スリランカの旅

昨日の昼、一週間のスリランカ出張から帰国しました。日本テーラワーダ仏教協会の小西会長、ワンギーサ比丘、ダンミニー清道尼との四人でのツアーでした。

8月22日深夜にスリランカ航空の直行便でスリランカ着。翌23日朝にはコロンボのホテルにて、スマトラ沖地震の津波被災者の救援活動に奔走されているアーナンダ長老と会見し、津波被災者義捐金をお渡ししました。義捐金は津波で被災した子供たちへの奨学金として活用されることになります。同日の夕方にはアーナンダ長老が住職をされているアッタナガッラの寺院を訪問しました。同寺は大統領一族の菩提寺としても知られており、スリランカに現れた菩薩として語り継がれているSiri Sangabodhi王の伝説が残る由緒正しいお寺だそうです。アーナンダ長老は貧しい学生の支援のほか、お寺の境内にIT教育のための教室を開くなど、進取の気質に富んだお坊様でした。70年代、テーラワーダ仏教の比丘が全米で4名しかいなかった時代に渡米し、現在では80名近い比丘が活動するまでになった経緯など、テーラワーダ仏教の海外布教にまつわる貴重なお話を伺うことができました。

8月24日、キャンディのシャム派総本山アシギリヤ精舎にてA.スマナサーラ長老がJapan maha sangha nayaka thero(日本大サンガ主任長老)に任命されました。シャム派の日本総責任者というお立場です。会場にはペーマローカ長老らシャム派総本山の高僧方が結集し、急遽ロンドンから駆けつけたダンミッサラ長老(ウダラタアマラプラ派日本主任長老)、スマナサーラ長老のご親族、地元ベヤンゴダの檀家さんたち75名、そして私たち一行のほか日本スリランカ友好支援会の岡田さん(日本テーラワーダ仏教協会の副会長)ら関西のボランティア関係者、他急報にも関わらずスリランカ入りした協会会員の有志、元スリランカ大使館勤務の蒲生さん、ベヤンゴダ滞在中のヤサ比丘ら15名ほどの日本人も参集しました。会場となったアシギリヤ精舎はこじんまりとした戒壇のまわりをいくつかの僧坊が取り巻くだけの簡素なお寺。しかしここの戒壇こそがスリランカ仏教の心臓部。まず当日の午前中には近隣のお坊様方にスマナサーラ長老が施主となて食事のお布施が行なわれました。お昼をはさんで、午後三時からは総本山の高僧方が精舎の戒壇に結集し、厳粛な雰囲気で就任式が始まりました。礼拝に続けて総本山の高僧方へスマナサーラ長老から衣鉢と記念品のお布施がなされ、その後シャム派の大僧正(管長)様から銀の経筒に入れられた任命書がスマナサーラ長老に手渡され、もったいぶることもなく当然の如くあっさり、スマナサーラ長老へのJapan maha sangha nayaka theroの任命がなされました。ベヤンゴダの檀家総代らに続き、協会の小西会長と岡田副会長も祝辞を述べました。スマナサーラ長老は日本からの参列者を気遣った暖かいスピーチをしてくださりました。長老は比丘戒儀式を執り行う戒壇の設置によって、スリランカに仏教が完全に根付くことが出来たエピソードを紹介されました。そして、おなじく日本にも戒壇を築き、日本人が日本人自らの手でブッダの教えを伝灯してこそはじめて、日本に仏教が根付いたと言える日が来るのだと…。一同、身体に震えが走るほどの力強い言葉でした。式の後でみなの記念撮影が終わると、なんとシャム派の大僧正(管長)様から、日本人参列者へ紅茶のお誘いがありました。御歳86歳?という小柄な大僧正は、坊に招いた一行に手ずからお菓子やバナナを振舞って下さいました。

翌々日の26日には、コロンボ近郊のベヤンゴダにあるスマナサーラ長老のお寺(キリタラマヤ精舎)を訪れました。キャンディでの任命式のあとは地元のお寺でその任命書を読み上げる儀式を行う慣わしなのだそうです。ベヤンゴダのお寺の周囲は鮮やかな仏旗で飾られ、村の子供たちが総出で祝賀パレードを行ないました。民族舞踊を踊り、鳴り物を鳴らしてながら道路を練り歩く子供たちの姿に、まさしくお寺がスリランカ伝統文化の継承の場であること、仏教はスリランカの心臓であることを思い知らされました。実は、この日はキリタラマヤ精舎の仏教日曜学校の修了式をかねたお祭となっていました。スマナサーラ長老からしてみれば、むしろ子供たちが主役となって行う仏教日曜学校の修了式の方が楽しかったようです。式典に先立って、仏教日曜学校の新校舎(現在は青空教室)の地鎮祭が執り行われましたが、僧侶の読経の中、礎石を置きレンガを積むというスリランカ方式の地鎮祭でした。仏教日曜学校の修了式では、学年ごとに生徒の名をひとりひとり読み上げ、ひとりづつ修了(進級)証書と記念品(日本から運んだ折りたたみ傘と子供服・文房具など)を手渡していきます。小西会長も小学校高学年の子供たちに手渡す役をおおせつかっておりました。先生の足元に礼して、目を輝かして賞状を受け取る子供たちの列は途切れず、300人以上に上りました。スリランカは何処も元気な子供であふれています。日本では考えられないほどです。学年が変わるごとにスリランカの伝統的な踊りや、深刻化している麻薬問題を啓発する子供たちの寸劇などが挟まれ、修了式は日が暮れるまで続きました。夕闇の中で檀家さんたちが手際よく撤収作業を終わらせ、お寺はもとの静寂を取り戻しました。本堂に集まった檀家の皆さん、日本からの参加者で、ブッダプージャを行いました。導師はなんとCD『ブッダの安らぎの声』のパンニャーローカ師でした。生で聴く師の読経はものすごい迫力でしたが、いたずら好きの子供たちは本堂を駆け回り、スマナサーラ長老の愛犬チャーミーも何事かと覗きに来る。そんなまったく格式ぶらない、しかし落ち着いた聖なる時間のなかで、ベヤンゴダの夜は更けていきました。

一週間の滞在期間中、25日には八王子在住のダンミッサラ長老が住職を務め、ウダラタアマラプラ派のセンターとなっている山間のお寺を訪問しました。周囲を紅茶プランテーションに囲まれた伝統的なシンハラ人村落にあるお寺ですが、数年前までは電気も通っていなかったそうです。現在も道路事情は劣悪で、境内の文化財も盗賊の被害を受けたまま荒れ放題でした。ダンミッサラ長老の先代の住職は自分の寺の整備はそっちのけで教育に力を入れたそうです。現在も境内の学校では子供たちが熱心に勉強していました。

また27日には小西会長が個人で図書館を寄付した、LTTEとの前線に近い東部湿原地帯にある最貧地域の小学校を訪問しました。早朝のコロンボからひたすらバンを走らせ、小学校で仏教の教鞭をとるインダサーラ沙弥(週末はキリタラマヤ精舎在住)をベヤンゴダでピックアップし、ポロンナルワもすっとばし野生のゾウが闊歩する美しい自然に囲まれた農村に入ったのは午後4時も近く。当日の朝の連絡にも関わらずたくさんの子供たちが出迎えてくれました。水道も電気もない環境で、子供たちを必死で守り育てている先生方の熱意に打たれました。

28日はコロンボ市内でひたすら仏像選び。10月15,16日のスリランカフェスティバルに向けた買い付けでした。

そんなわけで、スリランカ仏教が置かれている状況について様々な角度から視察できたと思います。最初から意図したわけではないのですが、24日の朝に仏歯寺を参詣した以外はいわゆる観光名所は一切まわらずに、仏教ミッションに徹することができました。たいへん有意義な旅となったことを三宝に感謝いたします。

本場の紅茶もしこたま買ってきましたので、デジカメ写真を見ながらの土産話でも聞きに、ゴータミー精舎まで是非おいでください。※ひとまず日記をアップしてから、あとからあとから思い出してきたことをどんどん書き足しました。かなりゴチャゴチャしてるけどお許しを。

写真はこっちに載せました。

〜生きとし生けるものが幸せでありますように〜