法令」を見直す改正案が今月半ば、賛成多数で下院を通過した。来秋任期切れを迎えるムシャラフ大統領が女性の権利擁護の姿勢を示して再選への布石を打った形だが、法令を「イスラムの教え」とする野党のイスラム原理主義政党は猛反発。全議員の辞職を打ち出すなど揺さぶりを強め、国政の混乱を懸念する声が出ている。ソース:朝日コム 2006年11月21日18時28分

イスラム法(シャリーア)では夫婦以外の男女の性行為を「姦通」とみなす。
成人の場合は投石による死刑と定める。
レイプの場合、立証には被告の自白か、少なくとも4人の男性ムスリムの証人が必要。
要するに被害者は強姦被害を訴えた時点で自分が投獄されてしまう可能性が高い、ということ。
実際、ハッド法令を巡っては、レイプの被害者が証人を捜せず、逆に「姦通を自白した」として有罪になるケースが続出。非NGOパキスタン人権委員会によると、5月の時点で投獄中の女性約6000人のうち8割は姦通罪だったとか。
しかし、イスラム厳格主義政党連合「統一行動評議会」は「パキスタンがフリーセックスの国になるとして、法案採決をボイコット。所属する下院議員全員が辞職する方針だとか。

よく「イスラム法は女性差別に見えるけど、イスラーム以前よりも女性が尊重されるようになった」云々と苦しい弁護がされることがあるが、それはイスラム法の「精神」とか「立法者の意図」を汲んだ見解だろう。実際にイスラム法を施行せよ、というイスラム厳格主義者たちは、イスラム法の文字通りの適用を求めているのだ。イスラーム以前の非人道的な在り方を改善したムハンマドの「意図」(なんてものがホントにあったか知らんが)など問題にしていないのだ。論理をすりかえちゃいかんよ。

それにしても、USA大酋長のブッシュが、独裁傾向があったとはいえイスラム圏における世俗派の雄だったフセイン政権を転覆した罪はとてつもなく重いと思う。ブッシュが妄想するように将来ユーラシアにイスラム法に支配される「悪の帝国」が成立したとしても、その最大の功労者はブッシュということになるだろう。次は我らが前左大臣の小泉か。

参考:イスラム法の刑罰について

刑罰
イスラム法 (シャリーア) では、刑罰は キサース (報復)、ハッド (法が厳正に定めた刑罰)、タージール (懲戒、矯正) の三つに大別されます。キサースは、イスラム以前に行われていた無制限の報復 (復讐) を、コーランをもとに同害報復に改めたものです。ある者が他者を故意かつ不当に殺害した場合、加害者を殺す権利が被害者の相続人に与えられます。傷害の場合は同程度の傷害を仕返す権利が与えられます。また、同害報復の代わりに、血の代償 (賠償金制度) も認められました。ハッドは法に絶対的であり、加減は許されません。姦通罪には石打ちの刑 (既婚者) か鞭打ち (未婚者)、飲酒罪には鞭打ち、窃盗罪には手足の交互切断 (初犯=右手、再犯=左足、3犯=左手、4犯=右足) などです。タージールは裁判官の裁量に任されており、文書偽造や偽証などが対象となります。19世紀に至り、イスラムの刑罰は西欧の影響により改革の必要性が主張され、1858年にはオスマントルコが刑法典を制定するなど近代化の兆しを見せました。しかし1970年代以降、シャリーアの実施をあらためて主張する動きが強まり、特にハッドの施行意義が強調される傾向にあります。(by I)
ソース:ジョルダン職業訓練技術学院プロジェクト2002年6月のコラム太字引用者

参考2:Execution of a teenage girl(BBC) 姦通の冤罪で処刑された16歳の少女。イランでの最近(2年前)のお話。


2006-11-23追記:オーマイニュースにもパキスタンの件について関連記事があった。

パキスタン女性の救済法案を棚上げ  イスラム強硬派が立ちはだかる アシム・ヤシン 2006-09-30 01:47


参考3:よく話題になるヨルダン「名誉の殺人」の不条理について。スアドの受難が別に特別ではないことの症例。

生きながら火に焼かれて

生きながら火に焼かれて

刑の重さ
今週、Honour Crime (一族の名誉を守るための犯罪) に関する記事が2件、紙面を飾りました。ひとつは先週木曜日にイルビドで起きた殺人事件です。あるエジプト人男性との姦通罪によって2年間の服役をした29才の女性が、出所後、夫のもとに向かわずそのエジプト人男性のところに身を寄せたことから、夫が彼女を捜しだし殺害したものです。犯人の夫はすぐに自首し、現在捜査官によって取調中です。もうひとつの記事は、ちょうど1年前にアズラクで起きた事件の判決に関するものです。犯人は被害者の兄で、未婚の妹 (23才) が妊娠したことに気付き、殺害に至りました。こちらも犯人はすぐに自首しています。通常、Honour Crimeと認定された場合その刑はとても軽く (昨年11月のコラム "女性の人権2" 参照)、今回も殺人に対して禁固2ヶ月、銃使用のライセンスを持たず発砲したことに対して禁固2ヶ月、他人の銃を無断で拝借したことに対して禁固1ヶ月など、結局トータルで禁固7ヶ月が言い渡されました。犯人はすでに7ヶ月以上留置されていたため、判決後自由の身になったということです。(by I)
ソース:ジョルダン職業訓練技術学院プロジェクト2002年6月のコラム太字引用者

2006-11-23追記:オーマイニュースにも関連記事があった。名誉殺人が「イスラム教は無関係」というのは首を傾げてしまうが、イスラム圏の人々に目覚めてもらうにはそういうレトリックを使うしかないだろうな。

今も続く残虐行為「名誉殺人」 イスラム教は無関係  スミタ・プーデル 2006-09-23 12:27


〜生きとし生けるものが幸せでありますように〜