生類憐みの令 その他

スターウォーズ・エピソード3シスの復讐。まぁ、こんなもんかなぁ…というところでした。でもラストシーンで、タトゥイーンのふたつの太陽が出てきたら、やっぱグッと来てしまった。刷り込みはすごいもんだ。

生類憐みの令―道徳と政治 (社会の科学入門シリーズ)

生類憐みの令―道徳と政治 (社会の科学入門シリーズ)

著者の板倉聖宣先生は一般的にはマイナーだけどユニークな視点で日本史に取り組んでいる教育者です。日本史再発見―理系の視点から (朝日選書)は歴史好きならぜひ読んで欲しい名著だと思います。本書は徳川綱吉の治世に行われた悪名高い「生類憐みの令」の全貌をコンパクトに明らかにしたもの。授業書の体裁なのですが、固定観念を揺さぶるような具体的なデータを次々に提示して、読者の固い頭をやわらかくしながら、政治と道徳という微妙なテーマについて考えていく手法は大人でも(いや、大人こそ?)楽しめる一冊になってます。本書が世に出るまで、生類憐みの令についてはほとんど研究がされておらず、学術書でも後世の伝聞をもとにした誤った解釈が横行していたそうです。板倉先生は当時の一次資料を元にしてこの政策の背景と施行、綱吉の死に伴う撤廃までの全体像を明らかにします。分厚い本を一生懸命読破して、でも本の論旨もデータも頭から抜けてしまう…達成感はあっても何も実にならない、そんな読書経験をしている諸氏も少なくないでしょう。一見コンパクトな本書はその対極にあって、著者の「歴史的事実への見方考え方はどのように形成していけばいいのか」というスタンス、そして肝心なデータがしっかり身に付きます。「犬公方」綱吉については、いぜん草薙剛主演のテレビドラマが放映されました。戦国の尾を引きずる殺伐とした世相を極端なまでの不殺生主義である「生類憐みの令」を徹底することで落ち着かせ、人々の無意識に生命尊重の思想を浸透させたこと、そして赤穂浪士を厳罰に処することで例外なき法秩序を確立したことなど、後世からの嘲笑侮蔑に反して実は徳川日本の平和を内面化させた英王ではないか、という描き方だったと思います。本書はそこまで持ち上げてませんし、生類憐みの令の滑稽さ、官僚主義的「生命尊重」の愚かさも事実として提示されています。でも一筋縄ではいかない綱吉治世のあり方について、きっと考えさせられる思います。僕は個人的には「仏教と政治」について、「世論と政治」ということについても思うところありました。

靖国神社―そこに祀られている人びと (ミニ授業書)

靖国神社―そこに祀られている人びと (ミニ授業書)

こちらも同じ著者による「靖国神社」概説書。あまりにも簡素な気もしますが基本的なデータと「靖国神社」の「問題」の根っこが押さえられます。特定の政治的・宗教的立場のノイズで混乱しがちな靖国問題を考える上で、じゃぁ誰もが知っておくべきことは何なのか、踏まえるためにも読んでおいて損はないと思います。靖国について、ひととおり他人にも説明できるようになります。

新ゴーマニズム宣言SPECIAL 沖縄論

新ゴーマニズム宣言SPECIAL 沖縄論

なんと赤旗にも書評が載ったという小林よしのりゴー宣スペシャル本です。同シリーズの戦争論(1〜3)や台湾論に比べて大反響という感じではありませんが、類書がないということ、日本の針路を考える上での重要性という点でも遜色ない作品だと思いました。戦争論にしても台湾論にしてもどこかで日本人の歴史的自己愛や誉められたがりをくすぐるところがあったと思うのですが、沖縄論は現在進行形で続いている日本人の自己欺瞞を鋭く突いているので、右にせよ左にせよ「ホンネでは読みたくない」心情が働いているのではないかと思います。「沖縄に本土を同化させよ」とまで叫ぶよしりんの原日本文化論にはついていけない所もあるが、左右の言論が言い表せないでいた沖縄の問題を抉り出したという意味では評価されるべき仕事ではないかと感服した。それでも本書の白眉は第三部19章の「亀次郎の戦い」でしょうね。沖縄人民党の瀬長亀次郎の半生を描いた血沸き肉踊る男一代伝記マンガです。

わしズム〈夏季 Vol.15〉

わしズム〈夏季 Vol.15〉

幻冬舎から刊行される分としては最終号だそうです。ぜんぶ読んだわけじゃないけど、最終号と言われるとやはり買わないとなぁ。ゴーマニズム宣言EXTRA第18章「占守島の戦い」は終戦後に火事場ドロボウ的に千島樺太を攻撃した旧ソ連(現ロシア)軍を果敢に迎え撃って大勝した占守島(シュムシュ島)守備隊の活躍を描いた戦記マンガです。国際法もなにも一切無視して攻撃してきた野蛮な侵略者を国防の義務にのっとって迎え撃った彼らの戦いはやはり天晴れとしか言いようがない。強姦と略奪が軍隊文化になっていたソ連兵から缶詰工場の女工さんたちを守り抜いたことも、軍民が一体化して住民に犠牲を強いた沖縄戦などと対照して「美談」度が高い。確かに彼らの戦いがなければ北海道は南北に分割されていたかもしれないし、顕彰云々はともかくもっと記憶されるべき歴史的事実ではないか。そんで法にのっとって武装解除した彼らはまたシベリアで不当な抑留と奴隷労働を強いられたのだ。まったくひでー話だよ。活字でも「極東アジア2大対論」のなかの趙宏偉とよしりんの対談は出色の内容だと思う。「中国から出てくるのは「覇権がどこまで及ぶか」という話ばかりで、そこから理想も何もない。そんなふうに考えているだけで、アジアなり中国なりの人々が本当に幸福になれるものだろうか。そこが中国の心配なところだよ」というよしりんの発言には、彼の底抜けの人の「善さ」(ノーブルさ)が滲み出ていて、やはり依然、日本でもっとも信頼できる言論人のひとりだなぁ、という感を深くした。

ケツノポリス4

ケツノポリス4

ここ数日のBGMにしてます。ケツメポリス2から聴き始めて3は飛ばしてたんだけど、基本的に何も変わってない。歌詞とか薄くなってる気もするけど、射程距離を伸ばすための方便の範囲に収まってるしきちっと自分たちで自分たちをコントロールしてる姿勢は好感もてます。

〜世の中が不機嫌だから我々は慈悲の心で明るく居よう〜